IMFが見通し改定、米国の利上げなどが影響
国際通貨基金(IMF)は10月11日、世界経済見通しを改定した。2022年の世界全体の経済成長率は物価変動の影響を除いた実質ベースで前年比3.2%と、今年7月の前回見通しを維持したが、23年については0.2ポイント引き下げ2.7%に修正した。
新型コロナウイルスのパンデミック(世界的流行)に加え、ロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー価格上昇や、米国などでインフレ抑制のため金融政策を引き締め、相次ぎ利上げに動いていることが影響。21年の6.0%から減速が鮮明になると見込む。23年の予想は今年1月時点で3.8%だったが、1年足らずで1ポイント以上引き下げられたことになる。
IMFは「世界金融危機と新型コロナのパンデミックが深刻だった一時期を除いて、2001年以降で最も弱い成長の推移となる」と指摘。世界経済の約3分の1を占める国で景気後退に陥る可能性があるとの見方を示し、「最悪の事態はこれからやって来る。多くの人にとって2023年はリセッション(景気後退)のように感じられるだろう。暗雲が立ちこめる中、政策当局者はしっかりとした手段を続ける必要がある」と強調した。
世界のインフレ率は21年の4.7%から22年には8.8%へ拡大した後、23年には6.5%、24年には4.1%に減速していくとみている。
主要な国・地域別に成長率予想を見ると、米国は22年が1.6%、23年が1.0%で、22年は前回予想から0.7ポイント引き下げ、23年は据え置いた。21年の5.7%から急ブレーキがかかる見通し。
ユーロ圏全体でも、21年の5.2%から22年は3.1%、23年は0.5%にとどまると分析。22年は0.5ポイント引き上げた一方、23年は0.7ポイント下方修正した。域内ではドイツが23年にマイナス0.3%、イタリアもマイナス0.2%など、景気失速を見込んでいる。
英国も21年の7.4%から22年は3.6%、23年は0.3%に急減速。日本は21年の1.7%から22年は1.7%、23年は1.6%と低成長が持続するシナリオを想定している。日本については23年予想を0.1ポイント引き下げた。
中国も21年の8.1%から22年は3.2%、23年は4.4%と高成長に陰りが見える。22年の予想を0.1ポイント、23年は0.2ポイント引き下げた。インドは21年の8.7%から22年は6.8%、23年は6.1%。22年のみ0.6ポイント予想を下方修正したが、比較的高成長が続く見込み。
ロシアはウクライナ侵攻に伴う各国からの経済制裁が響き、21年の4.7%から22年はマイナス3.4%、23年はマイナス2.3%と予測している。
(藤原秀行)