セイノーHDとエアロネクストなど、物流の人手不足カバー目指す
セイノーホールディングス(HD)とエアロネクストは11月17日、北海道上士幌町で、日本で初めてドローンなどを使い、牛の乳房炎の検体(乳汁)を輸送するのに成功したと発表した。
両社が経済産業省北海道経済産業局、同町のイノベーションチャレンジ実行委員会、ノベルズと連携。今年10月に実証実験を行った。ドローン配送と陸上配送を組み合わせた結果、安全性と品質維持のいずれも問題なく運べたという。
実証実験は経産省の「地域産業デジタル化支援事業」(実施機関は公益財団法人 北海道科学技術総合振興センター)を活用して展開した。
牛個体の検査業務を実施するバイオ企業にとって、酪農地帯への検体の配送は物流側の人手不足で年々難しくなってきているのが現状。例えば、運送会社に依頼した場合、60キロメートルの距離の運搬に2日程度を要することもあり、検体の品質が損なわれる恐れもあった。セイノーHDとエアロネクストはドローンを使うことで、こうした課題を解決したい考え。
実験では、試験管に入れた牛検体(乳汁)48本を、機体が傾いても荷物は水平を維持できる技術「4D GRAVITY」を備えたエアロネクスト独自の最新物流専用ドローンに搭載。点在する農場からドローンで検体を集め、トラックで検査機関で運ぶとの想定で、ノベルズの上士幌本社敷地内で20分間(約3キロメートル)の飛行を2回行った後、検体をセイノーHDのトラックに積み替え、ノベルズ研究所帯広センターまで配送。翌日に同研究所で検体の検査を実施した。
両社はドローンも組み入れ、地方エリアで持続可能な物流ネットワークを構築する「SkyHub(スカイハブ)」を全国で提供できるよう準備を進めている。今後は実用化に向け、寒冷地の気候における実証なども視野に入れながら検討を重ねる予定。畜産以外の産業界へのドローン物流の応用・拡大も念頭に置いている。
今回運搬した48本の牛の乳房炎の検体(乳汁)
検体を箱詰め
配送スタッフがドローンスタッフへ箱を手渡し
ノベルズ上士幌本社敷地内をドローン飛行(いずれもセイノーHDとエアロネクスト提供)
(藤原秀行)