【残念ですが最終回!】ウィズコロナ”時代を生き抜く!「強い物流企業のつくり方」第6回

【残念ですが最終回!】ウィズコロナ”時代を生き抜く!「強い物流企業のつくり方」第6回

業務フローの見直し

タナベ経営 土井大輔 物流経営研究会チームリーダー

新型コロナウイルスの感染拡大は、密集回避へ省人化や非接触化が不可欠な“ウィズコロナ”の世界を物流業界にもたらしました。これまでの常識が通用しない新たな潮流にどう対応していくのか、早急に方針を決め、行動に移すことが不可欠になっています。

ロジビズ・オンラインは未曾有の難局を乗り越える強い物流企業に生まれ変わるための鍵を、タナベ経営の経験豊富なコンサルタント、土井大輔氏に伺ってきました。最終回となる第6回は、業務フローの見直しにまで踏み込む必要性を解説していただきます。これでいったん終わりとなるのが大変残念ですが、同氏のアツいエールをしかと受け止めてください!


土井大輔氏(タナベ経営提供)

これまでの5回のおさらいはコチラから!

“届けるだけでは付加価値を認めてもらえない”

今回で「”ウィズコロナ”時代を生き抜く!『強い物流企業のつくり方』」の最終回となる。新型コロナウイルス感染症拡大や自然災害の中でも物流業は止まらず動き続けている。しかし、物流業に対して「コロナ時の稼働インセンティブ」など支払われることはない。

物流業に携わる方々にあらためて誇りを持っていただきたいが、その半面、“届けるだけでは付加価値を認めてもらえない”と認識すべきであると申し上げたい。

最終回では「業務フローの見直し」について皆さんと共有したい。


(以下、図はいずれもタナベ経営提供)

業務フローの見直しの2大成果は「効率化・省人化」と「高付加価値業務への再配分」である。

効率化・省人化のためには、
1.“あたりまえ業務”の洗い出し
2.他拠点・部門を動画で視察してカイゼン提案を行う

高付加価値業務への再配分のためには、
1.現場ノウハウを活かした提案件数

――をそれぞれオススメする。

“あたりまえ業務”を洗い出す

現場には特に理由がないまま引き継がれている業務がたくさんある。「前からやっているから」「そう決まっているから」と理由も根拠もないのにただ繰り返されている業務は“無駄”である。しかし、スタッフは一生懸命取り組んでいる。

例えば「複写式伝票」である。プリンターが高価だった時代はコストメリットもあったが、今では複写式伝票のメリットを探す方が難しい。実際に、現場で質問しても“メリット”より“不便さ”の方が多く挙がる。悪しき習慣の代表的な事例である。

検品伝票(指示書)のフォーマットが見にくい、両手を同時に使えるようにする、作業工数を減らす(間違いを無くすためのストレスを含む)、距離を短くする、動作を楽にする(視認性、上下運動)など、全スタッフの声を洗い出して欲しい。「腰が痛い」「目が見えにくい」「間違えやすい」のはスタッフが悪いのではなく、手順・ツールを含めて環境整備に問題がある。

他拠点・部門を動画視察してカイゼン提案を行う

スタッフは自身の配属先に出社し勤務を終えれば帰宅するという繰り返しが多く、自社の他部門・他センターの業務内容を把握していない場合が多い。是非、拠点別に巡回する機会を持って欲しい。

Aセンターで工夫していることがBセンターでも参考になることも多く、BセンターのスタッフがCセンターを見た時の疑問点や改善案が参考になることも多くある。実際に現場を離れて他センターに訪問することは難しいだろうが、タブレットやスマートフォンを活用して撮影動画を共有することは可能である。

先日、商社K社のアソート現場を視察した際、以前の事務所で使っていたオフィスデスクをアソート台として利用していたのだが、高さが足りず、デスクの上に台を置いて作業していた。また、奥行きスペースが無駄であった。翌週には数万円の什器を購入したことで作業効率が上がり、雰囲気も変わった。

車輛、センター内、事務所、トイレ、休憩室の「3S(整理・整頓・清掃)」が徹底できている現場は総じて組織の規律性も高く、組織の雰囲気も明るい。取引先やスタッフの大切な人に“見せることができる環境”であるかどうかを再確認していただきたい。

現場ノウハウを活かした提案件数を目標に設定する

物流業は“受注型産業”であり、受注のタイミングと提案範囲によって後工程への負荷が変わる。

多くの物流企業はいわゆる「物流6大機能」で業績が成り立っている。実際の商取引は上記図の「戦闘レベル」である物流6大機能を受託することで問題ないが、どの段階で提案しているかが重要である。

荷主の製販連携のつなぎ目、仕入れ先とのつなぎ目の改善から提案する(図の「戦術レベル」)、さらにレベルが高いのは荷主の拠点展開や委託物流会社の選定など「戦略段階」から提案することである。

冒頭にお伝えしたが、単なる物流6大機能の提供はビジネス上では“あたりまえ”である。物流のプロとして、いかに荷主の部門間連携や仕入れ先・販売先との連携、トータル物流費の削減、在庫の適正化、固定資産の効率化につながる提案ができるかがノウハウの発揮のしどころである。

貴社において“獲得した情報内容”について目標の設定をしていただきたい。

ノウハウを生かして川上受注へシフトする

物流企業からの提案書には「対象となる拠点・センターからの出荷、輸配送フロー」になっている。

川上で受注するために足りないのは、以下3点の視点である。
・仕入、調達の「モノ」の流れ
・拠点間移動、横もちの「モノ」の流れ
・商流・情報の流れ

           

「全社視点で無駄な部分を改善することにつながる」、「現在、荷主もしくは他物流企業で行っている部分をアウトソーシングしてもらう」、「返品商品の保管、リサイクル業務を受ける」、「一括受注を狙う」といった背景や狙いがあるにもかかわらず、「部分フロー」「情報不足の丸腰状態」で何か仕事をいただけませんか?という営業活動を行っている場合が多い。

川上提案営業のための業務フローの改善には“荷主業界の研究”が有効である。既存荷主顧客に対して自社が請け負っていない部分も含め、調達~製造~販売までの流れを把握することや、荷主業界の特性についての勉強会の開催に時間配分をしてほしい。

近年では物流現場の自動化やロボット化を含めたDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進が取り上げられている。しかし「投資には原資が必要」であり、「できることをまだやっていない」物流企業は多い。物流の現場には属人化業務が多くあるが、これが現場の強みであり長年培われてきたノウハウである。当社も引き続き、ノウハウを消してしまう業務フローの見直しではなく“生かすため”の業務フローの見直しを支援していきたい。

参考:

https://www.tanabekeiei.co.jp/t/consulting/tcb/productivityimp.html

◇タナベ経営「物流経営研究会」とは
タナベ経営では29のテーマで日本全国の「ファーストコールカンパニー(顧客から一番に選ばれるサステナブル企業)」の先進事例、成功事例を研究。ゲスト企業による実践型講義・現場視察から成功談・失敗談を踏まえた現場の“リアルなポイント”を学べるよう努めている。同じ志を持つ多種多様な参加企業・参加者との情報交換も可能な場として運営しており、「物流経営研究会」の参加企業は約40%が物流関連企業、約60%が荷主側企業である。これまでにDHLサプライチェーン、丸和運輸機関、ハマキョウレックス、大塚倉庫、シーアール物流、BeingGroup(ビーインググループ)などの現場を視察し、情報交換会や自社プレゼンを行っている。次回は2021年10月28日(木)・29日(金)より全6回で開催を予定している。

物流経営研究会の概要はコチラから

(了)

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