【独自取材】省スペースのパレタイズシステム、夜間の完全棚卸し自動化など「現場変革」構想続々

【独自取材】省スペースのパレタイズシステム、夜間の完全棚卸し自動化など「現場変革」構想続々

国際物流総合展現場コンパクトルポ(その2・完)

3月9~12日に愛知県常滑市で開かれたアジア最大級の物流に関する展示会「国際物流総合展2021」では、脚光を浴びているロボットなどの自動化機器をはじめ、企業の規模を問わず、物流業務に変革をもたらすことを目指す構想を数多くお披露目した。新型コロナウイルスの感染拡大でやむなく参加を見送る企業も少なからずあったものの、人手不足解消や業務標準化といった課題を乗り越えようという熱意は損なわれていない印象を受けた。

芝浦機械(旧東芝機械)は物流向けのパレタイズシステムを開発。2・5メートル四方のスペースが最低限あれば稼働できる省スペースが大きな特徴だ。パレットを回転させることで、リーチが短いアームでも荷物を積み付けられるなどの工夫を凝らしている。

同社は「われわれが得意とする産業用ロボットを組み合わせ、労働人口減少による人手不足をカバーできるソリューションを提供していきたい」と意気込む。


芝浦機械のパレタイズシステム

搬送システムなどを取り扱うマキテック(名古屋市熱田区)はかご台車の下に潜り込んで持ち上げ、搬送するAGV(自動搬送ロボット)を発表した。自社で製造していた磁気テープガイド型のAGVと、物流施設や工場などでAGVを支障なく走行させるナビゲーションソフトウエア「Navitrol(ナビトロール)」を組み合わせ、磁気テープを使わずに既存施設へ導入できるよう改良している。

ナビトロールはAGVに搭載しているセンサーやカメラなどを用いて周辺の障害物などのデータを取得、地図を作成し自分の居場所を推定する。必要な機能を備えていればどのメーカーのAGVでも基本的に対応できるのが強みだ。フィンランドのAGVメーカー、Navitec(ナビテック)が開発・製造し、日本の技術商社リンクスが国内代理店を務めている。

マキテックは「既存の物流施設などのレイアウトを大きく変える必要がないのは大きなメリット」と強調。現在は三重県四日市市の研究施設で実証実験を重ねており、年内の販売を目指している。


マキテックのAGV

国際物流で荷主と輸送事業者をマッチング

19年設立のWill box(ウィルボックス、横浜市)は、国際物流をデジタル化する新サービス「Giho(ギホ)」をお披露目した。荷主企業が必要な情報を入力すれば見積書を自動作成し、サービスに参加している物流企業の中から複数のサービスを組み合わせ、最適なコストで運べるルートを提示する仕組みだ。荷主企業が見積もりに満足すればそのままワンクリックで発注も可能、デジタルの力を生かしてマッチング成約件数を着実に積み上げようと取り組んでいる。

06年設立のアスタリスクはRFID、画像認識などの自動認識技術とIoT(モノのインターネット)を組み合わせた業務改革ツールを提供している。目玉技術の1つとして開発中のRFIDアンテナを出展。RFIDタグを取り付けた商品に加えて、アンテナ事態も縦横に動くため、タグと電波の最適なタイミングで情報を読み取ることが可能になるという。

棚に沿って取り付けたレールを使いアンテナを自走させ、夜間に棚卸しを完全自動化することも視野に入れている。今年6月以降に異なるタイプのアンテナを順次商品化していくことを念頭に置いている。


アスタリスクのRFIDアンテナ

配送・運行計画の効率化にも挑む企業が多く観られた。ゼンリンは自社の基軸事業として強みを持つ地図情報とITを連動させ、配車計画からルート案内、車両の動態管理に至る広範囲をカバーした車両運行管理支援システムを紹介した。

時間優先なのか、積載率が最も重視する項目なのか、といったようにユーザーのニーズに合わせて最適解をアプトプットすることに重点を置いている。さらに、詳細な地図を基に、配送先の建物入り口前までのドア・ツー・ドア案内も実現しており、業務日報の自動作成や安全指導のサポートにも踏み込んでいる。

ライナロジクスはクラウドベースのAI(人工知能)を活用した自動配車サービス「LYNA(ライナ)自動配車クラウド」をアピール。配送情報を入力すれば最適な車両台数や配送経路をはじき出すのが特徴だ。

コロナ感染拡大を踏まえ、今年12月末までの期間限定として、コロナワクチンの輸送業務に当たる事業者に同サービスを無償提供することも積極的にPRした。同社によれば、実際にワクチン輸送を受託した事業者にとどまらず、輸送受託の是非を検討する際のシミュレーション用にも無償でシステムを提供しているという。既に導入例も出ており、同社は「コロナ禍で経済が停滞している今、社会全体が変化を求めており、運送業界にとっても今が変革のチャンス」と訴えている。

(川本真希、藤原秀行)

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