【独自取材】OKIが開発中のAIルート配送最適化アルゴリズム、納品先の時間指定や業務負荷均等化にも対応へ

【独自取材】OKIが開発中のAIルート配送最適化アルゴリズム、納品先の時間指定や業務負荷均等化にも対応へ

11月から実際の業務で試験的に運用、22年度にもサービス提供開始目指す

沖電気工業(OKI)は、実用化に向けて開発に取り組んでいるAIを活用したルート配送計画最適化アルゴリズムに関し、運送事業者のニーズが多いと見込まれる店舗側の納品時間指定への対応やドライバーの業務負荷均等化、高速道路使用の考慮にも対応できるようにする方針だ。

アルゴリズムは複雑な条件を考慮しつつ、その日取り扱う業務なども加味しながら各車両の総移動距離が最も短くなるようルートを計算。運送事業者の燃料費を抑えるとともに、配送時のCO2排出量削減にもつなげることを目指している。

OKIは11月から実際に運送事業者の配送業務に投入してアルゴリズムを試験的に運用しデータを収集、効果と課題を検証した上で改良を進め、2022年度にもサービスとして提供を開始したい考えだ。情報システム会社と連携し、TMS(配車管理システム)にアルゴリズムを組み入れ、OEM(相手先ブランドによる提供)の形態とすることも視野に入れている。

荷主への燃料費下げ提案も後押し

OKIは18年、全社を挙げて顧客にイノベーションを積極的に提案し社会課題解決を図るプロジェクト「Yume Pro(夢プロ)」を本格的に始動させた。その具体的な方向性を示したイノベーション戦略は注力する対象として物流や製造、金融・流通、ヘルスケア、防災など9分野を設定。物流に関しては「事務作業効率化による増益」、その次に「効率的なサプライチェーン構築」、30年までに「AI間連携サービス」を段階的に進める方向性を打ち出している。

ルート配送計画最適化アルゴリズムの確立もその戦略の一環と位置付けている。OKIはこれまでにも、現実の問題を数式でモデル化し、最適な解を導き出す「数理最適化」の技術に注力。例えば、19年には膨大な計算を高速で行える量子コンピューターを使い、工場内の生産ラインなどのレイアウトを見直して従業員の動線を最適化する実験を行った。物流にも活用を図っており、その有力な領域の1つがルート配送となっている。

OKIのアルゴリズムは1拠点に1台で一括配送するケースから、複数車両で荷物を分割して配送するケースまで多様な配送パターンの条件を自動で分析しながら、走行距離・コストが最小となる最適解を算出することを想定している。

今年2月には関西を地盤とする運送事業者のロンコ・ジャパン(大阪市)の協力を得て、実際の小売店舗向け配送業務にアルゴリズムを活用し、ルート配送の計画立案を自動化する実証実験を行った。対象とした配送業務はロンコ・ジャパンが車両13台で50カ所の納品先をカバーしている。

4日間の運行データを踏まえて分析したところ、全車両の総走行距離を1日当たり300キロメートル短縮した効果を確認。従来の走行実績から約8%減らせた計算だ。年間で削減できる燃料代は360万円、CO2排出量は440キログラムを見込んでいる。中堅・中小の運送事業者にとっては決して小さくはない効果を得ることができた。

11月以降は、2月の際と同じくロンコ・ジャパンの車両13台、納品先50カ所の条件でアルゴリズムを運用、半年程度継続する計画だ。その際、新たに納品先が時間を指定している場合を考慮した上で、やはり走行距離・コストが最小となる配送計画を編み出せるかどうかを確認する予定。

併せて、ルート配送の際、特定の車両だけにカバーする納品先が集中するなど業務量に偏りが生じないよう考慮したり、高速道路を使う必要がある遠隔地への配送が含まれている場合は、高速料金も加味した上で一番コストが低くなる配送計画を組めるようにしたりする機能も備える。

OKIイノベーション推進部イノベーション推進センターの川口勝也課長代理は「新たに加える3機能はルート配送最適化を進める上でぜひ欲しいとの声を運送事業者などの方からいただいており、アルゴリズムで対応していきたい。運送事業者の方々にとっては、現下のドライバー不足や燃料費高騰の折、アルゴリズムを駆使して荷主企業に効率的な配送やコスト抑制を提案できれば、運送事業の競争力を非常に強くできるメリットがある」と説明している。サービス提供開始の際は、前述の3機能を組み入れたい考えだ。

(藤原秀行)

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