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【独自取材】『ルポ トラックドライバー』著者・刈屋大輔氏インタビュー(後編)

【独自取材】『ルポ トラックドライバー』著者・刈屋大輔氏インタビュー(後編)

「運送業界は物流を止めないようコロナ感染防止に全力を挙げている」

昨年11月末、刊行された新書『ルポ トラックドライバー』(朝日新書)。タイトルからも分かる通り、トラックの助手席に乗り込むなどして、ドライバーの仕事ぶりに迫った貴重な記録として運送業界関係者らの注目を集めている。新型コロナウイルスの感染拡大でマスク着用を強いられるなど、負荷が増している実態も明らかにしている。

ただ、そんな状況下でも本書は業界紹介本にありがちな、厳しい側面ばかりにフォーカスするのではなく、志を持って日々を生き抜こうとする真摯な姿勢など前向きな面も紹介しようと努めている。著者の物流ジャーナリストで青山ロジスティクス総合研究所の代表取締役を務める刈屋大輔氏に、運送業界への思いなどを尋ねた(インタビューは昨年末、弊社にて常時マスク着用の上、実施)。

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取材に応じる刈屋氏

自動運転技術に負荷大きい深夜業務の代替を期待

――新型コロナウイルスの感染拡大で運送事業者の負荷も増しています。
「本当にそう感じますね。実際に現場を見させていただくと、ドライバーは猛暑の中でもマスクを着用し、配達先まで小走りで移動しています。それだけでも相当体力を消費しそうですが、マスクを着けていないと『何だ、あのドライバーは!』とクレームを付けられてしまいます」
「ドライバーはかなり不特定多数の人との接点が多いですから、皆さんはマスク以外にも手洗い、うがい、手指の消毒とかなり気を使って配達業務に当たられています。本当に物流を止めないよう、毎日一生懸命に取り組まれているんです。しかし、本書でも触れましたが、荷物を届けに来たドライバーに対してインターホン越しに『コロナにかかりたくないから荷物は玄関に置いていって』と邪険な扱いをされるなど、残念ながら心ない人たちも存在しています。いかにも体調が悪そうな男性に荷物を渡して受け取りのサインをもらっている最中にせきを掛けられ、コロナ感染の可能性におびえたドライバーさんもいました」
「運送事業の経営者ら管理する立場の人たちも、感染リスクを下げようとドライバーに栄養の豊富なものを食べて免疫力を高めるよう指示したり、飲み会への参加は控えるよう求めたりと、できることを最大限やろうと努めています。そうした実情はぜひ荷主企業や消費者の方々にも知っておいていただきたいと思います」

――トラックドライバーの負荷軽減へ進めるべき方策は何だと思われますか。
「ホワイト物流推進運動は非常に面白い試みですね。ようやくこうした取り組みが行われるようになったのかという思いはあります。同運動は荷主企業もドライバーの労働環境や取引条件などの改善へ協力する方針を宣言していますから、今後は果たして各企業が宣言内容を実行に移しているかどうかを確認する機能も設けないといけないのではないかと感じています。物流施設でのトラック予約受付システムなどのソリューションも一見地味かもしれませんが、待ち時間短縮にはつながるでしょう。先が全く分からない中で延々と待たされるよりは、ITでいつごろ入場できるのかを明確に示すだけでも意味は大きい。ぜひ活用してほしいですね」
「よく言われているトラックの自動運転は実用化がまだまだ先だとは思いますが、長距離輸送は夜間に移動することが多いですし、私も同乗して強く感じていますが、夜間に大型トラックを運転するのは非常に怖く、神経を使います。自動運転の実用化でドライバーの仕事がなくなるのではないかと懸念される声も聞きますが、そもそも昼間の活動が基本のはずの人間が夜間に長時間運転するのは負荷が大きいですから、自動化でそのつらい仕事が置き換わり、人間が無理をしてやってきた仕事の量が減るのであれば歓迎してもいいのではないでしょうか」

