公取委と中企庁が19業種対象の自主調査報告書、独禁法抵触の恐れ
公正取引委員会と中小企業庁は12月14日、人件費や原材料費、電気代などのコスト上昇を下請け企業との取引価格に転嫁しているかどうかに関する調査報告書を公表した。
公取委と中企庁は関係省庁と連携し、下請法違反の事例が特に目立つ化学工業や鉄鋼業、道路貨物運送業など19業種の事業者団体に対し、傘下企業の法令順守などの状況を自主的に調査するよう要請していた。
調査報告書によると、コスト上昇分を取引価格へ反映させる必要性について、価格交渉の場で明示せず従来の価格を据え置いたことがあったと回答した割合は、道路貨物運送業が32.8%で最も多かった。
コスト上昇に伴い、取引先から取引価格の引き上げを求められたのに、応じない理由を回答せず価格を据え置いたことがある割合も、道路貨物運送業は15.2%で、各種商品卸売業の28.6%に次いで2番目に高い割合だった。
公取委によれば、独占禁止法の運用方針は価格転嫁の必要性を価格交渉の場で協議せず価格を従来通り維持することは、同法が禁じている「優越的地位の乱用」に該当する可能性があると説明している。
調査報告書は、トラック運送事業者が下請け事業者に対し、問題のある対応を取っている実態を浮き上がらせた。道路貨物運送業は法令順守を裏付けるための社内体制整備も遅れが顕著で、国土交通省や業界団体を中心に価格転嫁を促進する対策が急務となっている。
対象の19業種。道路貨物運送業は回答割合も圧倒的に低い
調査結果(いずれも公取委と中企庁の資料より引用)
下請け企業との取引で「買いたたき」「減額」「支払い遅延」に該当する行為がないよう、社内規定整備といった管理体制を自社で設けているかどうかを尋ねたところ、道路貨物運送業は「管理体制を構築していない」が50.6%と過半に達し、やはり19業種の中で最多だった。
(藤原秀行)