「2024年問題」など踏まえ、1カ所で保管・配送・積み替えなど一括対応
横浜冷凍(ヨコレイ)の松原弘幸社長は12月2日、横浜市内の本社で開催したメディア向けの2022年9月期決算説明会見で、冷蔵倉庫事業で実施している、1つの冷凍・冷蔵拠点で商品の保管から配送、仕分け、積み替えまで多岐にわたるオペレーションに対応する「複合型マルチ物流サービス」に関し、今後はトラックドライバーの長時間労働規制が強化される「2024年問題」も踏まえ、顧客からの要望を考慮しながら同サービス専用の拠点を構える可能性もあるとの見解を示唆した。
同サービスは、従来の低温物流で行われてきた、保管はDC(在庫型センター)、商品の仕分け・積み替えはTC(通貨型センター)でそれぞれ担い、配送センターとの間で商品を輸送する形から、1カ所の拠点でオペレーション全てを手掛ける形に変更。冷凍食品の取り扱い増やトラックドライバー不足、配送時の温室効果ガス排出抑制といった課題へ対応していく狙いがある。
松原社長は、複合型マルチ物流サービスに関し、コンビニエンスストアや量販店などの冷凍食品の取り扱いが増えていると説明。「これからも全国で(対応する拠点が)増えていくだろう。専用拠点も(顧客から)要望があれば積極的にやっていきたい」と語った。
松原社長(ヨコレイ提供)
また、物流拠点の建設費が高騰している影響については「当然影響はある。しかし、逆に今がチャンスだろうと思っている。無尽蔵にお金があるわけではないので、(財政面で)適正な水準は保ちつつ、投資ができる範囲内で(拠点整備を)やっていこうと思っている」との見解を表明。優良な冷凍・冷蔵倉庫を展開することで、中小事業者らの商品保管需要を取り込んでいくことに強い意欲を示した。
併せて、冷蔵倉庫事業に大きな影響を与える電気代の高騰に関し、保管料などの値上げである程度補っていると強調。「高効率の冷凍機を入れているのも1つの要因としてある程度(コスト抑制を)手伝ってくれているのではないか。当社伝統の(自社社員が中心となり倉庫を運営する)社員オペレーションを進めていることで、社員が無駄な電気を使わないとかより効率的な冷やし方を考えたりするといった努力をする、そうした少しずつ複合的なものが合わさり、こういった(営業増益という)結果になったと考えている」の見方を明かした。
中期経営計画「ヨコレイ事業ビジョン2030」に盛り込んだ、「多機能&オートメーション化定温物流センター」を30年までに10センター新設(庫腹約25万t増)の目標に関し「(オペレーションで)できないところは機械化していこう、できるところはわれわれの最高のサービスを提供していこうということを考えている」と述べ、導入する先進機能は画一的なものではなく、各センターの利用顧客の実態などを踏まえ、適切なものを取り入れていく姿勢をアピールした。
今後冷凍・冷蔵拠点を整備していく上で、不動産デベロッパーが開発している賃貸型物流施設を利用する可能性に関しては「そちらの方が(自社開発より条件が)良ければ柔軟に考えていこうと思う」と解説。同時に、「中小の事業者が(デベロッパーに)賃料を支払いながら(自ら徴収する)保管料でペイできるかというとちょっと微妙。なかなか難しいのではないか」と語り、冷凍・冷蔵業界に賃貸物流施設を利用する動きが広がることについては慎重な見方をのぞかせた。
(藤原秀行)