飲酒運転阻止、新技術開発が急務・「白ナンバー」対策強化も

飲酒運転阻止、新技術開発が急務・「白ナンバー」対策強化も

千葉・八街のトラック事故、ドライバーから基準値超えるアルコール検知

千葉県八街市で6月28日、トラックが集団下校中の小学生の列に突っ込み、2人が亡くなるという痛ましい事故が起きた。何の罪もない未来ある子供の命を奪うという、大人が最もやってはいけないことが繰り返されてしまった。

トラックを運転していた60歳の男の呼気からはアルコールが検出された。主要メディアの報道では、男は警察の調べに対し、事故当日の昼食時に飲酒したと供述しているという。現状では事故に至った詳細な経緯は明らかになっておらず、飲酒した量なども確認されていないが、アルコール検出量が基準値を上回っているだけに、飲酒が事故に全く影響を及ぼさなかったとは考えにくい。

人間が運転する限り、交通事故を完全になくすのは極めて困難だが、飲酒運転の根絶はそれよりは容易なはずだけに、運送業界など関係者があらためて対策を講じることが急務となっている。

19年にはトラックで48件の飲酒運転事故

政府が今年3月、運送業界などと連携して取りまとめた「事業用自動車総合安全プラン2025」は、トラックやバス、タクシーなど事業用自動車の飲酒運転ゼロを目標に掲げ、啓発活動の強化などを進めている。同プランは事業用自動車の飲酒運転による交通事故は2008年の99件から12年の46件まで減少したものの、その後は横ばいが続き、19年には56件に達したことを報告。このうちトラックが8割強の48件を占めているという。

荷物の運搬自体を事業として営んでいる「緑ナンバー」トラックのドライバーに対しては、法律で運転前の点呼時にアルコール検査を義務化しており、事業所へのアルコール検知器設置も義務付けられている。しかし、同プランは「点呼前に飲酒していたにも関わらず点呼時に適切なアルコールチェックが行われなかった事例や、点呼後の乗務中に飲酒に及ぶ事例が確認されており、確実に飲酒運転を防止する対策を実施する必要がある」と危機感を表明。法規制の実効性を最大限高めることの難しさを浮き彫りにしている。

事故を起こしたトラックは、緑ナンバーではなく、自家用車両の扱いの「白ナンバー」で、アルコール検査の義務対象外。法律で白ナンバーの車を5台以上所有する事業所には安全運転管理者を配置するよう定めているが、主要メディアの報道で、事故を起こした男が勤めている運送会社の親会社社長は、アルコール検査を実施していなかったことを明らかにしている。男が供述した通りに昼食時に飲酒していたのであれば、会社側の目が届かないだけに関与が難しくなるが、それでも安全運転管理者を中心に普段から飲酒運転防止の意識を社内でどのように醸成しようと取り組んでいたのか、大いに疑問が残る。

事業者やドライバーの自助努力だけでは限界があることが露呈した今、白ナンバーに対するアルコール検査の規制強化を検討すべき時に来ている。昼食時にドライバーへアルコールを提供した飲食店の責任も厳しく問わなければならない。

また、先進技術を活用して飲酒運転を撲滅することにも、さらに本腰を入れるべきだろう。東海電子が今年2月発表したところによると、同社が取り扱っている、アルコールチェックをしないとエンジンを始動できない車載型飲酒運転防止システム「呼気吹き込み式アルコール・インターロック」は20年までの出荷実績が累計で約2700台に達した。そのほとんどがトラック向けだ。

しかし、アルコール検知器使用が義務化となった11年には年間486台と伸びたものの、17~20年は毎年、200台以下が続くなど「トラック業界での飲酒運転の下げ止まり・増加傾向とは逆に、やや低調な推移になっている」(同社)という。こうした技術をより積極的に活用していくことが運輸業界には求められている。

トラックドライバーの過酷な労働条件などを取材し続けているフリーライターの橋本愛喜氏は、かつて自身も白ナンバーのトラックドライバーだった経験から「今後は緑ナンバーも白ナンバーも、トラックも乗用車もアルコールチェックを搭載したクルマの導入や法整備が必要だと強く思う」と指摘。「いっしょくたに『トラックドライバー=飲酒している』というイメージが付くことで、彼らの社会的地位が下がらないことを祈る」と語り、日々真剣に飲酒運転防止へ取り組む緑ナンバートラックのドライバーを慮っている。

(藤原秀行)

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