昼夜問わず利用可能、検査業務のDX化推進に期待
西日本高速道路(NEXCO西日本)は11月2日、西日本高速道路エンジニアリング四国と連携し、偏光フィルタを採用した赤外線カメラでコンクリートの損傷をより迅速に発見する技術の実用化に成功したと発表した。
コンクリート構造物の損傷箇所(浮き・剥離)抽出の的中率が向上し、高速道路の構造物点検を大幅に効率化できると見込む。新技術が様々な構造物の点検に使われることで、検査業務のDX化推進にもつながると期待している。
NEXCO西日本グループは、異常(損傷)部と健全部の熱の伝わり方の違いにより生じたコンクリート表面の特異な温度差を、赤外線カメラで可視化し、損傷部を検出するJシステムを活用。効率的に点検を実施している。
しかし、太陽に熱せられた地面などの熱も反射され、赤外線カメラが捉えてしまうため、Jシステムを用いた点検は夜間に限定して実施している。
偏光フィルタを採用した赤外線カメラを採用することで、調査の精度が向上し、昼夜を問わず使えるといった効果を得られた。
反射光(損傷以外の熱源)を除去する手段として、偏光サングラスなどに利用されている偏光フィルタに着目。偏光フィルタは、下図のように細かなグリッド(縦筋)によって特定の方向に進む光以外を遮断することができる。この偏光フィルタを赤外線カメラに応用することで、構造物表面の熱反射だけをカットし、構造物本体の熱画像だけを捉えられるようになるという。
さらに、西日本高速道路エンジニアリング四国が自社技術として蓄積してきた画像処理、統計的処理を施し、高精度な熱画像を得ることに成功した。
偏光フィルタを内蔵した専用レンズ(赤外線カメラ用)を開発し、現行のJシステムで使用していた赤外線カメラのレンズと交換できるようにした。偏光フィルタ内蔵レンズの市場展開は今年12月を予定している。
現行のJシステムは撮影精度の観点から高価な赤外線カメラ(短波長の冷却型高性能カメラ)を採用しているが、より安価で一般的な赤外線カメラ(非冷却型汎用カメラ)を使用した、偏光フィルタビルトインタイプの小型赤外線カメラの開発を進めている。小型化の結果、UAV(無人航空機)搭載が可能となり、かつ一般的な可視画像を同時に撮影することで、構造物点検の近接目視と打音検査の支援技術への適用拡大が期待され、大幅な効率化とコスト削減が見込まれる。
現行のJシステムの課題に対し、今回の偏光フィルタ技術のほか、AIやIoTを導入・活用することにより、赤外線調査による構造物点検は飛躍的に改善されると想定。Jシステムを進化させた「JシステムEvolution」の実現に向け、一層の効率化に取り組む。
(藤原秀行)※写真類はいずれもNEXCO西日本提供