梅澤社長、2024年問題対応へドライバーの荷役負荷減らす新輸配送システム展開に重ねて強い意欲
ニチレイロジグループ本社は5月16日、東京都内の本社で2021年度のメディア向け事業報告会を開催した。
梅澤一彦社長は、22~24年度を対象とする新たな中期経営計画を紹介。この中で、目指す姿を「食品低温物流事業者として圧倒的な存在感の獲得」と設定した上で、飛躍的成長に向けた基盤強化の3年間と位置付け、大都市の輸配送・保管ネットワーク強化、現場の自動化・省力化促進、欧州の投資シナジー効果最大化と中国・ASEAN(東南アジア諸国連合)の事業拡大などを推し進める意向を明らかにした。
具体策として、先日発表した、荷台部分を切り離せるトレーラーの特性を生かして中継輸送を推進、トラックドライバーを物流拠点の積み下ろし作業から解放する新たな輸配送システム「SULS(サルス)」を展開していく方針をあらためて表明。さらに、2023年4月にグループで低温輸送などを担うロジスティクス・ネットワークとニチレイ・ロジスティクス関東を統合し、輸配送から保管までサプライチェーン全体に関わるサービスを提供できる体制を構築する計画も明らかにした。
併せて、神戸市内で23年下半期に稼働させる予定の新拠点(設備能力約2万2000トン)を使い、グループのキョクレイが軸となり、西日本エリアで果汁・乳製品の取り扱いを拡充し、神奈川の既存物流拠点とも連携してキョクレイブランドを広く浸透させていくことに強い意欲を見せた。
経営目標は売上高を21年度実績の2245億円から最終の24年度は16%増の2600億円、営業利益を146億円から11%増の162億円までそれぞれ高めるシナリオを重ねて示した。
梅澤社長(ニチレイロジグループ本社提供)
庫内でタブレット端末活用拡大、デジタル化基盤整備完了へ
梅澤社長は、低温物流の基盤となる冷凍・冷蔵倉庫の整備について、多くを自社で開発してきた従来の方針を修正する意向を表明。「今後は主に大都市圏の、特にネットワークの根幹を成すようなアセットは自社投資で行こうと思っている。それ以外のエリアに関しては他社アセットも柔軟に活用し、売り上げ拡大に使っていきたい」と述べた。
新中計は海外事業のうち、欧州全体で冷凍・冷蔵倉庫の庫腹を約16万トン増強したり、低温物流企業などをM&Aしたりしてきた投資を総括し、事業の収益を最大化していくことに強い意欲を表明。
中国・ASEANでも、中国のコンビニ向け物流などの営業拡大と上海以外のエリアへの展開、タイの冷凍・冷蔵倉庫2期棟増設によるサービス拡充を通じた集荷量の拡大、マレーシアの保管・運送事業拡大などを推し進める計画を盛り込んだ。他の周辺アリアへの進出も視野に入れていくことを示した。
自動化・機械化などによる業務革新推進は、22~24年度中に、タブレット端末の導入と業務のペーパーレス化を既に展開している入荷系作業に加えて庫内のピッキングや出庫系作業にも広げていく方向を明示。作業のデジタル化の基盤構築を完了することを明示した。
ほかにも独自のプログラムに基づき、IT人財200人、DX人財50人を期間中に育成することを目指すとともに、前中計で延べ1年当たり31万時間のRPA(ロボット活用による業務効率化)を実現して目標をほぼ達成したことを踏まえ、捻出できた自由な時間やリソースを高度に利用していくことに移行する流れを描いた。冷凍・冷蔵倉庫で遠隔操作ロボットを使ってかご台車への荷物積み付けなどを自動化することにもチャレンジしていく方針をあらためて示した。
(藤原秀行)