「2社が組むことで本当に物流業界の未来が変わる」

「2社が組むことで本当に物流業界の未来が変わる」

セイノーHD&ラクスル合弁発表 共同記者会見詳報(後編)

セイノーホールディングス(HD)とラクスルは6月10日、運びたい荷物とトラックをマッチングするラクスルの「ハコベル事業」を分社化した上でセイノーHDが出資、共同運営すると発表した。

セイノーHDとラクスルの首脳が同日開催した記者会見の内容を掲載する。

「同じ方を向いていることが分かった」

【質疑応答】

――どのような経緯でJVに至ったのか。JVがこの時期になったのは、「2024年問題」を控えたことが1つの契機になったのか。

セイノーHD・田口義隆社長
「共通のいろんな勉強会で知見を得ていた。そして、松本さんのお人柄と考え方、これが大変高い視座にいらっしゃる。 自社のこととか、利益とかいうことよりも、いかに公に尽くすかというようなことを考えてらっしゃるというので、われわれも輸送立国というミッションを持っていることに、大変、この方ならば同じ方向性を向いているんだなということが勉強会で分かった。そして、いろんな活動をされており、当然露出も高くて、そこでも見聞きすることにブレがないなと。考え方に関してはそういうクローズな会でも見聞きして、そして多くのところでもぶれがないなと、私、個人的には一番それが近くなるタイミングだったなと、プロセスだなと思っている」

ラクスル・松本恭攝社長CEO(最高経営責任者)
「先ほど申し上げた通り、ハコベル、これまで設立をしてゼロから事業を立ち上げて、非常に良いテクノロジーができてきた、しっかりとお客様が付いて、事業としても単独で回る状態が作られてきた。ただ、このまま行ってしまうと、本当に物流業界の仕組みを変えることができるか。決算を本日発表したが、今のままだと日本の物流のインフラになっていくというところまで非常に長い時間かかるなと いうふうに考えるようになって、狭間(ハコベル本部長)とも話すようになってきた」

「その中でやはりハコベルのミッション、物流を再発明するラクスルのビジョン、仕組みを変えれば世界はもっと良くなる、われわれこのビジョンを実現するために事業を行ってきている。その中でじゃあビジョン、ミッションを実現するために最もこれまでわれわれが作ってきたテクノロジーを広げる良いアプローチは何かということを考えた時に、 自社単独で多くの会社に営業していく、もしくはパートナーシップを組んでいくのではなくて、より オープンプラットフォームとして運営をしていく、運営そのものも自社単独ではなくて、より日本の物流インフラの中心にいらっしゃる方と一緒に運営をすることによって広めていけるんじゃないかという考えに、長い間、考えて至った」

「その時、先ほど田口さんからもお話があったが、クローズの勉強会の中で田口さんのことをよく、いろいろ勉強させていただいて、本当に物流業界の未来、ビジョンを明確に持たれている方で、ハコベルを一緒に運営した時に、非常にネットワーク、物流オペレーション、営業が強いセイノーと、テクノロジー、未来に対するビジョンが強いハコベルの2つがくっつくことによって本当に物流業界の未来が変わるんじゃないかということを思った、というところが経緯になる。タイミングとしては、今すぐ突然湧いた話ではなくて、今申し上げた通り、ハコベルがどうすると物流業界を本当に変えることができるのか、こういったことをずっと考えていた中で、今回パートナーシップを組んでいくという結論に至った」

――リアルな物流ネットワークと、ハコベルと具滝的にどのようなシナジーが考えられるのか。例えばリアルな輸送力というところでいくと、いわゆるマッチングの母数が増えるとか考えられるが、具体的にイメージしている、すぐに出るシナジーは何か。

セイノーHD・田口社長
「オペレーション、アドミニストレーション(経営管理)を含めて、大きなところがある。空気を運ばないということがより効率良くできる。当社が中心になって同業他社に声をかけても、同業他社はそれはベンダーという立場になってしまうが、ニュートラルなハコベルさんが一番ベストなものですよと言ってマッチングをすると、私どもも、ジグソーパズルのピースとして使っていただける。そして他の方も、ちょうどそのピースの1個にならと言ってやっていただくので、ものすごく、本当にパブリックに、公に見てフェアな仕組みになる、というふうになるので、われわれだけが中心で、われわれは主人公で探すということよりも、より効率良く探すことができてくる」

