物流関連のM&A成約件数、前年の1・25倍に拡大

物流関連のM&A成約件数、前年の1・25倍に拡大

「ビズリーチ・サクシード」利用動向、「2024年問題」対応目立つ

人材関連サービスのVisionalグループでM&A案件のマッチングサイト「ビズリーチ・サクシード」を運営するビジョナル・インキュベーションは10月7日、物流業界のM&A動向に関する調査結果を公表した。

2021年9月にビズリーチ・サクシードで公開された物流関連の企業譲渡案件数が前年同月比の1・8倍、新型コロナウイルスの感染拡大前の19年同月比では2・7倍に達した。

また、ビズリーチ・サクシードの累計譲り受け企業7900社のうち、物流関連のM&Aを希望する企業は664社(全体の8.4%、前年同月比1・3倍、19年同月比1・7倍)に上った。同社は「物流業界のM&Aニーズが高いことがうかがえる」と指摘している。

ビズリーチ・サクシードの物流関連の成約件数(21年1~9月)は、前年同期比1・25倍、19年同期比2・5倍に増加。初めての緊急事態宣言が発令された20年4月の直後は様子見をした企業もあり、20年4~7月は物流関連の成約はなかったものの、同年8月からはコンスタントに成約案件が出ているという。

ビズリーチ・サクシードを利用する物流関連の譲渡企業の動向を見ると、24年からトラックドライバーの時間外労働規制が強化される「物流の2024年問題」への対応の必要性を懸念し、M&Aを検討する譲渡企業オーナーが多く見られるという。

同社は「ドライバーの労務管理をしながら売上高・収益を出し続けられるだろうか」「ドライバーを確保し続けられるだろうか」といった不安を抱く譲渡オーナーが先行きを懸念し、ビズリーチ・サクシードを利用するケースが多いと推察。コロナ禍の影響を受けた業績不振の企業だけでなく、業績が良好な企業からの問い合わせも多く、「2024年問題」を考える中で、事業継続に限界を感じた後継者不在の高齢オーナーの利用も目立っているとみている。


※ビジョナル・インキュベーション プレスリリースより引用

ビズリーチ・サクシードで物流関連のM&Aを希望する譲り受け企業の動向を見ると、物流業界全体でドライバーの確保が難しくなる中、ドライバー確保を目的とした企業が、M&A後に従業員の引き継ぎを必須条件とするケースが多いと解説。「2024年問題」への対応策として、現在保有していない拠点を新たに持ちたいというニーズがよく見られると分析している。

また、中長距離輸送のニーズが高く、10トントラックを有する譲渡案件を求めることが多く、年商5億~10億円前後や年商10億円以上の譲り受け企業が事業を拡大したいというケースも頻繁に見受けられると説明している。

ビジョナル・インキュベーションの前田洋平ビズリーチ・サクシード事業部長は「今後物流関連の譲渡案件・譲り受け企業はともに、さらに増加し、物流業界の事業再編は進んでいくと予想している。『2024年問題』の期限が迫る中、その対応策として、また、後継者未定の企業の高齢化が重なり、譲渡を検討する企業がさらに増加するとみている」とコメントしている。

(藤原秀行)

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