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【現地取材・動画】プロに見せたい物流拠点(特別編)アダストリア「茨城西物流センター」

【現地取材・動画】プロに見せたい物流拠点(特別編)アダストリア「茨城西物流センター」

ECの成長見越しAGV120台など先進機器導入、「庫内を歩き回らない」に強いこだわり

未曾有の人手不足をはじめ課題山積の物流業界でピンチをチャンスに変えようと、省力化や生産性向上などに果敢に取り組む物流施設を紹介するロジビズ・オンライン独自リポート。今回は、カジュアル衣料大手アダストリアが8月25日にロジビズ・オンラインを含むメディアへ公開した、茨城県茨城町に構えている「茨城西物流センター」に焦点を当てる。

同センターはこのほど、将来のEC成長持続を見越し、約15億円を投じて入出荷や在庫の機能強化に踏み出した。「“人”が主役の物流センター」をテーマに掲げ、EC商品の物流を担っているエリアを全面的に刷新。AGV(無人搬送ロボット)や先進マテハン設備の力を借り、スタッフの負荷は増やさずに処理能力を極大化する「歩かない物流センター」への転換を目指している。9月1日に本格稼働を開始する予定だ。


茨城西物流センター(アダストリア提供)

高回転商品を「GTP」ロボットに任せる

アダストリアは「グローバルワーク」や「ニコアンド」「ローリーズファーム」などグループ全体で30を超えるアパレルのブランドを持ち、国内外で約1400の店舗を展開。他にも生活雑貨や化粧品を取り扱うほか、飲食店も運営するなど、グループで多角化を進めている。

2007年には自社サイトでウェブ事業を開始。14年にECサイトを全面刷新して公式ウェブストア「.st(ドットエスティ)」のサービスをスタートした。22年2月期のドットエスティの売上高は311億円、会員数は1400万人を超え、成長が続いている。最近では、他社の食品などもドットエスティで取り扱いを開始、「自社ECの成長加速と楽しいコミュニティ化」「自社ECのオープン化」という独特の戦略を取っている。

アダストリアは全国に6カ所の物流センターを配置。このうち、茨城県茨城町の「茨城西物流センター」がECの物流を担っている。同センターは2011年竣工。当初の倉庫面積は約6000坪で、18年に約9000坪を増床しトータルで約1万5000坪に達している。店舗向けのBtoBエリアは倉庫すぺーすの約9000坪、EC向けは約6000坪を占めている。

各センターの庫内オペレーションは100%子会社で物流を担うアダストリア・ロジスティクスが担当しており、庫内では100~150人程度が働いている。

EC向け物流センターの刷新は、オークラ輸送機などの協力を得ながら、出荷業務の効率化とスタッフの作業負荷低減に重心を置いて進められた。商品を収めた棚を持ち上げ、入出荷作業エリアまで運ぶGTP(Goods to Person)形式のAGV120台とPOD(移動棚)1400台を採用。併せて、クイックシャトルストレージや自動仕分け機なども取り入れた。

EC向けセンターはトータルピッキングを行っている。AGVとPODを組み合わせたシステムはEC向け商品全体の出荷量の4割をカバーする計画だ。全ブランドの中で特に出荷が多いブランドを自動化・省力化の対象にする計画で、現在は「グローバルワーク」「ニコアンド」の商材を割り当てている。入庫した商品はフリーロケーションで保管エリアのPODに格納される。出荷のピッキング作業場所は14基、入庫作業場所は7基設け、AGVがPODを自動搬送してくる。


AGVとPODが並ぶエリア


HikVision製のAGVを入出荷エリアに投入

旧来は庫内を埋める平棚に商品をストックし、紙のリストを見てピッキングしていたため、広い庫内を従業員が歩き回っていた。AGVとPODを生かし、高回転商品のピッキング作業省力化を図ることで、“歩かないセンター”を実現しようと徹底してこだわっている。既に「歩く距離が大幅に減った」と歓迎する声が従業員から多く挙がっているという。

