CBREテナント企業意識調査(前編)
シービーアールイー(CBRE)は6月16日、物流施設のテナント企業を対象とした意識調査結果を公表した。前後編の2回に分けて、概要を紹介する。
今後3年間の拠点戦略を聞いたところ、利用する倉庫面積が拡大すると答えた企業が全体の7割を超え、「10%以上拡大する」の割合も昨年から上昇。拠点数や拠点当たりの面積も拡大しており、物流施設の拡張姿勢がさらに強くなっていることをうかがわせた。
CBREは「荷主企業の物流拠点拡大の意欲がここ最近高まっていると言えそうだ」と指摘した。
また、荷主企業が3PL事業者に物流業務をアウトソーシングするかどうか質問したのに対し、5割が現在よりも委託量が増えると予想。今後も3PL事業者の物流拠点拡張意欲を後押しする可能性があることを裏付けた。
ただ、調査はロシアのウクライナ侵攻直後の3月2~15日に実施したため、その後のエネルギー価格高騰など世界的な経済情勢の激変を反映しきれていない可能性がある。
調査は自社・賃貸を問わず、国内で物流施設を利用している企業を対象に実施、286社(物流企業193、荷主企業93)から回答を得た。
調査は、今後3年間の拠点戦略の具体策を尋ねたところ、倉庫の総面積について「拡大する」と答えた企業がトータルで75%に上り、2021年調査時の74%と同じ高水準を記録。特に「10%以上拡大」は41%で、21年の31%から10ポイント上昇した。
拠点当たりの面積も、拡大がトータルで52%で、21年の50%と同じく5割に到達。「10%以上拡大」は21年の20%から22年は25%へ上がった。拠点数も、拡大は21年の61%から22年は63%となった。
拠点数が減少すると答えた企業も7%(21年は10%)いたが、CBREによれば、回答した企業の多くが「倉庫の総面積は拡大」と答えている。CBREは「テナント企業の中期的な物流戦略は拠点数よりも総面積の拡大に重点を置いていると考えられる」と分析した。
(以下、いずれもCBRE資料より引用)
物流企業と荷主企業の動向を比べると、倉庫の総面積は「拡大する」が物流企業は82%(21年同じ)、荷主企業は63%(21年55%)で、物流企業の方がより意欲を示していることが分かった。拠点数も「拡大する」は物流企業が73%(21年69%)、荷主企業が44%(21年40%)で、物流企業の積極姿勢が目立った。
ただ、荷主企業は、倉庫の総面積について「10%以上拡大」が31%で、21年の17%から14ポイント伸びた。「減少」は21年の12%から3%へ大きく縮小しており、物流拠点の拡大意向自体は旺盛とみられる。
物流拠点計画を選択した理由を尋ねたところ(複数選択可)、「事業の拡大」が物流企業は78%、荷主企業も45%でともにトップ。ECの需要増などが企業の背中を押していることをうかがわせた。
続いて多かったのが「拠点の効率的な配置」で物流企業、荷主企業ともに35%が選択。CBREは「コスト増や(長時間労働への)規制強化などを背景に、テナント企業は効率的な物流網の構築には高い関心がある」との認識を示した。
その後は「建物・設備の老朽化、使いにくさ」(物流企業21%、荷主企業32%)、「保管料の積み増し」(16%、23%)、「新設備やシステムの導入・見直し」(19%、12%)などが続いた。サプライチェーンの混乱や部材不足を受け在庫を多めに持ったり、最新設備への需要が高まったりしていることを示唆しているようだ。
物流拠点の拡張手段としては(複数選択可)、「募集に出ている既存物件の賃借、今後の開発物件の賃借(マルチテナント型)」が物流企業は59%、荷主企業は54%といずれも過半を占めた。「BTS型の賃借(専用センター)」も34%、31%と需要が高く、CBREは「先進的物流施設を借りるニーズは引き続き高い」と推察した。
荷主企業に、今後3年間の3PLへのアウトソーシングの見通しを聞いたところ、「現在よりも増える」が50%で、21年の44%から拡大。「現在と変わらない」(39%、21年41%)、「現在よりも減る」(6%、21年12%)を大きく上回った。3PL事業者の事業拡大と拡張意欲が今後も高いまま推移する可能性があるとCBREは解説している。
(藤原秀行)