京急線踏切トラック衝突事故、ドライバーが通常と異なるルート通行した理由は特定できず

京急線踏切トラック衝突事故、ドライバーが通常と異なるルート通行した理由は特定できず

運輸安全委が報告書公表、首都高入口閉鎖でう回の可能性

運輸安全委員会は2月18日、2019年9月に横浜市神奈川区の京急線神奈川新町駅そばの踏切で大型トラックが立ち往生し走ってきた快特電車と衝突、トラックドライバーが死亡し電車の乗客・乗員77人が負傷した事故に関する調査報告書を公表した。

この中で、電車がトラックとの衝突を回避できなかった原因として、踏切の異常を警告する「特殊信号発光機」(特発)が架線柱などで断続的に遮られ、運転士が気付くのが遅くなった可能性があると指摘。特発の停止表示を確認してからすぐに非常ブレーキを使えば衝突時のスピードを落とせた可能性があるものの、当時はブレーキの操作を運転士の判断に委ねていて明文化していなかったと明らかにした。

再発防止へ踏切に障害物があると検知した際に電車へ即座に通知する仕組みの導入などを京急に求めた。

一方、ドライバーが立ち往生したのは、通常使用しているルートで運行できず、う回しようとした際に踏切へ侵入したが、道路の幅が狭く通行に時間が掛かったためと推定。ただ、通常と異なるルートを使った理由はドライバー本人が亡くなっているため、明らかにできなかったと説明した。


京急電車とトラックの衝突現場(運輸安全委員会報告書より引用)

健康状態やアルコールチェックで問題はなし

報告書は、ドライバーが所属していた運送事業者の代表者の証言として、ドライバーは事故当日、横浜市内で荷物を積み込み、千葉県成田市の届け先に向かったが、通常はこの踏切を通ることはなく、当日通行した理由は不明と話していることに言及。一方、事故当日は通常使っている首都高速道路の「子安入口」が料金所の改修工事で閉鎖されていたため、う回した可能性が考えられると分析した。

また、ドライバーは踏切脇の狭い道路「浦島第152号」から当初は左折しようとしたがうまく行かず、右折して踏切に入ったと分析。目撃者の証言や踏切の動作記録を踏まえ、報告書はトラックが踏切に入った後に踏切が鳴り出し、そこでさらに電車と衝突する位置まで前進したとみており、踏切の外に退避しようとしたと推定した。

状況を基に、道路管理者や都道府県公安委員会に対し、大型トラックが狭い道路を通り、踏切に入るのを未然に防ぐ対策を検討すべきだとの見解を示した。浦島第152号には自動車の幅や長さなどの大きさに関する交通規制はなく、当該のトラックも通行制限を受けていなかった。

ドライバーに関しては、18年から運送事業者で雇用され、事故や違反はなく勤務態度も良好で、会社で実施している健康診断で異常は認められず、運転に支障を及ぼすような健康上の問題はなかったとの運送事業者代表の説明を引用。事故当日、午前4時10分ごろに事業所を出発する際、運転前点呼は実施者不在のため行わなかったが、車両点検では異常がないことを確認しており、ドライバー自身で実施したアルコールチェックは問題がなかったという。


事故現場付近の状況略図。自動車の旋回軌跡や縮尺、設備の位置関係などは略図のため実際と異なる(運輸安全委員会報告書より引用)

(藤原秀行)

報告書の全文はコチラから(運輸安全委員会ホームページ)

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