ホワイトペーパー無料公開、パンデミック収束後の動向を予測
倉庫の空きスペースと保管を希望する荷物のマッチングサービスを展開しているスタートアップ企業のsouco(東京)は9月14日、新型コロナウイルスの感染拡大が物流企業の財務面に及ぼしている影響と、ロジスティクス業界がどのように対応しているかを米物流関係4社の決算から探る独自の分析リポート(ホワイトペーパー)の無償公開を自社ホームページで開始した。
分析の対象としているのはUPS、フェデックス、C.H.ロビンソン、アマゾン・ドット・コム。4社とも必ずしもコロナ禍でマイナスの影響ばかりを受けているわけではないことを浮き彫りにし、日本の物流業界でも積極的な対応が厳しい環境の打開につながる可能性があるとの認識を示唆している。
soucoが9月14日に正式発表した。ホワイトペーパーは各社の決算から、感染拡大対策費用の増加や製造業の低迷による荷物の取扱量減少といったネガティブな影響が生じている一方で、コロナ禍の外出抑制によるeコマースの取り扱い拡大、医薬品輸送の拡大などが収益にプラスとなっていると分析。その一例として、アマゾンの2020年第2四半期(4~6月)は売上高が前年同期比4割増、純利益は2倍になったことなどを紹介している。
同時に、4社が新型コロナウイルスのパンデミック(大規模感染)収束後の将来に向けて備える動きが、さまざまな先進技術の採用とデジタル化を加速させていると分析。4社が着手している革新的なアプローチを列挙している。
例えば、UPSグループが今年5月、米フロリダ州でドラッグストアチェーンCVSの処方薬をドローン(無人飛行機)で高齢者居住施設の入居者に届けたり、フェデックスがIoT(モノのインターネット)を活用したセンサー機器で配送する荷物の最新状況を24時間いつでも確認できるサービスを始めたりしたことを報告。
他にも、C.H.ロビンソンがリアルタイムで輸送状態や価格設定などの管理を可能とするシステムを設立したり、アマゾンが自動運転技術の研究を進めたりしていることにも触れている。
ホワイトペーパーは締めくくりとして、4社の事例を基に、コロナ禍の発生当時はおおむねマイナスの影響を財務面でもたらしたものの、その後については「オペレーション上の逆風や課題が存在するにもかかわらず、大打撃を受けた他業種を大幅に上回るペースで成長したり、回復し始めたりすることのできる状況を一部企業にもたらした」と説明。
その上で、ロボット工学と自動化、非接触の従業員・顧客体験、サプライチェーンの可視化と予測型ロジスティクスの3点がイノベーションを図る上での共通テーマになるとの見解を提示。物流業界で迅速な対応の必要性を訴えている。
(藤原秀行)