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LOGI-BIZ記事レビュー・箸休め編④大和ハウス工業・介護で辞めない会社をつくる

LOGI-BIZ記事レビュー・箸休め編④大和ハウス工業・介護で辞めない会社をつくる

ワークライフバランスを積極的に支援

※この記事は月刊ロジスティクス・ビジネス(LOGI-BIZ)2015年9月号で紹介したものを一部修正の上、再掲載しています。役職名や組織名などの内容は雑誌発刊当時から変わっている場合があります。あらかじめご了承ください。

65歳以上の高齢者が人口に占める割合が2割を超え、先進国でも例を見ない超高齢化社会に突入した日本。親を介護しながら働く人が今後も増えることが見込まれる。企業は働き盛りの優秀な人材が介護の問題で退職してしまうのをいかに防ぐかという課題を突き付けられており、物流業界も決して例外ではない。大手住宅メーカーの大和ハウス工業の取り組みから、答えの一端を探った。

4年ごとに全社員対象アンケート

「たとえ『生活』を優先せざるを得ない状況であっても、『仕事』をあきらめることなく頑張ることで、より自分を成長させることができるのです」──。大和ハウス工業がCSRリポートを紹介したウェブサイトで、同社がワークライフバランスを図る上で重視する考えが載せられている。この言葉に象徴されるように、同社は特にここ10年ほど、積極的にワークライフバランス支援策を打ち出してきた。

具体例を挙げると▽社員本人または配偶者が出産した場合、子ども1人当たり100万円を支給する「次世代育成一時金制度」(2005年)▽退職した社員が再び同社で働きたいと望んだ場合に一定の条件を満たせば認める「再雇用機会優先制度」(07年)▽子どもが生まれた男性社員に出生日から5日間の連続休暇を与える「ハローパパ休暇制度」(同)──といった具合だ。

同社東京本社の佐伯佳夫人事部長は「企業年金基金を創業から早い段階で創設するなど、立ち上げた以上は長続きする会社にしたいという想いが創業者の故石橋信夫相談役にあったと思う。もともとそうしたDNAがあった」と指摘する。

その上で、「社会の構造や従業員の価値観が変化する中、一つの制度をずっと続けているのは駄目だという議論が人事部内にあり、いろんな改革に取り組んでいった」と経緯を語る。同社が10年前に第1次中期経営計画を策定したことも、ワークライフバランスへの対応を強化する契機となった。

ワークライフバランスを支援する上で重視しているのが、同社が04年から4年ごとに実施している全社員を対象としたアンケート調査「ビューリサーチ100」だ。同社には労働組合が存在しないため、人事部が主体となって、人事制度などに関する社員の意識や希望、社員が働きやすい職場環境と感じているかどうかといった点を細かく把握し、さまざまな施策に反映させていくのが狙いだ。

タイトル通り、毎回100の設問に答えてもらっている。佐伯部長は「設問を通じて、われわれが想定している新制度が果たして従業員の感覚に合っているのかをリサーチするケースも多い。まさに社員向けのマーケティングの側面もある」と話す。こうしたアンケートを通じ、社員に会社の本気度をアピールする狙いもあるようだ。


大和ハウス工業が取り組む施策※クリックで拡大

「親孝行」に交通費補助

大和ハウスのワークライフバランスは、以前は女性の採用や出産、育児、復職といったテーマに軸足を置いている印象だった。最近は女性の活躍支援以外の分野にも及んでいる。

例えば、長時間労働の解消に向け、14年に「生産性に基づく業績評価」を始めた。全国各地の事業所の業績評価をする際、従来は「1人当たりの利益額」を重視していたが、現在は「1時間当たりの利益額」という要素も加えている。生産性をより重視する風土を根付かせたいとの思いだ。他にも、労働環境の改善や生産性向上を重視する仕組みをいろいろと講じている。

ワークライフバランス支援策が多様化する流れの一つに、高齢化への対応が挙げられる。同社は12年、期限の上限を設定しない介護休業制度をスタートした。社員の家族が2週間以上の常時介護を要する場合を条件とし、介護の事由が終わるまで休むことができるようにした。
さらに、15年4月には、新たに「親孝行支援制度」を設けた。要介護認定を受けた親の介護のために帰省する社員に対し、帰省の距離が片道200キロメートル以上ある場合、年4回を上限として交通費の一部を補助している。補助金額は、東京~大阪間で1回当たり2万5000円となる。経済的負担を軽くし、介護の問題を抱えていても同社でキャリアを続けられるようにするのが狙いだ。

こうした制度拡充の根底には、「まさに“国民総介護時代”に入っていく中で、実際に介護をしている社員を支える制度をしっかりとつくっていかないと、30代から40、50代の方々は介護が原因で本来のパフォーマンスができなくなる恐れが大きい」(佐伯部長)との危機意識がある。

同制度に登録してもらうことで、どの社員が介護の問題を抱えているのか、親御さんの病状はどうか、といった情報を把握できるというメリットもある。「自分からは言い出しにくい面もあるだけに、会社が後押しすることが大事」と佐伯部長は言葉に力を込める。

親孝行支援と併せて、シニア層が活躍できる環境の整備にも腐心している。12年には定年もそれまでの60歳から65歳に引き上げた。また、65歳以降の社員も現役で働き続けることができる「アクティブ・エイジング制度」も15年4月に開始した。働き続けたいと願うベテラン社員のうち、一定の業績が認められる人物を嘱託で雇用し、営業のサポートなどに当たってもらう。

新たな制度を次々と考え出す秘訣はどこにあるのだろうか。「制度を企画する際は、あまり固く考えず、かなり遊び心を持って、どう考えても実現不可能なものでもとりあえず意見を出し合っている。現場の視点と経営の発想の両方を備えた人事部でありたい」と佐伯部長は解説する。

「制度を導入すること自体はそれほど難しくない。やはり社員の意識に合った制度になるよう、運用の部分が大事だ」と強調する佐伯部長。その言葉通り、本格的に大幅にサポート策を導入してから10年が経過したのを受け、今はこの制度でいいのか、時代から若干ずれてきているものもあるのではないか、との前提で内容を洗い直しているという。大和ハウスが模索を続ける姿は、他の企業にとっても道しるべとなる部分がありそうだ。

(藤原秀行)

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