キリングループロジ、輸送力や拠点能力増強などで27年も「運びきる」体制整備目指す

キリングループロジ、輸送力や拠点能力増強などで27年も「運びきる」体制整備目指す

山田社長が明言、21年に茨城・つくばで物流センター稼働開始を計画

キリングループロジスティクス(KGL)は2月3日、オンラインで2021年以降の経営方針に関する報道機関向け説明会を開催した。

山田崇文社長はトラックドライバーの不足や労働時間規制強化など事業環境が厳しさを増しているのを踏まえ「このままのやり方では7年後には(事業を継続していくのが)難しくなっていく」との危機感を表明。

まず23年末に目指す姿として、輸送力や拠点の保管・荷さばき・出荷能力の強化、業務のデジタル化、情報システムの高度化などを推し進め、KGLがかねて重視してきた、荷物を着実に届ける「運びきる」体制を整備していることを掲げた。

併せて、27年に在るべき姿として「知恵と創意工夫で新しい時代も運びきっている」ことを明示。新型コロナウイルスの感染拡大下でも事業基盤の強化と業務効率化に変わらず取り組むスタンスを強くPRした。

目標実現へ21年の重点課題として、「安全」「輸送力強化」「拠点能力強化」「人材育成」「外販事業の収益確保」の5点を設定。21年中にキリンビール、キリンビバレッジ両社の製品を取り扱う新たな物流拠点を茨城県つくば市で立ち上げることなどを明らかにした。


山田社長(KGLウェブサイトより引用)

20年に全国で6拠点を開設

山田社長は20年の振り返りとして、新型コロナウイルスの感染拡大で経済が混乱・停滞する中、グループ外の一般貨物をほぼ計画通りに獲得、輸送力強化や輸送効率向上と事業基盤下支えにつながったと指摘。輸送能力の増強などを継続した結果、大型連休や夏季、年末の繁忙期と豪雨災害時も混乱なく乗り切れたと評価した。

サービス品質の面でも、誤出荷などのトラブル発生率が過去最低の水準まで下げられたと解説。新規拠点や既存拠点能力の増強も計画通り進め、キリンビール全工場の保管能力は19年から10・9%、キリンビバレッジ全工場で8・2%増強できたと報告した。

20年に設けた物流センターは、北海道の東雁来センター、東北の青森、仙台総合の両センター、首都圏の厚木金田センター、近畿圏の堺センター、中四国の総社センターの計6カ所に上った。


堺市で昨年9月に開設した物流拠点が入る倉庫の外観(KGLプレスリリースより引用)

山田社長は、20年(1~12月)の売上高は734億円、営業利益は3億1000万円で、外販の売上高は184億円となり、収入面でほぼ前年並みを確保できたと説明。「かなり売り上げの変動は激しく、期中には赤字になるのではないかという見方もあったが、収益をしっかり確保できた」と述べた。

その上で「車両のフォーメーションは今のままでは厳しくなっていくだろうし、今の荷ぞろえ体制による構内の(トラック)滞留時間では協力会社さん、トラックドライバーさんが当社から離れていってしまうと危惧している。配車もまだ人海(戦術)に頼っている部分が大きい。いかに作業の高度化、省力化をしていくかを考えていかないといけない」と分析。業務の効率化や負荷軽減を図る余地が大きいとの見方をにじませた。

「出荷日前々日受注」は飲料からビール類や和洋酒ワイン製品に拡大へ

21年の事業計画では、人とフォークリフトの接触、車両からの転落、動く物への手出しの「3大物流災害」と出荷禁止品の出荷、法定印字違反の「2大品質事故」を最重点として、優先的に事故防止対策を講じていると明記。

輸送力強化に関しては、既存のパートナー企業との関係強化と新規パートナー企業の獲得、キリングループの貨物の閑散期をカバーできる一般貨物の輸送需要獲得、24年に施行されるトラックドライバーの残業時間厳格化に備えた運行計画の見直し、運賃の引き上げ検討などを列挙した。

拠点能力強化では、今年3月をめどに5000坪程度の「つくば物流センター」を立ち上げ、近隣のキリンビール取手工場から保管・出荷能力の3分の1を移管、同工場全体の出荷能力を現行から12%向上できると見込んでいる。併せて、全国で2~3カ所の物流センターを開設する方向で調整しているという。

KGLの小林信弥常務執行役員物流管理部長は「将来に向け、トラックドライバーの確保を考えた場合、いかに配送先に近いところに拠点を構え、回転率を上げていくかが必須になる。引き続き消費地周辺でいい物件を探していきたい」と語った。

人材育成は社内インターンシップの積極的な展開、在宅勤務制度の拡大、5年先まで見据えた個人ごとのキャリアプラン策定などを打ち出した。外販事業の収益確保については、既存顧客のサービス収支改善と収益性向上などを通じて20年と同水準の売り上げ・利益達成を目標とする考えを示した。

「ホワイト物流」運動への対応としては、既に作成している自主行動宣言に沿ってパレット活用や発注量平準化、船舶や鉄道へのモーダルシフト推進、他業種との共同物流拡大などを図ると強調。かねて注力している、「D+2」と呼ぶ出荷日前々日受注の取り組みについては、今年5月から対象商品を従来の飲料に加え、ビール類や和洋酒ワイン製品にも広げていく予定を明らかにし、物流拠点でのトラック待機時間短縮を図る方向性を示した。

(藤原秀行)

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