全事業を国営研究所に譲渡決定、損失1000億円計上見通し
日産自動車は10月11日、ロシア市場から撤退すると発表した。
ロシア現地法人のNissan Manufacturing Russia LLC(NMGR)が担っているロシアの全事業を同国国営の自動車・エンジン中央科学研究所(NAMI)に譲渡することを決めた。日産がサンクトペテルブルクに構えている生産・研究開発施設と、モスクワに置いている販売・マーケティングセンターは、譲渡に伴い新名称で運営される予定。
日産はロシアのウクライナ侵攻を受け、3月からロシア市場で事業を停止していた。今後も市場環境は厳しく、継続するのは困難と判断した。ロシア市場からの撤退に伴い、一時的な損失として約1000億円を計上する見通し。
日産は2022年度の業績見通しに変更はないと説明。「引き続き精査を行った後、詳細については、あらためて今年度の第2四半期(7~9月)の決算発表時にお知らせする」と説明している。既に22年度の事業計画ではロシア事業が停止されていることを前提としている。
NMGRを引き継ぐ新組織の下で、ロシアの全従業員はNAMIにより12カ月間の雇用が保障されている。譲渡は数週間以内にロシア関係当局の承認を経て、正式に決まる予定。
ただ、今回の譲渡に際しては、日産がNMGRと同社の事業を買い戻せる権利が含まれており、今後6年間行使することが可能という。再進出の余地を残している。
日産の内田誠社長兼CEO(最高経営責任者)は「日産を代表して、長年にわたりビジネスに貢献してくれたロシアの仲間に感謝致します。ロシア市場で事業を続けることはできませんが、われわれの仲間を最大限支援できる解決策を見つけることができました」とコメントしている。
自動車大手ではトヨタ自動車も先にロシアでの生産事業停止を公表している。
(藤原秀行)