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【独自取材】「不確実性の高い時代に物流施設は真価を発揮」

【独自取材】「不確実性の高い時代に物流施設は真価を発揮」

JLL日本法人・河西社長独占インタビュー(前編)

米系不動産サービス大手JLL(ジョーンズ ラング ラサール)日本法人の河西利信社長はこのほど、ロジビズ・オンラインの単独インタビューに応じた。

河西社長は、新型コロナウイルスの感染拡大で不動産市場も影響を受けているものの、物流施設に関しては賃貸、投資の両面でマーケットの需要が継続的に強いと指摘。不確実性の高い時代に先進的な物流施設は中長期的に賃料収入を着実に挙げて物流業務効率化に貢献するという安定的なアセットとしての真価を発揮し、国内外の投資家から注目されているとの見方を示した。

今後もeコマースの利用増などで引き続き高機能の物流施設のニーズが見込まれるのを踏まえ、JLL日本法人もリーシングや売買仲介などのサービスで物流施設への対応を強化していることを説明。同社独自のサービスとして物流施設の最適配置などをサポートする「サプライチェーンコンサルティング」をアジアや欧米のJLL拠点とも連携し、さらに拡大していく姿勢を表明した。

インタビュー内容を2回に分けて紹介する。


インタビューに答える河西社長

日本市場は「3S」で強みを発揮

――物流施設マーケットの動向をどう認識していますか。
「まずロジスティクス(物流施設)回りの不動産マーケットは、一言で申し上げると継続的に強いですね。日本の不動産市場全体で捉えた場合、やはり新型コロナウイルスの感染拡大の影響も受け、減速感はあります。一例を挙げれば、主要アセットのオフィスに関しては、賃料は東日本大震災後の2011年以来、8年以上にわたり上昇傾向が続いていたのですが、コロナ禍が発生した昨年の第2四半期(4~6月)に初めて下落に転じました。その後も本格的な上昇局面には戻っていません。しかし、ロジスティクスはコロナ禍が発生した昨年以降も上昇傾向が継続しています。今年に入ってもその傾向に大きな変化は見られません」

「売買市場については、オフィスも賃料の値下がりがあるにもかかわらず、比較的堅調です。われわれの統計によると、2021年第1四半期(1~3月)の商業不動産の売買金額は昨年の同時期よりだいぶ落ち込んでいますが、肌感覚では日本のマーケットは海外から引き続き注目されていて、根強い需要がある。その中でもロジスティクスの資産に対する投資需要は非常に強いと申し上げていいと思いますね」

――物流施設というアセットの特徴として、中長期的に安定して賃料収入が得られることがよく挙げられます。コロナ禍でもそうした点が評価されている側面が大きいのでしょうか。
「そもそも日本の不動産マーケットが強みを持っていることは様々な形で説明可能ですが、当社の調査部門の責任者はその要因を『3S』と表現しています。1点目は『sizable(サイザブル、相当に大きい)』ですね。今、世界的に資金の流動性が非常に高く潤沢な中、世界中の投資家は投資対象にある程度のボリュームを求めています。日本の不動産マーケットは資産規模が大きく、そうした投資家のニーズの受け皿になっています。2つ目は『stable(ステイブル、安定性)』です。コロナ禍で社会の不確実性が増している中にあって、安定性がある日本のマーケットは非常に有利です。3つ目が『small(スモール、小さい)』ですね。コロナの影響が諸外国より相対的に少ない。こうした要因も踏まえて、そもそも日本市場に対する海外からの根強い投資意欲があると考えています」

「その中にあっても、昨年1年間を通じての国内不動産投資額を資産別に見ると、ロジスティクスが全体の31%で、オフィスの32%に次ぐ高い比率を占めました。通常はオフィスが全体の5割程度と一番大きく、次はだいたいリテール(商業施設)と続くことが多いのですが、ロジスティクスがオフィスとほぼ同じ投資比率になっていることからも見られるように、ロジスティクスの人気は非常に高いと思います」