女性ドライバーのみの配達チーム構想も

――本書に登場する、大型トレーラーで海上コンテナを輸送している女性が「仕事内容が(荷積み・荷下ろしなどがなく)ほぼ運転だけという点も魅力だった」と語っています。刈屋さんも言及されていますが、これはドライバー不足解消のヒントにもなりそうな発言ですね。
「そうですね。日本国内では大型自動車の運転免許を保有している女性が約13万人いるとも言われています。力仕事が少ないという海上コンテナ輸送業務の特徴を逆手にとって、最大限アピールしていくことが、免許は持っているもののトラックドライバー職には就いていない女性に、この仕事へ目を向けてもらう契機になるのではないでしょうか。海上コンテナ輸送に比べてドライバー自身が荷物の積み降ろしに当たることが多い他のトラック輸送でも、その積み降ろしの部分の見直しが必要だと思います」

――他にも本書で触れられている女性ドライバーは前向きな姿勢が目立ちます。
「早朝と深夜にパートタイムで軽トラックの運送業務に就いている女性は、将来の目標として女性ドライバーだけで構成される配達チームを発足させたいと考えていました。自宅で荷物を受け取る女性にとっては、特に深夜帯は女性ドライバーが訪問した方が安心できますし、ニーズはあるとみています。軽トラックは小回りが利いて運転しやすいという魅力もある。そうした前向きな女性はこれからも長くトラックに乗り続けてくれるでしょうし、日本経済を支え続ける人たちになっていると期待できます。男性はもちろん、女性にもさらに活躍いただける余地はあるでしょう」

――今後の運送業界はどうなっていくとみていますか。
「個人的な考えですが、人手不足が深刻化する中で、これからは運送事業の概念が変わり、あるエリア内ではそれこそ食品も医薬品も、インターネット通販の商品も新聞も、何でも街の運び屋さん的な運送事業者が一括して輸送を引き受けるという形があり得るのではないでしょうか。そうしたモデルが確立されれば、例えば東京の赤坂何丁目だけはどんな荷物であっても完璧に運ぶ、という地域配達会社がどんどん出てくるかもしれません。それぞれの荷物ごとに人を配置すると、それだけ人手が必要になりますから。もちろん、配車などスケジュールのコントロールが難しい部分はありますが、そこはデジタル技術を生かせるところですので、配車管理がより効率的に行えるツールが登場し、人も併せてうまく配置できる体制が出てくれば、街全体の物流が効率化されていくのかなと感じています」

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――今後も運送業界の取材は続けられますか。
「前にもお話しした通り、これからもトラックには定期的に乗らせていただきたいですね。乗り心地に関しても、私が初めて乗った1997年、その前は宅配大手でアルバイトしていたころから比べると、助手席でも明らかに改良されています。運転する空間はメーカーの努力ですごく良くなっていると思います。トラック自体の進化を確認する意味でも、定期的に乗った方がいいですね。消費者の方々がトラックに乗る機会がもっと増えれば、ドライバーという仕事にもより理解が深まると期待しています」

著者プロフィール
刈屋 大輔(かりや・だいすけ)
1973年生まれ。97年青山学院大経営学部卒業、輸送経済新聞社に入社。物流専門紙「輸送経済」記者、月刊誌「流通設計」副編集長などを歴任。2001年ライノス・パブリケーションズに移り、「月刊ロジスティクス・ビジネス(LOGI-BIZ)」の編集記者、副編集長を経て07年4月退社。08年4月青山ロジスティクス総合研究所(ALI)を設立、現在に至る。10年3月青山学院大大学院経営学研究科博士前期課程を修了、経営学修士号(MBA)を取得。交通事故で親を亡くした子供たちの社会進出を支援する一般社団法人フラワーリボン協会の常務理事も務める。他の著書は『知識ゼロからわかる物流の基本』(ソシム)。


『ルポ トラックドライバー』(朝日新書、税別790円)
本書の概要はコチラから(朝日新聞出版ウェブサイト)

(聞き手・藤原秀行、著者写真・中島祐)

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