出荷量の残りの6割は、これまでと同じく平棚に格納しているが、従来と大きく異なり、エリアを9つのブロックに分割、従業員は各ブロックのいずれかを担当する方式に変更した。担当しているブロック内の商品ピッキングのみを手掛ければいいため、平棚のエリアでも同じく歩行距離が大きく短縮することが期待されている。さらに、ハンディターミナルで対象商品をピッキングするための最短エリアを紹介するようにしている。

平棚のみだったころは、1つの通路にピッキングしようとする従業員が集まるなど混雑が生じていたため、まずピッキングを済ませた後に商品を入庫していた。AGVとPODを取り入れることで、入荷と出荷の作業を同時平行でできるようになり、作業のスピードが高まっているという。


平棚エリア。ピッキングした商品はコンテナに収め、コンベアで立体ピッキングシステムまで運ばれる

AGV&PODのエリア、平棚のエリアの両方でピッキングした商品はいずれもコンテナに入れられ、コンベヤでいったん立体ピッキングシステム「クイックシャトル」に送られる。そこで40人分のオーダーの商品をひとまとめにして出庫、コンベヤで仕分け装置「PTIシステム」を配置した仕分けエリアまで届けられ、オーダー別に仕分けられていく。コンテナから取り出した商品をどのケースに入れるべきか、LEDライトを照射してケースを分かりやすく示すなど、ミスを最小限にとどめる工夫を凝らしている。


クイックシャトル


PTIシステム


LEDで商品を投入すべきケースを分かりやすく示してミスを防ぐ(アダストリア提供)

さらに新たな試みとして、WMS(倉庫管理システム)をバージョンアップし、商品データを基にして、1オーダーごとに適切な梱包の大きさを予測する仕組みを導入した。仕分けエリアから梱包エリアにコンテナが送られる際、それぞれのサイズ別のエリアに自動的に分類されていくため、より最適な梱包を可能にしている。他にも、製函機を採用し、送り状の自動投入も実現。多様なことにチャレンジしている。


想定される梱包のサイズごとに分けられて梱包エリアに送られる


梱包エリア


送り状を自動投入


出荷方面別に仕分け

自動化・省人化設備にとどまらず、センター内の従業員用休憩室も全面的に改装。ブランド店舗の内装デザインを手掛けているアダストリアの社内チームが空間のデザインを担当し、おしゃれで清潔感があり、居心地の良い場所にした。ファッション関連企業で働くことの喜びを味わってほしいとの思いが込められている。


リニューアルした明るい雰囲気の休憩室(アダストリア提供)

4割の省人化でスタッフを有効配置、付加価値高める

ECセンターの抜本的な機能強化により、1日当たりの出荷は平日で現状の1万9000件から1.8倍の3万4000件、土日で1万3000件から同じく1.8倍の2万3000件まで高められると見込む。

アダストリア・ロジスティクスの森泰憲国内物流管理部シニアマネジャーは、機械化で同センターは40%の省人化を目指す方針を表明。その上で「単に人を減らすのではなく、省人化できた部分から貴重な人材を商品撮影や梱包などに充て、グループのECの付加価値を上げられるようにしていきたい」と強調している。既に、東京・渋谷の本社内で実施してきた雑貨の置き撮りや採寸など「ささげ作業」の一部を同センターに移し、より現場で迅速に対応できるようにするなど、成果が表れ始めている。

アダストリアの林正武上席執行役員ロジスティクス本部長は「物流施設ではもはや当たり前かもしれないが、働かれている方々の声を基に、無料で利用できるWi-Fiも導入するなど、居心地の良い休憩室を実現した。人手不足などの状況を見ると、働きやすい環境の整備が非常に大事」と、従業員が働き続けられる物流センターの実現に腐心していく姿勢をアピールしている。

アダストリアのECは受注の翌日発送、最短で翌々日に配達が基本のリードタイムだが、これまでは繁忙期にはオーダーが殺到し、発送に2日ほど余分に掛かっていた。入出荷のスピードアップで、今後は繁忙期であっても基本のリードタイムを維持できるようになると見込む。ECの競争がますます激化する中、サービスのレベルアップにも余念がない。


庫内を動くソーター(アダストリア提供)

(藤原秀行)

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