【新型ウイルス】大塚倉庫・濵長社長、「コロナは物流業界変革の大チャンス」とデジタル化の意義強調

【新型ウイルス】大塚倉庫・濵長社長、「コロナは物流業界変革の大チャンス」とデジタル化の意義強調

オンラインセミナーで基調講演、非接触推進へ自社内勤の完全テレワーク体制も模索

大塚製薬グループの物流子会社・大塚倉庫の濵長一彦社長は6月17日、オンラインセミナー「経営支援カンファレンス 物流小売展」で基調講演し、自社の物流業務のデジタル化について解説した。

これまでにペーパーレス化や協力運送会社の負荷軽減などで成果を挙げていることを報告した上で「新型コロナウイルスの感染拡大で逆に言えば、物流業界に(変革の)大チャンスが来ている」と指摘。深刻な人手不足などの課題も踏まえ、リードタイムや納品回数など業務フローの抜本的な見直しを進めていくべきだと強調した。

濵長社長は新型コロナウイルスの感染拡大を受けた自社の対応に言及。政府の緊急事態宣言発令後の4月8日以降、本社は9割、支店も交代制で5割がテレワークに入ったと説明、「今まで(業務デジタル化のために)仕込んできた結果がテレワークに結び付き、結果が出たと思っている」と語った。

同社で進めているデジタル化として、「勘と経験」に頼る属人的な運営から、ITを積極的に導入して誰でもすぐに現場へ行けば仕事ができるような環境を整備した「ID倉庫」「ID運輸」を実現したと力説。自社の物流施設スタッフにはタブレット端末「iPad mini」、協力運送会社のトラックドライバーにはスマートフォン「iPhone」を所持してもらい、配送ルートや納品条件などを双方で情報共有、効率的な配送や納品、出荷を可能にしていることなどを紹介した。

濵長社長は「現場に紙があふれ、個人に仕事が付いてしまっていたので休みたくても休めない状況に陥ってしまっていた。ID化でそうした状況を変えようと考えた」と経緯を語った。

他にも、協力運送会社が電話やファクスを使わなくても、専用のウェブサイトにアクセスすれば自分が受託している業務に関する情報をやり取りできる仕組みの導入を進めていることや、担当者間で現場情報をチャットで共有していることなどを明らかにした。

さらに、日本パレットレンタル(JPR)傘下で納品伝票電子化を手掛けるTSUNAGUTE(ツナグテ)と連携し、レンタルパレットの伝票の標準化・電子化に乗り出していることも発表。デジタル化全体の進捗状況を総括して「受注から納品完了までの見える化はゴールが見えてきた。物流業界から電話やファクスをなくしたい、ウェブにアクセスすればいつでも情報が見えるようにしたい」と力説した。

新型コロナウイルスの感染拡大を踏まえ、濵長社長は「環境変化に負けない会社を目指さないといけないと非常に感じている。物流を止めないことがわれわれの使命であり、業務も非接触の仕組みを考えていかないといけない」と持論を展開。内勤業務の完全テレワークが可能な体制構築などを模索していることを明かした。

その上で、「リードタイムや納品時間、納品回数など、みんなが見直す時期に来ている。そのためにはデジタル化も進めながら物流の仕組みもシンプルになるよう、率先して変えていきたい」との決意を示した。

(藤原秀行)

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