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【独自】国内輸送時の温室効果ガス排出をリアルタイム算出実現、積載率改善目指す

【独自】国内輸送時の温室効果ガス排出をリアルタイム算出実現、積載率改善目指す

環境配慮型素材のTBMとハコベルがタッグ、管理システム活用で業務負荷増やさず可視化

セイノーホールディングス(HD)とラクスルの合弁で輸配送管理システム「ハコベルコネクト」などを提供しているハコベルは、環境配慮型素材の開発・製造・販売を手掛けるTBMと連携し、輸配送領域で温室効果ガスの排出量を容易に算出できる仕組みを展開している。

TBMはハコベルコネクトを通じて製品輸送のトラックを手配している。通常の受発注を進める上で、輸送の実績など温室効果ガス排出の算出に必要なデータを取得・蓄積できるため、TBMにとってはシステムの仕様変更などの手間や業務工数を増やさずに済むのが大きなメリットだ。算出が難しい、サプライチェーン全体で間接的に排出する分(Scope3)を計算できる。

両社の取り組みは、業務負荷をかけずに温室効果ガス排出量を可視化できる点などが高く評価され、JILS(日本ロジスティクスシステム協会)の2022年度ロジスティクス大賞特別賞を受賞した。

TBMは温室効果ガス排出可視化の仕組みの運用を始めてから約1年が経過し、分析に必要なデータがかなり蓄積できている点を重視。可視化の仕組みを生かし、トラックの積載率向上などを推し進め、温室効果ガス削減により踏み込んでいきたい考えだ。


(両社提供)

ダッシュボードで推移を分かりやすく表示

TBMは2011年設立のベンチャーで、石灰石を主原料とした新素材「LIMEX(ライメックス)」や再生材料を50%以上含む素材「CirculeX(サーキュレックス)」などを手掛けている。LIMEXは紙やプラスチックの代替素材として、食品容器や包装、クリアファイル、名刺など多様な用途が考案されている。

石灰石は日本各地で採掘され、石油由来のプラスチックに比べると調達や廃棄の際のCO2を減らせるのがメリットだ。森林の保護に加え、製造時に紙と異なり水をほとんど使わないため水資源の保護も期待できる。こうした特性から今年4月時点で8000を超える企業や団体がLIMEXを採用している。

TBMとハコベルがJILSのロジスティクス大賞特別賞を受賞したのに際して公表した論文によれば、TBMはLIMEXに関して国内で宮城県の2カ所に生産拠点を構えているほか、提携工場も存在しており、委託先の倉庫へ製品を集約した後、注文に応じて納品先へ発送している。倉庫から納品先に届けているトラックは1日当たり4tで3~4台に上る。

2021年から協力運送会社の一角を占めてきたのがラクスルで、倉庫から納品先への発送量の6割程度にタッチしている。合弁会社としてハコベルが今年8月にラクスルから分社化された後は、ハコベルが引き続き業務を担っている。

TBMは自身、環境負荷低減に寄与する製品を手掛けていることもあり、国内輸送から出るCO2排出量をリアルタイムで可視化しようと考えた。TBMは2030年までに達成する目標「TBM Pledge2030」として、TBMの事業活動からの温室効果ガス排出をゼロにするとともに、バリューチェーン全体で排出量を20年度実績から半減させることを打ち出している。

ハコベルコネクトを通じて、荷主企業からの受注などをやり取りしているため、LIMEXを輸送した日時や積み地と降ろし地の場所、運んだ重量、使った車両のタイプといったデータをシステム内に蓄積できていた。LIMEXとラクスルはその点を重視、ハコベルコネクトのデータをそのままCO2排出の算出に使える仕組みを確立した。

算出に際しては、計算方法として蓄積したデータをより有効活用できるとの観点から、改良トンキロ法を採用した。改良トンキロ法はトラックの積載率や使った燃料の種類、最大積載量別の輸送トンキロを使って算出する。ハコベルコネクトで日々取り扱っているデータがまさにメーンの構成要素となっているためだ。

算出した排出量の動向などを細かく、直感的に把握できるダッシュボードも、TBMの要望を踏まえてラクスルで作成。排出量を左右する積載率の推移なども分かりやすくグラフでつかめるようにしている。

公表した論文で言及している事例を挙げれば、TBMが2021年の1年間のCO2排出量の推移を見た場合、3月が「積載重量当たりの排出量」が多い傾向にあることを発見。そこから、3月は「積載重量」や「積載率」が低水準な半面、「走行距離」が長いといった特徴をつかみ、「荷台スペースが十分に埋まっていない状態で少量の貨物を長距離輸送していたことが原因であることが読み取れた」という。

TBMの羽鳥徳郎サステナビリティ部長は「傾向と変化を見られるのが非常に重要。状況を確認しながら手を打てる。例えば積載率が非常に低い時があり、そのデータを、これはなぜか?と探る話し合いの題材にすることができる。ハコベルコネクトを使った仕組みを確立できた意義は大きい」と解説する。

ハコベルの渡辺健太ソリューション事業部パートナーも「普段の受発注のやり取りの中から苦労せず、可視化できたのが一番のポイント。ダッシュボードを開発する際も、非常にTBMさんからアイデアを出していただき、3カ月程度で可視化にこぎ着けられた」と振り返る。


JILSのロジスティクス大賞の授与式に臨んだ(左から)TBM・羽鳥氏、JILS・大橋徹二会長、ハコベル・渡辺氏(両社提供)


ダッシュボードのイメージ(両社提供)

TBM内では、物流全体を管理・運営しているSCMチームのメンバーが、CO2排出量可視化のデータを確認できる体制を整備した。今後はハコベルコネクトがカバーしている領域で、実データを基に温室効果ガス排出抑制の具体策を練っていくとともに、ハコベル以外の協力運送会社ともデータをやり取りして同様の可視化ができるよう取り組みを進めていく方針だ。既に協力運送会社から情報の提供は始まっているという。

羽鳥氏は「日々、物流企業のデータを活用して排出量を可視化できるということを多くの方に知っていただければうれしい」と語り、ハコベルとのタッグを継続していくことに強い期待を表明。ダッシュボードでも積載率がすぐに把握できるよう工夫が施されており、日々のCO2排出量を考慮しながら、各トラックの積載率改善につなげていくことを目指す考えを明らかにした。

渡辺氏も「今後、『グリーン物流』の必要性がより声高に叫ばれるようになってくれば、CO2排出量可視化への意識も高まってくるのではないか。自然とデータが集まってくる仕組みが重要」と展望する。

両社のケースは、荷主のTBMと物流の一部を担うラクスル(ハコベル)という、異なる立場同士がタッグを組んだことが大きな意味を成した。さらに、輸配送の細かなデータを利用可能な形にするという、DXの威力も目にすることができた。脱炭素化は物流領域でも今後、さらに強く求められることが確実なだけに、データを活用できる体制を導入し、業務負荷を増やさず温室効果ガス排出削減につなげられるようにする取り組みの重要性を鮮明にしたといえそうだ。

(藤原秀行)

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