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物流施設の坪当たり建築費、半年間でさらに5万円上昇

物流施設の坪当たり建築費、半年間でさらに5万円上昇

JLLリポート、投資意欲は依然旺盛と指摘

JLL(ジョーンズ ラング ラサール)は10月25日、物流施設の建築費上昇に関するリポートを公表した。

前回取りまとめた同様のリポートでは、デベロッパーや投資家が想定した建築費は2022年前半ごろが坪当たり45万~50万円で、1年前からおおむね5万円上昇したと指摘していたことに言及。関係者へのヒアリング結果を基に、現時点では50万~55万円で、半年間でさらに5万円程度上がったとの見解を示した。

最近になって参入してきたデベロッパーや投資家が志向している、延床面積が2000~4000坪程度の中小規模の案件では坪当たり60万円という声も出ていると紹介した。

同時に、投資意欲は旺盛で全く衰えておらず、一層低い利回りによる高い価格での売却を見込み、建築費の上昇を吸収しており、さらに土地価格のさらなる上昇にもつながっているため、建築費高騰が投資意欲を減退させる方向には働いていないとの見解を示した。


(建設物価調査会の公表データを基にJLL作成)

高い価格での売却見込みが建築費上昇を吸収

リポートは、建築費上昇のエビデンスとして、建設物価調査会が公表している倉庫の建築費指数の動きを引用。工事原価は2021年4月の121.5から1年後の2022年4月には133.5、さらに直近の同年9月には139.7と、この5カ月で約5.0%上昇しているという。

その状況が生まれている要因の1つに輸入品の価格上昇を招く円安の進行を挙げ、中でも鉄骨は物流施設の躯体の中で大きな割合を占めているが、材料の鉄鉱石と石炭を100%輸入に頼っており、影響が大きいと語った。

同時に、前回のリポート公表当時は着工凍結や延期といった具体的な動きはほとんど見られなかったが、現在は近い将来に建築費の上昇が落ち着くとの考えの下、着工を延期するデベロッパーも実際に出てきていると説明した。

一方、今後も継続的に建築費の上昇が続くと考え、「現在の建築費の水準でも開発利益が見込めるのであれば、当初見込みよりも少なくなるとしても着工させる、と考えるデベロッパーもいる」と分析。着工抑制の動き一辺倒ではないと強調した。

また、各建築資材の納期も従前より延びていることに言及。「鉄骨は発注してから納品されるまで1年程度所要するといった話も聞かれる」と紹介した。さらに、「建設中の物流施設の竣工が遅れるといったことは、目下のところ発生していないようであるが、今後については、着工の延期だけでなく、予定通り着工するものの竣工時期が後ろ倒しになる、という事態もあり得よう」と展望した。

こうした情勢の変化は、デベロッパーよりも特に投資家へ影響を与えると予想。その背景として、投資家はIRR(Internal Interest Return=内部収益率)といった時間軸を含めた投資評価指標に重きを置いて投資プロジェクトを評価していることに触れ、「仮に土地購入費や建築費といった投資額が変わらなくても、家賃収入発生までの期間や売却までの期間が延びることで、これらの指標は悪化することになる」と説明。

「逆に言えば、指標を維持するには投資額を少なくする必要があり、現在の建築費が上昇、高止まりする環境下では、理論的には土地購入費を抑えるしかなくなる」と述べ、期待する賃料収入や売却価格などを変えない限り、土地を安く購入するしか選択肢がないとの仮定を示した。

しかし、現実には土地価格の下落という事象は起きていないと指摘。少なくとも投資市場に関して見ると、その背景には①円安による物件の割安感②今なお低く抑えられている借入金利③それに伴うイールドギャップ(借入金の金利と投資物件の利回りの差)の存在――を受け、今なお海外からの新規参入が続き、投資意欲は全く衰えていない状況であり、一層低い利回りによる高い価格での売却を見込み、建築費の上昇を吸収していると説明。「建築費の上昇を補って余りあり、それが土地へ向いて土地価格のさらなる上昇を招いている」との見方を示した。

今後については、利回りには依然として低下余地があるとみられることから、「建築費の上昇が続いたとしても、しばらくは土地価格も上昇、もしくは横ばいとなり、少なくとも下落する方向には振れない」と前向きな予測で締めくくった。

(藤原秀行)

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