「ゆうパケット」の配送協力、クール便でも連携
日本郵便と佐川急便は9月10日、宅配事業などで協業すると発表した。
今年11月以降、日本郵便の小型宅配「ゆうパケット」を使ったサービスを佐川が担うほか、日本郵便が手掛けている国際郵便「EMS」を利用したサービスも今年10月以降に佐川が取り扱いを始める予定。
ゆうパックの保冷品配送サービスの一部を、佐川の飛脚クール宅配便で扱うことも2022年1月以降に着手する計画。両社は併せて、宅配便の共同配送や幹線輸送の共同運行などの連携も検討する。
両社はこれまでにも宅配分野などで協力してきたが、配送現場の人手不足や新型コロナウイルスの感染拡大に伴うeコマースの利用増などを受け、関係をより強めることにした。法人向けクール便の需要を掘り起こしたい日本郵便と、新型コロナウイルスの感染拡大で利用が増えているeコマース向け小型宅配便の対応を強化したい佐川の思惑が一致した。
両社は今後、実務者レベルによるワーキングチームを立ち上げ、顧客の利便性向上につながる新サービス開発や物流インフラの構築などを協議していく予定。
各領域の協業のイメージ(両社発表資料より引用)
東京都内で同日記者会見した日本郵便の衣川和秀社長は「物流は無くてはならない社会インフラだが、担い手も減少傾向にある中、物流網の維持が課題。佐川急便と国民生活に必要不可欠な宅配サービスを守るため、競争分野を残しつつ補完し合い、物流の安定維持を図りたい。リソースをシェアすることで物流業界全体の発展に向けた取り組みも検討したい」と協業の狙いを説明した。
佐川急便の本村正秀社長は「両社にとって協業がさまざまな効果をもたらすものと期待している。日本郵便さんがお持ちの全国2万超の郵便局配送網と当社グループの10万人の人員リソースを補完し合い、さまざまな課題解決を図っていく」と意欲を見せた。
衣川社長は、宅配便の共同配送などを具体化する時期のめどについて、まず柱となるゆうパケットなど3領域の連携が確実に進展した後になるとの見通しを示した。資本提携の可能性については「今は全く何も考えていない」と明確に否定した。
本村社長は、残る宅配大手のヤマト運輸との関係について問われたのに対し「この協業は排他性がない。一部地域ではヤマトさんと協業し、場所によって共同配送もやっている。さまざまな企業の皆様と機会があれば(協業を)前向きに検討させていただきたい」と語り、ヤマトなど他の大手物流企業が協業に加わる可能性に含みを持たせた。
会見後の撮影に応じる(左から)佐川・本村社長、日本郵便・衣川社長(オンライン会見の画面をキャプチャー)
(藤原秀行)