「われわれは一生懸命、同業他社さんもみんな一生懸命やっていらっしゃるが、やはりその限界はある。ここがデジタルの方で、リアルじゃない、バーチャルな世界から来ていただくと、よりクリアにそれが進んでいく。それからアドミニストレーションについても、今お客様はいろんな紙を持ってらっしゃる。 当社の紙、ヤマトさんの紙、佐川さんの紙、それぞれがそれぞれに特化した紙を持ってらっしゃる。 本当に必要なんでしょうかと考えてみると、今もデジタルでやっていけば、全部一括でできるはず。 お客さんもわれわれが使っている紙、データを置く媒体を、ある時にはこの紙を差し込んで、またある時はこの紙を差し込んでと、ものすごく手間がかかってらっしゃるところがあるように見受ける。われわれもそれでご苦労かけている。そういうところも、アドミニストレーションに関してもクリアになってくるというふうに思っている。その大きなところが、オペレーションとアドミニストレーションは2つ、大きいところがあると思っている」

――ハコベルへの出資比率は。社長は誰が務めるのか。本社はどこに置くのか。

ラクスル・狭間健志執行役員ハコベル本部長
「両社の出資比率はセイノーHD様が50.1%、ラクスルが49.9%。本社に関しては現状と変わらず、東京都品川区目黒のオフィス。社長は私が就任する予定だ」

――ハコベルをラクスルから切り出し、時代に即した形にサービスを高めるということか。ラクスルから会社設立を提案したということだが、相手にセイノーHDを選んだ理由は。

ラクスル・松本CEO
「ご質問されたご認識の通りだ。よりハコベルを、日本社会の物流のインフラにしていくにはどうしたらよいか、こういった問いを持って、単独で運営をしていくのがいいのか、パートナーシップを組んで運営をしていくのがいいのか、この問いを経営として持ち続けた結果、パートナーシップ、セイノー様と一緒に運営をしていくところがベストであるとの結論に至った」

「全体に潜在している力を集結させて問題を解決」

――プラットフォームの標準化という話をしていたが、各社がプラットフォームの標準化をうたっている。物流事業者は既にいろんなところがプラットフォームを展開している。今回のプラットフォームを本当に日本の標準にしていく具体的な手段としてどのようなものが考えられるのか。

ラクスル・狭間本部長
「プラットフォームをしっかりと広げて業界の標準化していくために重要なことは大きく2つだと考えている。1つは仕組みそのものがよろしいこと、2つ目は多くのお客様に使っていただくことだと思う。1つ目に関しては、われわれがハコベルを始めてから6年半の中で、良い仕組みができてきた、それはプロダクトという意味だけではなくて、運用するオペレーションやカスタマーサクセスといったようなこちら側の体制も含めてできてきたと思っている。実際に導入いただいている企業、これはマッチングの方も、ソフトウェア、SaaSの方もだが、非常にコストダウンや業務の効率化が図れて、使っていただくと拠点の中で拡張していただく、工場間で拡張していただくというような、大きなお客様にとっての利益は出せていると思う」

「ただ一方で、2つ目の多くのお客様に使っていただくというところが次のチャレンジだというふうに思っている。そこはわれわれ、決して営業力が強い会社ではないし、業界の中でまだ知名度、ブランディングが高いわけでもないという中で、今回、セイノーHD様とJV(ジョイントベンチャー)を作らせていただいたのは、セイノーHD様が長年培ってこられた業界内でのブランディングや全国に持たれているネットワーク拠点、営業の組織体制まで含めた、これはわれわれには一朝一夕には決して作れないものなので、こういったものを通して、 拡充していきたいという思いで作っていく、というような次第だ」

セイノーHD・田口社長
「われわれの理解としては、今狭間氏からお話があったが、 いかにお客さんにとって使いやすいかということ。 実はご指摘のように、運送会社はそれぞれが自分の仕組みを使ってほしいということで、ずっと今までは帝国主義的にやっていた。しかし、それよりもお客様は、複数社使ってらっしゃるのが常。その度ごとに違う仕組みにアクセスしなくちゃいけない。お客さんから見ると、 結構ストレスがかかるはず。そこはもう、私どももお客様のピースの1つで全然大丈夫。私どもがメーンで使ってくださいと実は思っていない。お客様が便利だったら、そのピースの1個に入れていただければいいなということをお話して、そうするとレイヤー、階層が違うので、ハコベルさんならそれができるなっていうふうに思っている。今までまさしくご指摘の通り、ベンダー、キャリアとしてはみんな自分のものを使ってほしいとやっている。 そこをハコベルさんならば、きちんと上から一番使いやすいシステムをチョイスするという窓口になっていただけるんじゃないかなと思っている。 ご指摘の通りだと思う」

