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【独自取材】不動産協会の物流施設政策要望、防災性能向上・自動化促進へ内容深化

【独自取材】不動産協会の物流施設政策要望、防災性能向上・自動化促進へ内容深化

大型ひさし設置の規制緩和など新規に盛り込む

主要な不動産会社や金融機関、大手商社など150社超が参加している業界団体の不動産協会は7月19日の理事会で、2021年度の政策要望を決定した。

この中で物流施設に関しては、新型コロナウイルスの感染拡大によるインターネット通販の利用拡大や自然災害の続発などに伴い、社会における物流施設の存在価値が高まっているのを踏まえ、防災性能の向上や省人化、老朽化した施設の更新促進、安全・安心確保などを後押しするよう要請している。先進的な機能を備えた物流施設の開発・運営をより円滑に行えるようにし、社会からの要請に応えるのが狙いだ。

物流施設に関する政策要望は、主要なデベロッパー21社が参加している「物流事業委員会」が中心になって取りまとめている。同委員会は18年の設立から3年が経過する中、先進的な物流施設の持つ存在感が年々高まっているのを受け、物流が社会でより重要な役割を果たせるようにするため要望を一層深化させたことが際立った内容となっている。今後、国土交通省など関係省庁や団体と調整を進め、要望の実現を目指す。

免震倉庫の手続き簡素化も

同委員会は政策要望の基礎となる考え方として、目指すべき物流施設像を明示。「強い物流・新しい物流を支える物流施設」「人と環境に配慮し安心・安全を軸とした物流施設」「地域貢献に配慮した物流施設」の3点を打ち出している。

その達成に向け、政策要望の方向性は防災性の向上、老朽化施設の機能更新、省人化・自動化やIoTへの対応、環境や従業員への配慮、社会貢献度向上などを列挙。加えて、21年度は政府が6月に閣議決定した新たな総合物流施策大綱が「強靭で持続可能な物流ネットワークの構築(強くてしなやかな物流)」をテーマの1つに設定していることも反映させている。

政策要望では、「強い物流・新しい物流を支える物流施設」を整備するため、昨年と同じく免震倉庫普及への支援措置を盛り込んだ。18年の大阪府北部地震で免震構造を採用した物流施設は大きな被害を免れるなど、災害時でも物流ネットワークを維持する上で免震装置が重要な役割を果たしていることを注視している。

同時に、免震倉庫の大臣認定手続きの審査期間が煩雑化・長期化する傾向にあるため、手続き自体の簡素化や審査期間の縮減などを図ることを新たに要請している。

防災性向上や省人化への対応としては、倉庫内の作業効率化(機械化・自動化など)に対する既存支援制度の拡充と新制度創設を明記した。現行の支援制度は配送段階における効率化も重視しており、必ずしも物流事業を手掛けているわけではない物流施設の所有者としてはどうしても使いにくい側面があることを考慮した。

同時に、災害時でも機能を止めないようにするため、電気室などの水害対策を促すインセンティブを導入することを提唱していく方向だ。このほか、非常用自家発電設備の導入に対する支援の拡充、ロボットなどの自動化設備や冷凍・冷蔵庫のニーズが高まっているのに伴う特別高圧電流受電手続きの合理化・期間短縮も求めていくことを念頭に置いている。

他には、湾岸部における国際競争流通業務拠点整備事業の適用要件緩和と容積率割り増しを盛り込んでいる。同事業は13年度に創設。民間事業者による物流拠点の整備・再整備支援が狙いだが、湾岸部に多く集まっている老朽化設備の更新が思うように進んでいない実態を考慮した。

防災拠点化のインセンティブ設定を

「人と環境に配慮し安心・安全を軸とした物流施設」を開発していくための要望としては、新たに太陽光発電設備や蓄電池などの導入時補助制度の拡充を打ち出した。災害で被害を受けても早急に復旧できるようにし、物流の寸断を回避する狙いも込めている。

さらに、要望で列挙している項目の中でも特に目を引くのが、荷さばき用のひさし(大型ひさし)設置の規制緩和だ。最近の物流施設では雨天など悪天候時でも荷物の積み下ろしを行えるよう大きなひさしを取り付ける例が増えている。

不動産協会は平常時でもトラックドライバーや庫内作業スタッフの負荷軽減につながるほか、「災害が起きた場合は庫内で荷崩れが発生していても、支援物資をとりあえずひさしの下に仮置きして仕分けできるため、避難所などへ迅速に供給することが可能」と効果を指摘する。

ただ、現行の建築基準法によれば、ひさしは先端から1メートルまでの部分以外は建築面積に参入されるため、大きなひさしを取り付けるのに慎重にならざるを得ない。政策要望は建蔽率や容積率で規制を緩和することで大規模なひさしを設けやすくするようにしたいとの思いがある。

「地域貢献に配慮した物流施設」を造るための要望は、災害時協定などを締結した物流施設を対象に、避難スペースを容積率に算入しないルールの新設を求めている。現状では水害が起こった際、帰宅困難者や避難者の受け入れに関する協定を地方自治体などと結んだ物流施設に対し、付加的に必要となるスペース整備などの費用を国と地方自治体が補助する制度があるが、より防災拠点として物流施設を使っていくためのインセンティブを強く設けることを求めていく方針だ。

(藤原秀行)

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