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【独自取材・特別連載】始動!「商社物流4・0」 三菱商事が挑む大変革②

【独自取材・特別連載】始動!「商社物流4・0」 三菱商事が挑む大変革②

必要な時に必要なだけロボット、「RaaS」が人手不足の救世主に

日本を代表する総合商社の一角を占める三菱商事が物流業界の変革に動き出した。eコマースの成長を下支えするなど社会のインフラとして機能しながら数々の非効率が残り、トラックドライバーをはじめとした人手不足も改善の糸口を見いだせない。そんな深刻な苦境を打破するため、倉庫から輸配送に至るまでの過程でデジタル化・機械化を包括的に進め、全体最適につながるDX(デジタル・トランスフォーメーション)を実現する未来図を描いている。

そこで目指す究極の目標は、総合商社が多角的に物流基盤を再構築していくことで物を運ぶ側も受け取る消費者も笑顔になれる次世代の姿「商社物流4・0」だ。ロジビズ・オンラインは同社の意欲に満ちた取り組みを全4回にわたって紹介する。第2回は多くの物流企業や荷主企業が関心を寄せながらも、まだまだ使いこなせている状況とは言い難い物流ロボットの普及を後押ししようと準備を進めていることに焦点を当てる。

連載第1回:倉庫から輸配送でDX、全体最適を実現

定額制という“明朗会計”でハードルを下げる

東京湾にほど近い横浜市鶴見区の工業地帯の一角にある倉庫。一見するとあちこちで立ち並んでいるような普通の建物が、実は三菱商事の物流ロボット普及に向けた変革の最前線となっている。同社傘下で物流事業を担っている三菱商事ロジスティクス(MCLOGI)の京浜事業所だ。

倉庫の中では、作業スタッフに加えて多数のロボットがフロアを縦横無尽に動いている。物流業界ではすっかり有名になった、インド発祥のベンチャー企業GreyOrange(グレイオレンジ)製の物流ロボット「Butler(バトラー)」だ。現状では40台超を導入し、倉庫でMCLOGIが物流業務を請け負っているファッション雑貨の入出庫を日々担当。ロボットを生かした物流業務のケーススタディーを積み重ねている。実証実験のレベルにとどめず、実際のオペレーションにロボットを組み入れているところに、三菱商事とMCLOGIの本気度の高さがうかがえる。

バトラーは商品が収められている棚の下に潜り込んで持ち上げ、入出荷の作業エリアまで運ぶことで、スタッフが広大な倉庫の中を歩き回らなくても目的の商品を棚から取り出せるようにするのが最大の特徴だ。AI(人工知能)を活用し、頻繁に出荷される商品の入った棚は入出荷作業エリアの近くに配置するなど、自らの判断で作業効率化を図ることが可能なのも強みだ。国内ではニトリやトラスコ中山などへの納入実績がある。


庫内を走行するバトラー

三菱商事はバトラーを切り札にして、倉庫内へのロボット導入支援を本格的に展開しようとしている。その概念は「Robot As A Service」(RaaS)だ。顧客企業は使った台数分だけ月額の料金を払う従量課金制を採用する予定で、既に顧客企業など向けにマーケティング活用を展開している。

物流ロボットは初期負担がまだまだ大きい一方、実際に導入した物流現場でどの程度生産性を向上させ、どの程度省人化を図り、どの程度の経費抑制につながったのかといった効果に関するデータは少ないことが、関心を持つ物流企業や荷主企業が躊躇する大きな要因となっている。三菱商事はそうした現状を注視し、RaaSでハードルを下げることによって物流ロボットを使いやすい環境を整備しようと考えている。

同社コンシューマー産業グループ物流事業本部の中西心紀物流開発部マネージャーは「従来の自動化は最初に大きくお金を費やす割に使いづらいといったように、導入の進め方にフレキシビリティーが不足していた。最初は月額料金で小さく始めて、成果を挙げられれば徐々に拡大していくという方式を確立しなければ、なかなか物流業界にロボットが広がっていかない。まずはお客さまがロボットに触ってみよう、という機会をRaaSによって創出していきたい。定額制という“明朗会計”でハードルを下げられると確信している。お客さまも社内の稟議を通しやすくなる」と狙いを語る。

RaaSの形態を採用すれば、通常は1年程度が必要な導入までリードタイムを、標準仕様であれば3カ月程度まで短縮が可能とみている上に、台数の拡大や撤去、別の物流拠点への移動といった一連の作業も容易にできると見込む。人手不足に悩む物流企業や荷主企業にとっては、本格的な運用開始までの助走の時間が少ないのも魅力になりそうだ。


MCLOGI京浜事業所に導入されたバトラー(三菱商事提供)

早期に1000台規模まで拡大したい

物流ロボットを導入する分野といえば多品種多頻度出荷を強いられるEC事業者のイメージが強いが、三菱商事はBtoCに加えてBtoBの領域でも物流ロボットが活躍する余地は大きいと予想している。そのため、バトラーにとどまらず、他の形態のロボットもラインアップに加える予定だ。

その一環として、物流ロボット開発を手掛ける中国・深圳のスタートアップ企業、炬星科技(シリウスロボティクス)とこのほど業務提携した。シリウスのロボットは庫内を自律走行し、ピッキングする商品が収められている棚の前で自動的にストップすることで作業スタッフが案内に従って商品を棚から取り出す「AMR」と呼ばれる人間と協働するタイプ。商品を収めた棚など庫内のレイアウトを大幅に変えなくても現状のまま導入できるのが特徴だ。

中西氏とともにRaaS実現を担当している三菱商事の中村遼太郎物流開発部マネージャーは「AMRは導入のハードルが低いため、中小のEC事業者などに活用していただきやすい。さまざまなロボットをラインアップにそろえることで、多様な業種、事業規模のお客さまのご要望に応えていけるようになる。ロボットを広く普及させていく上で非常に重要」と意義を強調する。


シリウスロボティクスのAMR

RaaSは当初、数種類のロボットでスタートし、その後も利用状況やニーズを踏まえ、種類や台数を順次増やしていくことを視野に入れている。中村氏は「100台以上は所有しておかないと商品の波動に応じたロボットの増減、というニーズにそもそも対応できない。早い時期にRaaSを軌道に乗せ、1000台規模にまで増やしていきたい」と意気込みを示す。

物流ロボットのレンタルサービスは既に提供されているが、三菱商事は単にロボットを有償で貸し出すだけにとどまらず、そもそもどのロボットが顧客企業の物流現場に向いているのか選定するところから、ロボットの運用に不可欠なソフトウエアの構築、オペレーションのアドバイス、メンテナンスに至るまで包括的にパッケージでサポートすることを想定している。

富士経済は2019年、AGV(無人搬送車)などの物流・搬送用ロボットの世界市場規模は17年の1000億円超から25年には2兆400億円まで伸びるとの予測を発表した。日本でもその相応分までマーケットが拡大していくことが見込まれるだけに、三菱商事は普及の下地作りから関わり、物流業界での存在感を高めていこうと意欲を見せる。

中西氏と中村氏は「運用に関しては柔軟性や拡張性を持たせることが物流ロボットの黎明期にとっては極めて重要。そのパートを当社が担い、物流現場の変革に貢献していきたい」と口をそろえる。将来は、複数の企業間でロボットをシェアし、必要な時に多忙な現場へロボットを集中させられる「ロボットシェアリング」の実現にも関わっていきたいと考えている。

(藤原秀行)

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