【現場取材】プロに見せたい物流拠点(特別編)ジュピターショップチャンネル

【現場取材】プロに見せたい物流拠点(特別編)ジュピターショップチャンネル

千葉の「南船橋物流センター」、最新自動倉庫など導入し“人のいるところに物が来る”オペレーション実現

テレビ通販大手のジュピターショップチャンネルは3月28日、千葉県船橋市で三井不動産が開発した大型物流施設「三井不動産ロジスティクスパーク(MFLP)船橋Ⅲ」内で4月6日に稼働させる新たな拠点「南船橋物流センター」を、ロジビズ・オンラインなど一部メディアに公開した。

同施設の6~8階の全部と5階の半分の計約10万平方メートルを利用。最新型の自動倉庫などマテハン設備を積極的に取り入れ、業務効率の向上と省力化を推進する。併せて、災害時でも業務をストップせず継続できる体制の確立を目指す。マテハン設備はダイフクのものを軸に採用している。

ピッキングの工程は従業員が広い庫内を歩き回るカートピッキングから、商品と出荷用ケースをそれぞれ担当スタッフの元に自動で運ぶことで動き回る動作を極力減らす定点ピッキングに移行。“人のいるところに物がやってくる倉庫”の実現を図っているのが大きな特色だ。


MFLP船橋Ⅲ(三井不動産提供)

超高密度の商品管理が可能

ジュピターショップチャンネルは1996年設立。ケーブルテレビ最大手のJCOMが50%、住友商事が45%、KDDIが5%をそれぞれ出資しており、ケーブルテレビや衛星放送などで生放送の番組を放映、商品をリアルタイムで紹介する「ショップチャンネル」を運営。2021年で25周年を迎えた。取り扱う商品はジュエリーやアパレル、コスメ、美容・健康、家電などがメーンだ。


ロゴマーク(ジュピターショップチャンネル提供)

現在、基幹センターと位置付けている千葉県習志野市の「茜浜物流センター」をはじめ東日本の5カ所に展開している拠点を高機能の新センター1カ所に集約。テレビ通販の取り扱いアイテム拡大や出荷数増大に対応するのが狙いだ。新センターの物流オペレーションはこれまでと同様、住友商事グループの住商グローバルロジスティクス(SGL)が手掛ける。

センターは6階を出荷エリア、7~8階を入荷・保管エリアと設定。5階は大型商品の保管スペースにそれぞれ充てている。

最も大きな売りの1つが、超高密度の商品管理が可能なダイフク製パレット自動倉庫「SRS-D3(ディースリー)」だ(編集部注・「D3」の「3」はDの右上に位置)。7~8階に導入しており、パレットを載せて庫内を縦横に移動するシャトルは、水平方向にそれぞれ縦横に移動する2種類が重なった「親子シャトル」を採用。一般的なパレット自動倉庫より同じ大きさの空間でもより多くの荷物を格納できるようにしているのがメリットだ。7階は2793棚、8階は4593棚を設けている。


「SRS-D3」

入荷エリアに届いた段ボールのケース入り商品をトラックから降ろしてパレットに載せ、STV(Sorting Transfer Vehicle)と呼ぶ自動台車が、フロア内をめぐるレールに沿って走行しSRS-D3まで搬送。親子パレットが引き継ぎ、所定の位置までパレットごと運んで収める。ジュピターショップチャンネルは入庫作業を大幅に省力化できると見込む。


入荷エリアからパレットでケースの商品を自動搬送


STVが運ぶ


親子パレットが庫内に格納

一方、6階の出荷エリアには売れ筋の商品をメーンに取り扱う一般的なクレーン式自動倉庫を2カ所配置。出荷エリアに隣接することで、よりスピーディーかつ一度にまとめて出荷できる仕組みを採用している。一方、7~8階は保管がメーンとなるエリアと位置付けている。

出荷に関しては、商品の特性に応じて、複数のオペレーションを設定している。まず、同社が放映している通販番組で紹介する日替わりの目玉商品「ショップスターバリュー」(SSV)に絞った注文が出荷オーダー全体の55%を占めていることを考慮し、SSVについては「単行スピードライン(SPD)」と称する方式を採用している。

これは大量に購入されたSSVの商品を各購入者向けにまとめて一気に梱包、出荷するのが狙いだ。そのため、6階の2カ所のクレーン式自動倉庫のうち、パレット積みの商品を保管する自動倉庫(741棚)から段ボールのケースごとSSVの商品をSPDに自動で搬送、そこでケースからサイズに合った出荷用段ボールに作業スタッフが流れ作業で入れていく。

出荷ラインに自動製函機や自動封函機、送り状などを貼り付けるオートラベラーを組み込むことで、全体の3割を占めている梱包作業を自動化・効率化し、1時間当たり1ラインで1200件の出荷処理が可能になると見積もっている。

一方、SSVだけではなく別の商品も合わせて買うなど、複数行にわたるオーダーについては「コンベヤGTP(Goods To Person)」と呼ぶ定点ピッキングを展開する。バケット(折り畳みコンテナ)に商品を入れて格納しているバケット自動倉庫(5万7728棚)から出荷する商品の入ったバケットと、商品サイズに合った出荷用段ボールのケースがそれぞれ、コンベヤで作業スタッフの元に運ばれてくる。作業スタッフはバケットから商品を取り出し、随時、出荷用段ボールのケースに移し替えていく。カートを押して庫内を歩き回る作業を解消している。


GTPの作業エリア

GTPと聞くと、一般的には、商品の入った棚を自動搬送ロボット(AGV)が持ち上げ、ピッキング担当スタッフの元へ運んでくるとのイメージが強いが、ジュピターショップチャンネルは商品のアイテムが多岐にわたり、出荷のパターンも異なることなどを考慮し、定点ピッキングの方式を選んだと説明する。

このほか、SSVとは別に、上位35位にランクインしている売れ筋商品に絞り、複数の商品を自動で指示された出荷用段ボールのケースにそれぞれ正しく収めていくエリアも設けている。多様な商品群に対応したオペレーションの設計となっている。

出荷はコンベヤで運ばれた商品を方面別に仕分けするサーフィンソーターを取り入れている。仕分け能力は1時間当たり7000ケースに及ぶという。ソフトタッチのスライドシュー方式を採り入れ、商品のケースが痛むのを防いでいる。


出荷エリアのサーフィンソーター

ジュピターショップチャンネルの西郷行保執行役員物流本部長は、茜浜の物流センターは最寄り駅から距離があり、送迎バスを運行しているが、新センターは駅から徒歩圏にあることなどが従業員確保の上で強みになると期待。「免震構造を採用し、カフェテリアなどのアメニティー設備が充実しているのも物流施設を選ぶ上で非常に大きなポイントとなった。免震構造は自動倉庫導入とも親和性が高い」と説明。業務効率化に意欲を示している。


ウェブサイトに掲載する商品写真を撮影する「ささげ」作業のエリアをセンター内に併設


入荷商品の検品作業

(藤原秀行)

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