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プロドライバーの健康起因事故防止へ具体策紹介

プロドライバーの健康起因事故防止へ具体策紹介

国交省セミナーで有識者や運送事業者が先進技術活用など事例発表

 国土交通省は2月6日、東京都内で「プロドライバーの健康管理・労務管理の向上による事故防止に関するセミナー」を開催した。

 有識者や運送会社トップらが出席。健康問題を起因とした事故を起こさないよう、運行管理と健康管理を一体的に実施することなどをアドバイス。具体策として、SAS(睡眠時無呼吸症候群)の検査を定期的に実施して疾病の早期発見に努めたり、GPS機能付きのデジタルタコグラフといった先端技術を活用して安全運行をサポートしたりしていることを紹介した。


約200人が集結したセミナー会場

 冒頭、大原記念労働科学研究所の酒井一博所長が基調講演を行い、政府と運送業界が連携して取り組んできた事故防止の取り組みの経緯などを紹介した。

 2016年3月に広島の山陽道トンネルで起こったトラックが原因の玉突き死傷事故の事例を報告。調査の結果、事故を起こしたドライバーは1カ月間に休日がわずか1日しかないなどずさんな運行管理が背景にあったとみられ、事故は起きて当然の状態だったとの見方を示し、適正な運行管理の重要性を強調した。

 宅配現場の疲弊をはじめドライバーの過重労働が社会的に注目されている今、政府の働き方改革などの施策が進んでおり、「意識が高まっている今が状況を改善するチャンスではないか」と指摘、関係者の奮起を促した。

 政府や運送業界が連携して事業用自動車の事故削減を図った結果、08年から10年間で死者数が3割、人身事故件数が4割、飲酒運転件数は6割減少したと評価。

 同時に「これだけ来年のオリンピック・パラリンピックに向けて莫大なお金を投資し、東京近郊でさまざまな整備が行われている中で、例えばドライバーの皆さんがトイレを探すのも大変だし、仮眠を取りたいと思ってもすぐに場所が見つからない」と語り、安全運行を支えるインフラの整備も必要との見解を明らかにした。

 喫緊の課題として、産業界の中でも群を抜いて多いドライバーの過労死を挙げ、全日本トラック協会で5年間(18~22年度)に脳・心臓疾患による過労死などの発症を20%削減するとの全体目標を掲げたことに言及。業界として残業時間削減や休日確保、定期健康診断の完全実施とフォローアップなど8項目の対策を進めていくことを解説した。

 その内容を踏まえ、睡眠時間については最低5時間以上、週2回以上は6時間より長く取るようにし、「細切れではなく一括で」「昼間ではなく夜に」「布団の上で」睡眠するようアドバイス。また、健康状態が悪くリスクの高いドライバーを定期健康診断などで早期に発見することの必要性を訴えた。

 健康状態を起因とする事故対策は、疾病の早期発見・早期治療という「2次予防」も重要だが、それより前の段階として労働条件や職場環境、生活習慣を改善する「1次予防」へより注力すべきだと提案。健康管理と運行管理を一体的に行うよう求めるとともに、デジタコなどの先進技術も駆使するようアピールした。

 同研究所も参加している民間の任意団体「安全運行サポーター協議会」で、体調などの情報を踏まえてドライバーが疲労を感じる度合いを予測する「体調予報」が間もなく実用化されると展望。働きやすい環境を整えることで若い人が魅力を感じる企業、業界へと生まれ変わるよう聴衆にも協力を呼び掛けた。


基調講演に臨む酒井所長

視野障害の早期発見へ政府に対応を要望

 続いて、東北大医学部眼科講師の国松志保氏が「視野障害と交通事故」について講演。緑内障など視野が狭くなる疾患を説明し、障害物を見つけるのが遅れるなど車の運転に影響を及ぼす可能性を説明した。

 こうした病域は「自覚症状がないために自身の病気に気付かず運転している可能性がある」と注意喚起。同時に、政府に対しても「早期発見のためには住民健診での眼底写真撮影が有用。早期治療により運転寿命が伸びることが期待される」と持論を展開、事故を1件でも多く減らすために早期の対策を求めた。

 運送業界からは東京空港交通の坂田顕久常務取締役が登場し、自社で展開しているバス乗務員の健康起因による事故防止策を発表した。14年から運転業務に就いている従業員を対象にSAS(睡眠時無呼吸症候群)のスクリーニング検査を実施。さらに17年には脳MRI(磁気共鳴画像装置)・MRA(血管撮影)も行い、脳腫瘍などの病気や異常の早期発見に努めていることを明らかにした。

 SASは検査で重度または中程度の睡眠障害が確認された従業員に治療の開始を求めるとともに、確定診断費用は一部会社負担し、治療を始めたことを運転以外の業務に異動させることの理由としない旨、労組の理解を得た点にも触れた。

 脳MRI・MRAに関しては、運転以外の業務を担当している従業員にも対応することや、検査機器の閉所が苦手な従業員にはオープン型装置を保有している医療機関での受診を紹介することなども準備していると語り、「早期に疾病を発見・予防することで安全に健康で長く仕事を続けられる」と効果を強調した。

「法定速度絶対順守」で結果的に無駄な時間を削減

 北海道コカ・コーラグループの幸楽輸送の不動直樹社長は、デジタコを活用した安全管理・労務管理の取り組みをプレゼンテーションした。クラウド型のデジタコを全てのトラクターに導入し、走行データをクラウドに蓄積。運転日報を自動作成したことでドライバーの安全意識が高まり、運転の質も向上したと成果をPRした。また、ドライバーを安全表彰する際は完璧・減点主義に陥らないよう設計したことにも触れた。

 デジタコのGPS機能を生かし、大雪時には危険な路上待機ではなく水やトイレの備えがあるパーキングエリアへの移動を早期に指示、ドライバーが最低限の食料などを確保できたことを実例として取り上げた。

 他にも、フォークリフトの後部にブルーのLEDライトを装備してバックする際には後方に注意喚起したり、バックの際には停止位置にセーフティーコーンを置いて接触の危険を回避したりする現場の安全確保策も説明した。

 働き方の見直しとしては、法定速度を順守させ、交通事故や車両トラブルを削減し結果的に無駄な時間を解消していることや、3日続けて有給休暇を取得できる制度を導入し、指定休日などを組み合わせれば1週間続けて休めるようにしたことなどを挙げた。広い北海道内でリレー(中継)輸送を積極的に手掛け、ドライバーの運転時間短縮を図っている現状も報告した。

 不動社長は「50年前から『法定速度を守る』ことを諸先輩から継承している。同業者からも『幸楽の車に付いていけば安心』『幸楽の車に付いていけるようになったら一人前』といった評価をいただいている」と述べた。

 ユニークな取り組みとして、プロのカメラマンに依頼して自社のドライバーを被写体としたカレンダーを作成、ドライバーに家族や地域社会のヒーローとして意識させていることも紹介した。

 最後に国交省自動車局安全政策課から、過労防止関連違反に関する行政処分を昨年に強化したことなどを解説。19年度の事故防止対策支援推進事業として、先進安全自動車(ASV)や過労運転防止のための機器などの導入に補助を行うことを説明した。

(藤原秀行)

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