【現地取材】ニチレイロジ、「2024年問題」意識し短時間でより多くの荷物運べる新たな輸配送システムの稼働開始

【現地取材】ニチレイロジ、「2024年問題」意識し短時間でより多くの荷物運べる新たな輸配送システムの稼働開始

ドライバーを拠点の荷役から解放、持続可能な低温物流構築へ

ニチレイロジグループ本社は5月9日、トラックドライバー不足などの環境変化を踏まえ、持続可能な低温物流の構築に向け、荷台と運転席のあるヘッド(牽引車)を切り離せるトレーラーの機能を活用した新たな輸配送システム「SULS(サルス)」の稼働を始めると発表した。

2024年度にトラックドライバーの長時間労働規制が強化される「2024年問題」への対応を物流業界全体が迫られる中、傘下で輸配送を担うロジスティクス・ネットワークや協力パートナー会社とも連携して新システムを最大限活用し、ドライバーがより短時間で多くの荷物を運べる体制を構築することを目指す。

SULSは「S&U Logistics System」の頭文字から成る造語。Sは「Speedy(よりスピーディーに)」「Sustainable(持続可能な)」「Solution(課題解決)」、Uは「Utility(より効率良く)」「Usability(より使いやすく)」「User Experience(高い体験価値)」の意味をそれぞれ込めているという。

同社グループの拠点間輸送で拠点に到着した際、トレーラーの荷台部分をヘッドと切り離した上で、荷降ろしや荷積みは拠点の作業員が担当。ドライバーは荷役をせずヘッドを運転して、すぐに次の目的地に向かえるようにする。

現在は拠点間輸送の際、トレーラーは協力パートナー企業の車両を活用している。新システムはニチレイロジグループ自身がトレーラーの荷台部分を保有して、より柔軟にトレーラーを使えるようにする。中継拠点には常に荷物が積まれた状態の荷台を準備し、ドライバーはヘッドと連結させて速やかに出発できるようにする。

まず東京~名古屋~大阪間の拠点間輸送を対象にSULSを取り入れ、名古屋の中継地点で新たな輸配送方式を採用した上で、順次他の拠点にも広げていくことを想定。併せて、幹線輸送以外にも地域内の輸送などにSULSの仕組みを生かすことを視野に入れている。ニチレイロジグループはSULS専用としてトレーラーの荷台部分4台を新たに取得した。


SULSに投入するトレーラー

従来はパレット16枚積みの大型トラックの場合、拠点間輸送ではトラックドライバー1人で約48時間かけて2運行、計32パレット分の輸送を行ってきたが、SULSを順調に運営できた場合、24パレット積みのトレーラーで1人当たり約10時間の2運行、計48パレット分の輸送が可能と試算。トータルの運行時間を大幅に短縮しながら、より多くの荷物を運べるようになると見込んでいる。

ニチレイロジは新システムを実現することでドライバーが運転に集中できるメリットがあると強調。物流拠点にとってもトラックの運行スケジュールに縛られず自由なタイミングで積み降ろしなどの作業ができるようになると期待している。物流拠点での作業量自体は増えるとみられるが、オペレーションの効率化などでカバーする構えだ。

トレーラーに積む荷物は、顧客の商品とニチレイグループの商品を混載することを念頭に置いているが、顧客専用の輸送便として活用することなどにも対応する予定。

ニチレイロジは5月9日、川崎市のロジスティクス・ネットワーク東扇島物流センター内でSULSの出走式を実施した。ニチレイロジの梅澤一彦社長は「弊社グループの全国配送機能と物流センターの運用をさらに高度化・効率化し、社会やお客様が抱える課題に最適なソリューションを提供していくことで、お客様の低温物流のパートナーとしてかけがえのない存在になりたい」と抱負を述べた。

ロジスティクス・ネットワークの盛合洋行社長は「従来の中継輸送では出発前と到着側双方の都合に合った運行を日々、たくさんの路線で組むことはかなり無理があり、中継地点での合流時にタイミングが合わず片方の車両が待ちぼうけになってしまうといった無駄が発生するリスクもあった。このような課題の解消につながるのがSULSの仕組みの整備だと思う」と意義を強調した。


あいさつする梅澤社長


出発式に臨む(左から)ニチレイロジグループ本社・葛原雅人取締役執行役員、梅澤社長、ロジスティクス・ネットワーク・盛合社長

(藤原秀行)

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