【独自取材】オークファングループが日本の余剰在庫を救う(後編)

【独自取材】オークファングループが日本の余剰在庫を救う(後編)

再流通支援で企業の“駆け込み寺”的存在に

【独自取材】オークファングループが日本の余剰在庫を救う(前編)

 東証マザーズ上場のオークファンが展開している多様なインターネット関連サービスの中で、年々存在感が大きくなっているものの1つに、企業の抱える余剰在庫や返品、型落ち品などを買い取り、多様なチャネルを通じて再び市場に流通させる「リバリュー事業」が挙げられる。

 商品サイクルが短くなり、品質は全く問題ないのに行き場がなく廃棄される余剰在庫や返品は国内だけでも膨大な量に上る。企業にとってはそうした商品の再流通を促す同事業はまさに“駆け込み寺”的な存在だ。オークファングループもさまざまな企業の期待に応えようと、「在庫課題解決パートナー」を標榜し、新たな施策を打ち出している。

「ノベルティーで無料配布」「海外に輸出」も引き受け

 オークファンは祖業として、国内のインターネット通販やオークションで日々取引される商品の実売データを収集・分析し、専用サイトで独自の相場情報を提供している。分析した実売データは680億件と膨大な量に上る。

 このビッグデータは、約5千社のメーカーや卸売業者と約30万~40万社の小売り事業者らを仲介する専用モール「NETSEA(ネッシー)」など他のサービスにも活用している。それはリバリュー事業も同様だ。

 リバリュー事業はグループのSynaBiz(シナビズ)が展開。企業から買い取る余剰在庫や返品などは家電からパソコン、家具、日用雑貨、ゲーム、アパレル、化粧品、スポーツ用品、事務用品などとバラエティーに富んでいる。シナビズが買い切った形を取るため、企業にとっては余剰在庫や返品からキャッシュフローを生み出せるのが魅力だ。

 しかし、以前より余剰在庫や返品などの受け皿として処分業者や現金問屋、ディスカウントストアが各地に存在している。競争相手が数多い中、後発のシナビズがどうやって差別化に成功したのか。大きなポイントとなったのが、企業側のニーズに細かく応えられる多様な再販チャネルの設定だ。

 小売り・卸事業者やメーカーは余剰在庫や返品を処分したいと願ってはいるが、たたき売りの価格で一般の消費者に再販売されると、現行品の値段やブランドイメージに悪影響を及ぼすと不安視する向きも多い。どこに商品が流れていくのか把握できなくなることを懸念する声も根強い。

 そのため、シナビズは小売り事業者らに加えて、例えば日本製品への人気が高い海外に輸出することも提案。提携企業に社販用商品として扱ってもらったり、販促のノベルティーとしてイベント会場で無料配布してもらったりと、店舗を経由しないクローズドなマーケットも準備している。

 さらに要望があれば、同社が埼玉県三芳町に構える物流センターで商品のタグやロゴを切り取ったり、段ボール箱をロゴ入りのものから無地のものに詰め替えたりする加工を施した上で出荷している。再販の価格を重視する事業者には、シナビズが提供する独自のBtoB向け会員制モールで扱うルートも用意している。


シナビズが展開しているBtoB向け会員制モール

 シナビズが余剰在庫や返品などを買い取る際には、前述の通り、オークファンのサイトで収集してきた膨大な価格動向のデータを生かし、より市場の実勢に近い価格を提示できるだけに、説得力を持った交渉を可能にしているという。ネッシーで付き合いがある事業者も余剰在庫や返品の有力な販売先だ。このようにグループで展開している各種サービスが相互に連携し、強みを発揮するよう努めている。

商品の価値を自動判定するシステムで処理迅速化

 リバリュー事業を進める上で求められる要素の1つがスピードだ。日々同社に持ち込まれる種々雑多な余剰在庫や返品などの状態を滞留せず正確に把握することが、再販売する価格やチャネルを適正に設定する上で不可欠となる。

 そのため、前述の物流センターでは、独自のシステムを導入している。届いた商品の外装の痛みや汚れ具合、動作の状態などの項目ごとに情報を作業スタッフが入力すると、システムが自動的に商品の価値を6段階で評価する仕組みだ。「ジャンク品」の判定になったとしても、安全に使えるものであればまとめて割安で販売するなど、徹底して有効活用を図る。

 そもそも、一般的な物流センターは入庫される商品のデータが事前にそろっている。しかし、シナビズのセンターは商品が届いて検品するまで状態を確認できないほか、仮に同一商品が複数存在したとしても、全てが同じ状態であるとは限らず、個々の商品でそれぞれ細かく対応しなければならない。物流センターの常識とは対照的な運用を迫られるところから、独自のシステムが生まれた。

 システム導入で旧来の人海戦術的なオペレーションからも解放された。システムが状態を見極めることで、人間が担う場合より判定のばらつきを解消し、より水準を高めたいとの思惑もある。


シナビズが埼玉県三芳町に構える倉庫。家電や日用品、家具など多様な商品が日々届けられる(2017年撮影)

BtoBとBtoCの双方に販路

 余剰在庫や返品などを再び流通させるフィールドはBtoBだけでなく、BtoCにも広げている。前編で紹介した「オタメシ」もその一環だ。さらに、昨年12月には約250万人の会員を有していた通販サイトを展開するネットプライスを完全子会社化。再流通の販路拡大を図っている。

 シナビズの藤井厚執行役員は「BtoB、BtoCの両方に再流通の経路を持つのは当社の大きな強み。家電からパソコン、食品までと幅広いラインアップなのも特徴だ。やはり、上場企業のグループという点で信用いただいている。再流通に関してはコンプライアンスが極めて重要なので、社内の体制をより整備していきたい」と事業拡大を見据えた基盤強化の必要性を指摘する。

 物流に関しては、業務提携している佐川急便が全国への商品配送などの面で大きな役割を果たしている。同社と連携している日立物流も、庫内作業関係で効率化に貢献しているという。

 藤井氏は「佐川急便、日立物流の両社は幅広い企業とお付き合いされている。メーカーやアパレルのビッグネームといった、われわれ単独ではなかなかアプローチできないような企業とも接点がある」と営業面でのメリットを強調する。リバリュー事業が担っている、余剰在庫や返品というサプライチェーン上の滞留を解消する社会的インフラとしての役割はさらに大きくなりそうだ。

(藤原秀行)

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