【新型ウイルス】ニチレイロジ、20年度は家庭用冷食の物流需要獲得とコスト管理徹底でコロナの影響カバー

【新型ウイルス】ニチレイロジ、20年度は家庭用冷食の物流需要獲得とコスト管理徹底でコロナの影響カバー

経営方針公表、「業務革新」を一段と推進へ

ニチレイロジグループ本社は5月18日、2019年度の事業報告と20年度の経営方針を公表した。

19年度(20年3月期)の連結業績は営業利益が05年にニチレイから分社して以降の最高を5年連続で更新するなど、総じて堅調を維持。一方、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で20年度(21年3月期)の売上高は現行の中期経営計画の想定を下回るものの、営業利益はグループを横断して推進している業務革新による効率化とコストコントロールの徹底で中計を上回るとの見通しを明らかにした。

また、20年度の目標として、業務革新を一段と進めることを明示。AI(人工知能)で文字を自動的に読み取る「AI-OCR(光学文字認識機能)」の現場導入による出荷情報確認の迅速化、着用すると目でさまざまな情報を確認できる「スマートグラス」といった先端デバイス活用、冷凍現場向け無人フォークリフトの実証実験展開などに取り組むことを打ち出した。

同社の梅澤一彦社長は新型コロナウイルスの感染拡大に関し、国内外で外食向け冷凍食品の荷動き停滞による取り扱い物量減少などの影響が出ていると指摘。半面、外出自粛によるインターネット通販の利用増といった“巣ごもり需要”で量販店向けTC(通過型センター)の通過物量や常温加工食品向け冷凍原料の保管など家庭向け商材の取り扱いが増えていると説明した。

その上で「これらの物流需要を着実に取り込むとともに、一般管理費のコスト削減を徹底することで、営業利益ベースでの影響を最小にとどめる」との決意を示した。


梅澤社長(2019年5月の経営方針説明会で撮影)

「冷食プラットフォーム構想」確立へ

同社は毎年、集会形式でメディア向けの経営方針説明会を実施しているが、今年は新型コロナウイルスの感染拡大を受け、資料開示のみにとどめた。

19年度の連結業績は、売上高が前期比3%増の2065億円、営業利益が4%増の118億円。保管・輸送需要が伸びたほか、運賃・料金の値上げ実現なども追い風となり、低温物流事業が総じて好調だった。海外事業は欧州でドイツやポーランドの売り上げが伸び、中国も増収増益を達成した。

20年度の連結業績予想は売上高が前期比1%増の2095億円、営業利益が2%減の116億円を見込む。売上高は新型コロナウイルスの感染拡大の影響で現行の中計で想定している値(2184億円)を割り込むものの、営業利益は計画値(114億円)を上回るとのシナリオを描いている。

20年度の取り組みとして、複数の冷凍食品メーカーと物流企業を結び付け、人手不足などの課題を適切に解決できるよう導くコーディーネーターの役割を担う「冷食プラットフォーム構想」の確立を目指す方向性を提示。

今年4月に稼働を始めた名古屋市の「名古屋みなと物流センター」で先端技術を駆使し、周辺拠点とも連携して共同物流を展開するなど、業務革新の象徴的なセンターとして機能させる。横浜市で21年3月に稼働を予定している「本牧物流センター」も、保管能力を増強して周辺拠点とタッグを組み、顧客ニーズを着実に取り込む方針。


「名古屋みなと物流センター」の外観(ニチレイロジグループ本社提供)

関西では、今年4月に大阪港湾エリアでグループ企業の機能再編を実施したのに伴い、輸配送と保管の機能を連携させたワンストップサービスを積極的に提供する足掛かりにしていく方針を盛り込んでいる。

また、海外ではフランスで既存拠点の倉庫増設による保管能力アップなどを進め、事業基盤を強化。中国・上海は今年5月に3温度帯対応の「上海第二(青浦)センター」を開設し、主要顧客の大手コンビニエンスストアの店舗増設に対応することを明らかにしている。

マレーシアは19~20年に新設したセンターを生かし、主要都市圏での共同配送や南北を結ぶ拠点間輸送、各地域の調達物流などを手掛け、同国でのロジスティクスプロバイダーとしての地位確立を図る。

働き方改革の面ではこれまで注力してきた女性の活躍促進から一歩踏み込み、ダイバーシティ推進に軸足を移し、組織横断的な取り組みを展開していく構え。

(藤原秀行)※「レイちゃんとロジロジくん」はニチレイロジグループ本社提供

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