大和ハウスが60歳一律役職定年を廃止、副業中心の「越境キャリア支援制度」も導入

大和ハウスが60歳一律役職定年を廃止、副業中心の「越境キャリア支援制度」も導入

シニア社員活躍や新たなキャリア形成を促進

大和ハウス工業は3月31日、60歳で一律に設定している役職定年を4月1日に廃止すると発表した。

給与などの処遇を改善し、シニア社員がさらに働きやすくなる環境を整備。併せて、従業員の自律的なキャリア形成や成長、自己実現をサポートするため、副業を中心とした「越境キャリア支援制度」を導入する。

同社は2013年4月、65歳定年制をスタート。15年4月には65歳以降も現役として原則70歳まで働き続けられる「アクティブ・エイジング制度」を採用し、労働意欲があって一定の業績が認められるシニア社員は定年を超えて勤務を継続、活躍できるようにした。


(プレスリリースより引用)

ただ、現行制度は60歳で役職定年を適用するとともに、以降の給与・賞与は一定水準まで下がるなど、処遇が低下する設定になっているため、シニア社員のモチベーション低下や高度な専門性を持つ社員の流出が生じていた。

4月1日付で、年齢だけを理由とした60歳一律の役職定年や年収水準の下がる処遇体系を廃止し、60歳以降も役職任用や昇格の機会がある制度へ改定。豊富な経験・知識、高度な専門資格を持ったシニア社員の流出を抑止し、労働意欲の向上を図るとともに、転職市場でのキャリア採用における競争力強化にもつなげることを目指す。

主な変更点

現行制度 制度改定後
役職定年 60歳到達の年度末 年齢を理由とした一律役職定年を廃止
給与 シニア社員独自の賃金テーブルを適用 60歳までの水準と同等
賞与 60歳までの職員の2/3の支給率 60歳までの職員と同様の支給率
昇格・降格 なし 適用の対象
退職一時金 60歳到達の年度末に支給 65歳到達の年度末に支給

越境キャリア支援制度は、社内の経営資源に限定したキャリア制度だけではなく、社外のリソースも活用し、本業を継続しながら新たなチャレンジができる機会を提供。これまでは難しかった人脈の形成や自律的なキャリア形成、スキル・経験の獲得を支援することに主眼を置いている。

2022年度は会社が副業先を斡旋する「副業(公募型)」、従業員自らが副業先を見つけ、会社が許可をする「副業(申請型)」、現在の所属のまま他部門の業務やプロジェクトに携わる「社内副業」、大和ハウスグループ以外の他企業で自社以外の業務に携わる「出向」の4つの実務メニューを用意する。

利用に際しては勤続年数や直近の平均残業時間などの条件を満たす必要がある。また、就業時間外での副業と就業時間内に行う副業があり、それぞれ時間制限を設けている。

※以下、プレスリリースより引用(一部、編集部で修正)
●副業で想定されるケース
「副業(公募型)」
企業やNPOなどの副業先を会社が斡旋し、公募の上でマッチングを行う。
例)・技術職が大学・高校・専門学校で非常勤講師として授業を行う。
  ・会社が提携する自治体やNPOで、地域の社会課題の解決に取り組む。

「副業(申請型)」
本業のスキル向上・新たな人脈形成などを目的とし、個人事業主や業務委託など、他社から雇用されない形態で業務を行う(副収入を得ることを主目的とした副業は不可)。
例)・設計担当が設計事務所の業務委託の形態で、デザインに携わり腕を磨く。
  ・趣味のITスキルを活用して、業務委託の形でWebデザインを行う。

「社内副業」
現在の所属のまま、所定労働時間の一部を使い、他部署の業務やプロジェクトなどに携わる。
例)・住宅事業部の営業担当が団地再生事業「リブネスタウンプロジェクト」に参画する。
  ・流通店舗事業部の設計担当が建築事業部の設計にも従事し、通常担当できない建物を扱う。

また、研修型メニューとして「共育&共創活動」への参画も設ける。21年10月に開所した「大和ハウスグループ みらい価値共創センター」で行われている活動で、子ども・学生の学び支援や異業種の企業・団体との協働プロジェクトによって新たな知見の獲得、新規ビジネスの創出を目指す活動。

22年度以降は、スタートアップ企業への派遣や社内起業家育成といった実務プログラム、キャリア自律教育、サバティカル休暇などの導入も検討し、社内キャリアだけでは難しい「越境体験」「他流試合」の機会創出を支援することを念頭に置いている。

(藤原秀行)

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