「不確実性の高い時代にあってこそ、ロジスティクスの資産は比較的長期で安定収益を得られるという真価を発揮できますし、コロナ前から進んでいたeコマース普及の流れがコロナ禍で一挙に加速したという社会構造変化の流れに乗っていることも投資が進んでいる大きな理由と言えるでしょう」

――物流施設がここまで注目されるアセットになると予想はされていましたか。
「予想していましたと申し上げたいところなのですが(笑)、ここまで大きな市場規模になるとは私も想像していなかったところがありますね。ロジスティクスが注目され始めたころから起きていた、これまで小売店舗の棚にあった商品がeコマースの利用増で倉庫に移るという、非常にシンプルな、身近で分かりやすい構造の変化を感じてはいました。これがオフィスですと、景気が良くなれば人を採用して従業員が増える、景気が悪くなれば採用を抑制する、だからオフィス需要が減るという循環的な環境がありますが、ロジスティクスはそうした循環と言うよりも、今申し上げたような小売店の棚にあった商品が倉庫に移っていく、ダイレクトにお客様のところに届けていくために必要なのがロジスティクス資産という、このストーリーは極めてインプレッシブ(印象的)なものですし、社会構造の変化をまさに象徴しているものだということが、私も含めて多くの投資家が持たれた印象だと思います」

――御社も物流施設関連の不動産サービスの利用が増えているのでは?
「その通りです。その象徴の1つが、投資家の種類が非常に増えているということです。これまではオフィスや商業施設、ホテルといろんな投資対象がある中で、ロジスティクスはどちらかというと特別なアセットクラスという扱いでした。ロジスティクスを開発したり、既存物件を売買したりするのは専門の投資家がいるというイメージでした。しかし、ここ2~3年は従来、オフィスや商業施設などを中心に手掛けてきた投資家が日系、外資系を問わず大挙してロジスティクスに進出しています」

「当社にも非常に幅広い層の投資家からロジスティクスを開発したいが適地はありませんかとか、ロジスティクス資産に投資したいが売却意向のあるロジスティクス資産はないでしょうかとか、開発するに際してアドバイスをお願いしたいとか、ご相談をいただく機会が非常に多くなっています」

――新規開発にしても新規参入のプレーヤーが増え、用地取得が厳しくなっています。
「本当にそう感じます。ロジスティクス資産の開発が2000年代初めにスタートしてから比較的今までは容易に適地を見つけやすかったのですが、物流施設開発用地のニーズが非常に強いということは土地を所有されている方々にもかなり知られるようになりましたし、適地の有無や価格という点でお客様に開発適地を紹介するのも非常に大変になってきていますね」

医薬品など専門性の高い案件にも対応可能

――かねて物流施設への対応を拡充する方針を表明されています。実際にこれまでどのような対応を取られましたか。
「まず1つはロジスティクスのリーシング担当部門の人員を強化しています。さらに、売買仲介部門についてもロジスティクス資産の専門チームを立ち上げ、対応を拡充しています。併せて、『サプライチェーンコンサルティング』、これは不動産というよりもう少し、企業そのもののサプライチェーン全体のコンサルティングを手掛けているのですが、この領域も引き続き、強化しています。弊社の内部ではまずこの3つのコア的な領域を重視しています」

「加えて、さまざまな他の事業でもロジスティクスに関連する部分が増えてきています。例えば、不動産の開発コンサルティングや竣工した資産を管理するプロジェクトマネジメント(PM)にもロジスティクスの専門部隊を設置しており、受託資産も順調に伸びています。他にも不動産鑑定も非常にロジスティクスへの対応が増えているんです。企業がお持ちの遊休資産をどう活用するかをコンサルティングする部門についても、これまではオフィスや商業店舗、住宅を開発して安定収入を得るのがいいのではないかと提案させていただくことが多かったのですが、ロジスティクスのお話も増えているため、コンサルティング部門を強化しています」

「最後に、これは全ての事業部に関わってくるのですが、不動産市場の賃料動向などの基本データを提供させていただく調査部も強化の対象です。地域的にはもともと全国のマーケットをカバーしていますが、調査をより詳しく行っています。ロジスティクスマーケットについても、これまでの東京圏や関西圏に加え、昨年からは中部圏も深くカバーし始めました」

