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【独自取材】現場作業効率化・ペーパーレス化支援のカミナシ、物流業界の“身の丈DX”支援に注視

【独自取材】現場作業効率化・ペーパーレス化支援のカミナシ、物流業界の“身の丈DX”支援に注視

フォークリフトの始業点検に試験的導入、時間大幅短縮など成果

工場や店舗などの現場作業効率化とペーパーレス化を実現するソフトウエア「カミナシ」を手掛けるスタートアップ企業のカミナシ(東京都千代田区神田鍛冶町)は、底堅い需要が見込める領域として、物流業界に利用を積極的に働き掛けていく方針だ。

既に主要物流企業が試行的に導入、成果が挙がり始めているという。物流現場もいまだに紙の報告書などが主流を占めているところが多く、非効率性が指摘されているだけに、同社はソフトウエアを広めることで業務のDX(デジタルトランスフォーメーション)実現に貢献できる余地は大きいと分析している。

同社を創業した諸岡裕人代表取締役CEO(最高経営責任者)は「物流業界全体をデジタル化する壮大なDXを進める前提として、まず現場のペーパーワークをデジタル化する“身の丈DX”を確実に後押ししていきたい」と強調。今後3年間で導入企業を累計で800まで増やすのが目標だ。


現場でタブレット端末からチェックリストなどを利用できる(カミナシ提供)

「ノンデスクワーカーの才能を解き放つ」

同社は「ノンデスクワーカーの才能を解き放つ」を使命に掲げ、2020年6月にソフトウエアのカミナシを、クラウドベースで利用できる「SaaS(Software as a Service)」形式で提供を始めた。デスクワークに比べてデジタル化が大きく遅れている現場業務の変革に事業の照準を定めている。

諸岡CEO自身、家業の製造業の現場に携わった経験があるだけに、「紙のデータをエクセル表に手入力で転記するといったノンコア業務にリソースを多く割かざるを得ない状況があちこちで見られていた。このフローをどんな業界でもデジタル化できるツールを作りたいと思った」と振り返る。

ソフトウエアのカミナシはパソコンやタブレット端末を使い、品質管理のチェックリストなどを作成できる。スタッフが入力したデータを基に報告書も自動でまとめることが可能。責任者らへのメール送付まで段取りを付けられるようにするなど、細かな配慮を随所に見せている。

旧来の現場では担当者が膨大な紙の書類の内容に目を通し、記載にミスがないか細かく確認した上で整理、保存管理するだけでも膨大な時間を取られていた。同社はそこにカミナシを導入することで、クラウド上にデータを保管、作業進捗やミスの有無などの状況を担当者間で共有するのも容易になるため、大幅に業務時間を減らせるようになると見込む。

ソフトウエアのカミナシの大きなこだわりが、各現場の業務フローに即したチェックリストなどを現場スタッフ自身がノーコードで簡単に組み立てられるようにしていることだ。あらかじめ設定しているテンプレートの中からベースになる要素を選び、直感的に分かりやすいものを作り込んでいけるようになっている。

諸岡CEOは「これまではどうしてもIT部門など現場以外のプレーヤーがデジタル化を主導してきた。ノーコードを普及させることで、現場が主権者となってデジタル化を進めていけるようになる」と意義を強調する。

他にも、例えば現場の現状を報告する際、以前のように現場をチェックした上でいったんオフィスに戻って書類作成に取り掛かるという手順を省略し、その場でタブレット端末のカメラを使い写真を撮影、文章も書きこんで記録を作成できるようにするなど、使いやすさを追求している。

導入効果も非常に分かりやすく出ている。ある食品メーカーではチェックリストの印刷などの業務を省略できるようになり、管理者1人当たりの作業時間が月10時間以上減るとともに現場からの業務改善提案の件数も30倍まで増加、作業見直しの機運を高められている。他の製造現場では書類の確認・承認に費やす時間が以前から9割強も減らせたという。

諸岡CEOは「カミナシでペーパーレス化することにより、現場業務の改善提案もしやすくなった。提案内容も容易に共有できるため、カミナシが現場改善の良いサイクルを実現している」と分析する。


広島の食品メーカー、デリカウイングでの活用事例。カミナシで集めた改善報告をサイネージで表示し“見える化”している(カミナシ提供)

フォークリフトの始業点検に活用

外国人労働者が現場で増えている実態を重視し、カミナシのソフトウエアは英語や中国語、韓国語など43の言語に対応できるよう設定。ユーザーは9言語を選べる。

こうした細かい配慮の姿勢が受け入れられ、カミナシのソフトウエアを正式にリリースしてから8カ月で導入企業は約70社に上り、食品製造業に加えてコンビニやホテル、飲食店、ECなど14業界に及んでいる。今年6月に改正食品衛生法が完全施行され、食品衛生管理の国際基準「HACCP(危険度分析による衛生管理)」の活用が求められるようになることもカミナシのソフトウエアにとっては追い風になると期待を寄せている。

物流業界では、ある企業が今年に入ってフォークリフトの始業点検にカミナシのソフトウエアを使い始めた。従来は紙にチェック項目を記したリストを使って点検を進めていたが、iPadで確認が可能になり、大幅にスピードアップできている。不具合が見つかっても現場で写真を撮影、その場で内容を書き込み、詳細に報告できるようになった。

現場では始業点検でカミナシの対象とするフォークリフトの台数を増やすことも検討しているという。諸岡CEOは「22年からはECや物流、病院など領域をさらにどんどん広げていきたい」と意気込んでいる。

(藤原秀行)

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