【独自取材】米不動産サービス大手C&W、日本の物流施設投資を強化

【独自取材】米不動産サービス大手C&W、日本の物流施設投資を強化

データセンターも注力、産業系アセットの運用資産残高500億円規模目指す

 米不動産サービス大手クッシュマン・アンド・ウェイクフィールド(C&W)が日本の先進的物流施設への投資を強化している。リスクが小さく安定的な賃貸収益を期待できる「コア投資」の有望な対象と位置付け、日本法人が既存施設の購入や好立地での新規開発などを推進。2018年には堺市で大型の優良案件取得に成功した。

 以前から注力しているデータセンターとともに着実に投資実績を積み上げ、インダストリアル(産業系アセット)セクターの運用資産残高(AUM)を数年で500億円規模まで拡大させたい考えだ。

「物流施設は外せないアセット」と認識共有

 C&Wは1917年に米ニューヨークで創業、約100年の歴史を持つ。15年に同業の米DTZと経営統合し、シービーアールイー(CBRE)やジョーンズ ラング ラサール(JLL)と並ぶ世界有数の規模を持った総合不動産サービス事業者となった。中国などアジアでも積極的に事業を展開しており、17年のグローバル売上高は69億ドル(約7000億円)に上る。

 日本では2000年にオフィスを開設した。現在は▽不動産売買仲介などを担う「クッシュマン・アンド・ウェイクフィールド」▽投資顧問やアセットマネジメントを手掛ける「クッシュマン・アンド・ウェイクフィールド・アセットマネジメント(C&WAM)」▽建設事業を展開している「クッシュマン・アンド・ウェイクフィールド・コンストラクション」―の現地法人3社が連携。

 開発用地の選定や投資助言、ファンド組成、売買仲介、施設管理、リーシングなど多様なサービスをワンストップで提供できる体制を整えている。

 14年にはJリートにも参入。オフィスビルや住宅、商業施設を投資対象としている日本リート投資法人で、メーンスポンサーの双日に続き、サブスポンサーの一角にC&WAMが名前を連ね、アセット供給の役割を担っている。

 日本ではグローバルと同様、オフィスビルや住宅、商業施設がメーンの投資対象となってきた。C&WAMの田中義幸社長は近年eコマースの成長など社会環境が変化しているのを受け、伝統的なアセットに加え「日本だけではなくグローバルにおいてこれから伸びていく不動産分野は何かということを考えた時に、物流は外せないとの認識をグループで共有している」と解説。データセンターと物流施設に照準を合わせている。既存施設を改修して建物の価値をコア投資対象にまで高めていくことも進める見通しだ。

 世界約70カ国で400拠点を展開しているC&Wグループのネットワークを駆使し、海外の開発案件で成功した新たなテクノロジー活用のケーススタディーを日本に反映させることや、その逆に日本の成功事例を海外に水平展開していくことも視野に入れている。


取材に応じる田中社長

大型に固執せずコンパクトサイズも

 18年にはC&WAMが堺市で延べ床面積約10万8000平方メートルのマルチテナント型物流施設を取得、名称を「LF堺」に変更した。取得先や取得金額などの詳細は開示していないが、不動産業界関係者によると、伊藤忠商事が開発、16年に完成した「アイミッションズパーク堺」だ。


「LF堺」の全景(C&WAM提供)

 取得に併せ、C&WAMがLF堺を適正に管理・運営するアセットマネジメント業務も手掛けている。このほか、埼玉県の坂戸市や久喜市でもやはり物流施設のアセットマネジメント業務を受託した。多様な不動産サービスを包括的に提供できる強みを物流施設の分野でも発揮している。「LF」ブランドを継続して使うことも検討しているという。

 田中社長は「LF堺は日本におけるマイルストーン的な取引になった。これほどの良い機能を持った施設を取得できるのはレアなケースだとは思うが、今後も機会があればぜひトライしていきたい」と強調している。投資に際しては特定のエリアや建物規模に固執せず、あくまで個々の案件ごとに立地や機能、サイズなどが適正かどうかを精査、判断していくスタンスだ。

 国内の物流施設開発は18年に首都圏で新規供給量が過去最大を更新するなど、都市部でハイペースの開発が続いている。物流・不動産業界では供給過剰懸念が根強い。

 そうした潮流に対し、田中社長は「eコマースの需要拡大などに伴って物流の在り方が変わってきている中、新たな付加価値を提供できる施設についてはまだまだ拡大の余地はある。製造・加工と保管・出荷の両機能を備える施設のニーズが高まっていることなどを考えると、旧来型の倉庫と同じ尺度では計れないのではないか」との見解を示す。

 同時に、市場で今開発の中心となっているランプウェー付きの大規模なマルチ型施設だけに特化するのではなく、投資家らのニーズを把握した上でコンパクトなサイズのものも投資を手掛けていこうと意気込んでいる。物流施設需要の高まりを踏まえ、C&WAMでも担当者を増員するなど体制拡充を図っていく方向という。

 深刻な人手不足を受け、日本の物流業界で課題となっているロボット導入など省力化投資においてもサポートしていきたいと力を込める。田中社長は「インダストリアルのAUMは将来的には1500億円、2000億円といったところを見据えてやっていくことになるのではないか」と予測している。

(藤原秀行)

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