――御社のサービスの特徴の1つが物流施設の最適配置などに関するサプライチェーンコンサルティングだと思いますが、最近の顧客からのニーズの傾向は?
「今般、コロナ禍でやはりサプライチェーンの再構築をお考えになっている企業が多いですね。もちろん、以前からアマゾンのようにもともとECをメーンにされている企業はありますが、これまで実店舗を中心にサプライチェーンを構築してきたのが、並行してインターネット販売も展開されようとしている会社が非常に多くなってきています。実店舗でのサプライチェーンはネット販売のものと異なる部分がありますから、そういう意味でサプライチェーンを再構築するコンサルティングの案件はもともと増えていたのですが、コロナでさらに加速しています」

「おっしゃる通り、サプライチェーンコンサルティングは他の不動産サービス会社にはあまりない特色だと思います。2013年にコンサルティング会社を買収したのがサービスを本格的に開始する契機となりました。当社の場合はロジスティクスのリーシングや売買仲介のチームと連携してコンサルティングに臨む場合が多いですね。おかげさまで経験を重ね、トラックレコードもだいぶ増えてきました」

――サプライチェーンコンサルティングの強みは何でしょうか。
「グローバルで他のJLLの拠点とつながりがある点ですね。例えば、外資系企業が日本に進出してサプライチェーンを構築したい、倉庫を借りたいとお考えになっている場合、グローバルの事業展開の一環と考えられますので、リーシングや売買仲介もまず日本だけでなくアジアの各拠点にあるサプライチェーンのコンサルティング部門と協調し、さらにはグローバル各エリアのチームと連携しています。サービスラインもフルでそろっている上で、グローバルでコンサルティングを提供できるのは非常に強みだと自負しています」

――JLLはシンガポールにアジア全体の統括チームを配置していますね。物流施設に関してもシンガポールが軸になって連携しているのでしょうか。
「従来はどちらかというと、日本は日本のロジスティクスチーム、中国は中国のロジスティクスチームが軸になって取り組む、というような形でした。ご指摘の通り、JLLグループのアジア太平洋地域の本部機能がシンガポールにあり、そちらにロジスティクスのアジア太平洋地域のヘッド的組織ができたんです。そのチームを中心に、アジア太平洋各国のロジチームが連携する、さらに米国、欧州と連携するというフルの体制が完全に整備されたのがここ1年くらいの動きですね」

――グローバル全体で物流施設をカバーできることに対しては顧客の反応も良いのでは?
「もっと宣伝したいと思っています(笑)。オフィスなどの主要アセットに関してはもともと、シンガポールにアジア統括の組織が存在していました。ロジスティクスは新しく注目されているアセットクラスのため、これまではアジア本部的な組織がなかったんですが、新たに立ち上げて、他のアセットクラスと同じような組織体制が整いました。ロジスティクスがスターの資産になってきたと言えるのではないでしょうか」

――最近は医薬品やコールドチェーンなど専門性が高い物流施設のニーズが高まっています。そうした案件でも対応可能ですか。
「ロジスティクスに関する知識、ノウハウは汎用性が高いと思っています。現状でも比較的多様な業種にコンサルティングさせていただいていますし、十分対応は可能です」

――御社は今年4月に福岡オフィスを支社に昇格させました。物流施設の観点でも今後九州での対応を強化するのでしょうか。
「まず、ロジスティクスに限らないのですが、福岡の拠点はこれまで人員が非常に限られていたので、4月にオフィスを拡大し、人員も増やしていくことにしました。福岡をはじめ九州のマーケットの成長力を見込んでの決定です。その項目の1つがロジスティクスになります」

――物流施設は九州でも伸びていくとみていますか。
「九州はここ1、2年くらいで開発案件が増えてきており、今後ますます広がっていくと感じています。リサーチ部門もカバーしていく必要があるでしょう。成長ストーリーもたくさんありますし、投資家にとっても投資しやすいマーケットになっているのではないでしょうか」

後編に続く)

(本文・藤原秀行、写真・中島祐)

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