トラボックスと矢崎エナジーシステムが海外進出に挑戦
運送事業者と荷主企業のマッチングを担うトラボックス(東京)と自動車部品大手の矢崎総業傘下でタコグラフやドライブレコーダーなどの計装機器を手掛ける矢崎エナジーシステム(ES、同)が、運んでほしい荷物と運びたい運送事業者を仲介する求貨求車サービスの海外展開に挑んでいる。
10月25日にタイで現地企業と組み、同サービス「トラムーブ」の提供を開始した。トラボックスと矢崎ESは経済成長とともに物流需要も膨らみ続けている同国で輸送効率化の商機は十分にあると期待。初年度に会員3000社を獲得、20年には1万3000社まで増やしたい考えだ。
新サービスはタイで商用車に搭載した専用端末から各種情報を収集、分析するテレマティクス事業を行っているDTCエンタープライズと連携。専用サイト上に荷主企業が運んでほしい荷物の量や種類などの情報を掲載、運送事業者と仲介する仕組みだ。運送事業者が写真を掲載して自身をアピールすることも可能。
2000年設立のトラボックスが展開しているマッチングサービスには国内の4万8000社が登録している。そこで日々蓄積してきた適切な情報掲載などのノウハウをトラムーブにも生かしていくとの構想だ。
一方、矢崎ESはDTCと協力し、タイ国内で商用車向けテレマティクス事業を続けており、運送事業者から一定の評価を得ている。より踏み込んで求貨求車サービスを事業化することで、物流の効率改善に一層貢献していきたいとの狙いがある。
トラムーブの登録料と月額サービス料は荷主企業が無料、運送事業者はいずれも1000バーツ(約3400円)。サービス開始当初の3カ月間はお試し期間として、全て無料と設定している。
ASEAN域内でのサービス拡大も視野
トラボックスと矢崎ESが海外最初の進出先としてタイに照準を合わせた背景には、物流需要が飛躍的に伸びているのと併せて、交通事故の増加や輸送トラブルの頻発、大気汚染といった課題が鮮明になってきていることがある。
さらに、タイ政府が「第12次国家経済社会開発計画」の一環として、先端技術活用による生産性向上などを通じ、GDP(国民総生産)に対する物流コスト比率を16年の14%から12%以下に抑える方針を打ち出していることにも着目。国を挙げて物流の効率化を推し進めようとしている中、求貨求車サービスを通じて、トラックの積載率向上をサポートするほか、今後は配送ルートの最適化などにも取り組みたい考えだ。
今年5月にタイでのサービス展開に関して記者会見した矢崎ESの矢﨑航社長は「アジアは越境物流の拡大も見込まれている」と指摘し、将来はタイ以外のASEAN域内にサービスを広げていくことを視野に入れていると明かした。まずはタイで経験を積み重ね、東南アジアで広く通用する求貨求車プラットフォームの構築を目指す構えだ。
(藤原秀行)
トラムーブのサイト画面
今年5月のタイ進出発表会見の終了後に握手する(左から)DTCのトサポール・クナパムシリ社長、矢﨑社長、トラボックスの吉岡泰一郎社長