――新会社の資本金と従業員数、業務内容、売上高目標を教えてほしい。

ラクスル・狭間本部長
「従業員数は現在、ハコベル事業本部で50~60名在籍している。まず、いったんはこのハコベル事業本部が移行するという形で、 新会社として返したいというふうに思っている。売上目標につきましては、 数年で数百億円というところを目標にやっていきたいというふうに考えている。詳細の数字は、もちろん計画自体はあるが、非開示で、数年で業界の中でも、 プレゼンスがある領域まで成長していきたいというふうに思っている」
(編集部注:会見後、資本金は10億円と追加説明あり)

――今物流の中でもコストの面でいろいろと大きな課題があると思うが、どういった形で解決策を見出していくのか。プラットフォームを作る中でどういったところを目指していきたいのか、もう少し具体的に伺いたい。ドライバーの問題があると思うが、効率化重視のあまり、何か事件・事故が起こるリスクを勘案しないといけないものもあるのでは。

セイノーHD・田口社長
「 ムラと無駄があるということ。無駄というのは、今、高速道路を走っているトラックを半分に割ると、40%しか運んでいない。残る6割は空気を運んでいる。片道で走ったり、それで帰ってきたり、帰りが空っぽだったりと、無駄がある。そんな無駄をわれわれ1人1人がどこかに荷物がないですか、なんてことは聞けない。それはさっきのレイヤーの上のところが全体としてここにありますよってマッチングすれば、まだまだ日本の中のハードアセットは使えると思っている。それはイコール、2ついいことがあって、お客様に対するコストの圧縮にもなる。それからもう1つはCO2の排出減にもなる」

「だけどその無駄がデジタルによって、もっと(削減)できるというのが1つある。ムラはあって、実は皆さんご存知のように、荷物は大体夜発注が来て、夜にザーッと集まってくる。夕方17時頃から20時、21時まで集まってくる。それを一斉に出す、全国に。今度は到着店に朝着くと、それを昼までに大体配達してしまって、あと遊んでいる、空間が。そういう波がある業界。それが全てそうかというと、いろんな業種・業態の形で違う。 だけど、それをうまくマッチングできるかっていうと、ムラの情報も集まっていない。だから、仕組みをそこで変えていっていただければ、まだまだ日本には使える潜在的な、空間や効率化の可能性がある。 そこを掘り出すことができる」

「今のルールの中で無理をさせていくと問題が起こると思う。 ルールを変えてしまう、例えば1つの村に今まで5軒家があり、そこに5台走っていた。だけどその5軒の家がなくなって3軒になってしまった。そこに5台走らせるは必要ない、1台で走ればいい。全国に885、これから消えていく市町村があるって言われている。そういうところもシェアリングをして共同で運ぶように、今われわれの方でやらせていただいている、ドローンがそうだが、共同で運びましょうということをやると、どこの会社も実は無理しない。その拠点に持ってくれば後は配達してくれるので。今までは1時間かけて行って、1個降ろして、1時間で帰ってきた。5台が。それがもう1台だけなので、他の人は他の仕事に回っていく。 濃淡のしっかりした情報コントロールができるだろうと。 無駄がなくなると思います。今ご指摘のように、今までのままでやると無理が出る。しかし、仕組みを変えるとすれば余裕がある」

――セイノーHDとしても実際にハコベルのプラットフォームを導入していくとの理解でよいのか。他社のプラットフォームと比較したハコベルの強みは。

セイノーHD・田口社長
「今、縷々ご説明申し上げたが、ジグソーパズルの1つとして使っていただけるということ。1社だけではこの日本の課題、少子高齢化、超高齢化社会は解決できない。そして資本主義から新しく始まった新資本主義と言われているSDGsも解決できない。これを解決するには、先ほどからオープンパブリックプラットフォームっていうことでおっしゃっていただいたように、全体に潜在している力を集結させることだ。それによって解決ができると思っているので、われわれが、われわれのプラットフォームっていうイメージは全くない。われわれはピースの1つとして使っていただければ、日本の効率化、そして個社の効率化につながるというふうに思っている。これは同業の方々も同じだと思う。同業の方々もそれでここに入ってくれば効率化が図れるというふうに思っているので、自社、個社の利潤のためということよりも、業界にとって良いプラットフォームを作ってくれる、と思っている」

(藤原秀行)

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