ラストワンマイルの脱炭素化支援
EV(電気自動車)の充電インフラ整備を手掛けるテラモーターズ(Terra Motors)は、物流業界のEV導入支援に注力する。
各社の営業拠点などにEV充電用設備「Terra Charge(テラチャージ)」を初期費用無料で導入、関連機器の一元管理も担う。テラモーターズはユーザーから電気料金とサービス料金を受け取る仕組み。
テラモーターズはこれまで、分譲マンションへのEV充電インフラ設備導入を展開。普及が広がっているため、新たなターゲットとして脱炭素化へEVの利用など対応を迫られている物流業界を支援していきたい考え。
テラモーターズ創業者の徳重徹会長は、日本のCO2排出量の約19%を運輸部門が占めていると指摘。「ラストワンマイルの領域でEVが使われて始めている。当社の技術とノウハウを物流業界の方に幅広く使っていただき、脱炭素の実現を後押ししていきたい」と述べ、今後1年間で物流企業の拠点など1000カ所にEV充電インフラ設備を導入していくことを目指す考えを示した。
充電インフラ設備のイメージ(テラモーターズ提供)
管理・メンテナンスも担当
テラモーターズは2010年発足。インドで三輪EVを製造・販売するなどグローバルでEV事業を手掛けている。日本国内はEVの充電インフラ設備事業に軸足を置いており、テラチャージは今年4月、本格的に同事業を始めた。
まず注力している分譲マンションはオーナーや管理組合の発注を受け、充電インフラ設備を敷地内に設置。充電設備は専用のスマートフォン用アプリを使って利用の予約や料金の決済などができる。設備の管理・メンテナンスもテラモーターズが担当することで、導入に当たってのハードルを下げられると見込む。
徳重会長は「分譲マンションでは一部のEV利用者のためにオーナーや管理組合が巨額の費用が必要な充電設備を導入するのは現実問題として非常に難しい。その部分の課題を当社が解決できるようにすることで、戸建て住宅だけでなくマンションにお住まいの方々でもEVを利用しやすくできると考えた」と説明する。
初期費用はEV関連の補助金で賄うことで、テラモーターズの持ち出し分を少なく抑えられるという。マンションにEV充電インフラ設備を配置することで、EVの受け皿を整備していくのが狙いだ。
物流施設に関しては、ラストワンマイル配送を対象と想定。まず充電インフラ設備100基を物流企業へ先着で無料提供する取り組みを始めた。
佐川急便やSBSホールディングスがラストワンマイル領域へのEV採用を新たに決めるなど、物流業界のEV活用が加速しようとしており、テラモーターズは同社の充電インフラ設備のニーズが確実に見込めると判断。将来のEV採用を見越し、物流拠点への充電インフラ設備導入を働き掛けていく構えだ。
徳重会長は「荷主が外資系企業の場合、温室効果ガス削減などに非常にこだわりが強く、物流企業にとってEV導入のプレッシャーが強まっている。当社はこれまで、一番困っておられる方のために問題解決できる技術を生み出すことを鉄則として取り組んできた。物流業界にもわれわれの技術はお役立ていただける」と語った。
物流拠点など1000カ所導入の目標に関しては「非常に大胆だと言われることもあるが、マンションのニーズを踏まえても、当社としては現実的な数字だと思っている」と強気の姿勢を示した。
(藤原秀行)