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【独自取材】『ルポ トラックドライバー』著者・刈屋大輔氏インタビュー(前編)

【独自取材】『ルポ トラックドライバー』著者・刈屋大輔氏インタビュー(前編)

「環境が厳しくても夢を持ち仕事している多くの存在を知ってほしい」

昨年11月末、刊行された新書『ルポ トラックドライバー』(朝日新書)。タイトルからも分かる通り、本書の大きな特徴となっているのが、時にはトラックの助手席に乗り込み、時には新型コロナウイルスの感染拡大の下でも休まず荷物を運ぶ姿に密着。いまだ世間一般に広く知られているとは言い難い、真摯なドライバーたちの働きぶりをつぶさに捉えている上に、将来の夢や不安までも聞き出しており、非常に充実した内容となっている。

長時間の拘束など現場の実態に迫ろうとした背景と狙いを、著者の物流ジャーナリストで青山ロジスティクス総合研究所の代表取締役を務める刈屋大輔氏に尋ねた(インタビューは昨年末、弊社にて常時マスク着用の上、実施)。

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取材に応じる刈屋氏

新米記者当時の同乗取材が原点に

――刈屋さんは物流業界紙「輸送経済」の記者をはじめ、かつての月刊誌「流通設計」副編集長や弊社の月刊誌「ロジスティクス・ビジネス(LOGI-BIZ)」の副編集長などを歴任され、物流ジャーナリストとしてのキャリアを長く積まれています。トラック運送には昔からご関心があったのでしょうか。
「そうですね。本書のまえがきにも書きましたが、私自身、大学受験に失敗して浪人生活が決まった後、大手の宅配事業者でアルバイトをしていました。トラックの助手席に乗ってドライバーさんのさまざまな業務をサポートする補助員の仕事をしていたんです。その当時も勤務時間は長く、アルバイトでさえ家路に付くのは連日午後11時すぎでしたが、その分報酬は高かった。トラックドライバーは万が一の時に駆け込めば十分な収入が得られる“安心して働ける仕事”という認識だったので、浪人中にもかかわらず自動車の運転免許は取得しました」
「大学では経営学を専攻しましたが、その中でも物流の勉強をしていました。また、輸送経済に入社後、新人時代にある大手トラックメーカーの新車発表会を取材した際、テストコースでトラックを運転する機会がありました。本当に短時間でしたが、慣れない大型車の運転は非常に怖くて身が引き締まる思いでした。ドライバーの方々の仕事が非常に難しく、重要なものだということを痛感しましたね。そうした出来事もあって、トラック運送業界には関心を持ち続けています」

――本書でも長距離から宅配までさまざまなトラックの同乗体験が語られています。同乗ルポを始められたきっかけは?
「これも本書のあとがきで説明しましたが、輸送経済では入社したばかりの新米記者に、トラック同乗ルポを書かせるという伝統がありました。おそらく、物流業界の最前線を早いうちに体験させて今後の取材に役立たせようという狙いだったんでしょうね。1997年に入社した私もその対象となりました。ある大手路線便会社にお願いして、東京~大阪間の長距離大型トラックに乗せてもらうことになったんです。そこが原点でした」

――初ルポの印象はどうでしたか?
「20年以上前の話ですので、率直に申し上げると、どういう話を書いたのか、記事の内容はほとんど覚えていません(笑)。ただ、現在でもドライバーの高齢化が盛んに指摘されていますが、その当時から長距離便のドライバーは若い人よりもベテランのドライバーの方が多かったという印象はありました」

女性ドライバーいわく「カー用品は全然イケてない!」

――本書にも収録されていますが、その後も同乗ルポや密着取材を行っていますね。
「本書の第1章に掲載している同乗取材は2016年にヤフーで配信された記事の内容を最近の情勢も踏まえて大幅に加筆・修正していますが、実は輸送経済時代の上司だった先輩で現在もフリーのジャーナリストとして活躍されている横田増生氏からの要請を受けて行ったんです。当時は増田氏も私も既に独立していましたが、多忙だった横田氏の“代打”として私が取材に当たりました。かなり久しぶりの同乗取材でした」
「その後は、今定期連載中の月刊誌『ロジスティクス・ビジネス』の大矢昌浩編集長からの提案もあり、宅配便などのドライバーの方々に密着取材をさせていただきました。横田氏も大矢氏も、物流現場の最前線へ定期的に身を置くことの重要性を常に説かれていますし、新型コロナウイルスの感染拡大でなかなか難しいとは思いますが、私自身も“物流の今”を知るために、機会があればまた同乗させていただきたいと考えています」

――同乗ルポを含め、これまでに数々の取材をされてきたと思いますが、接してきたドライバーについてはどういう印象でしょうか。
「どうしても一般的には男性が多い職場ということもあって、強面の人が多いとか怖いイメージを持たれがちです。しかし、私も浪人時代のアルバイトを含めて、かなりの方々と接してきましたが、そんな方には出会わなかったですね。心が穏やかで内気な性格の人も多かったような印象を持っています」
「トラックドライバーは確かに今も拘束時間が長く、体力的にもきつい仕事です。3Kに加えて、1990年のいわゆる“物流二法”施行による規制緩和で運賃自由化などが行われ、過当競争となった状況では私がアルバイトしていたころとは異なり、『稼げない』も含めた4Kになっているとも言われています。しかし、そうした状況の中でも日々頑張っているドライバーがたくさんいらっしゃいます」
「例えば、本書でご紹介した軽トラックのドライバーは元請けから業務を受託して1日で130個の荷物をさばき、配送先の不在にも悩まされますが、個人事業主から脱して車両10台ほどを保有できるようになることを目指し、日々頑張っています。他にも、女性で大型トレーラーに乗り、海上コンテナを輸送しているドライバーの方は、市場に出回っているカー用品が男性向けのものばかりでとにかくイケてないと不満を感じ、カー用品ショップのオーナーに女性ドライバー向けの商品を共同で開発しようと働き掛けたほどなんです。決して暗い話ばかりではなく、夢を持ち、楽しく仕事に励まれている方もたくさんいらっしゃる。それが本書で私が最も伝えたかったメッセージです」

国際物流総合展2021 第2回 INNOVATION EXPO

(以下、後編に続く)


『ルポ トラックドライバー』(朝日新書、税別790円)

本書の概要はコチラから(朝日新聞出版ウェブサイト)

(聞き手・藤原秀行、写真・中島祐)

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