36都府県で本格運用開始、建物内の熱中症回避に期待
大和ハウス工業は1月5日、室内の暑さの原因となる屋根の放射熱を一般的な折板屋根と比較して80%以上抑制する「低放射折板屋根」を開発、1月に本格運用を開始すると発表した。
日鉄鋼板とニチアスの技術協力を得ており、関連特許の出願を済ませた。
放射熱は物体表面から放出される電磁波(遠赤外線)が他の物体に吸収されて発生する熱を指す。高温の物体ほど強い電磁波を放出する特性がある。
「低放射折板屋根」の施工事例
熱中症は屋外だけではなく室内でも多く発生しており、特に工場や倉庫などで作業する製造業では、熱中症の46%が室内作業時に起きている。
その一因が屋根からの強い放射熱で、工場や倉庫の多くに採用される折板屋根は軽量で一定の強度を持つ一方、日射により高温化しやすく、強い放射熱によって室内を暑くするため、室内作業中の従業員などが熱中症を引き起こす恐れがある。
このため、同社は室内の暑さを緩和できる「低放射折板屋根」の開発にこぎ着けた。空調設備を導入しない新築の工場や倉庫などを対象として、2019年3月から一部エリア(関東、中部、関西圏)で先行採用してきたが、1月からは36都府県で本格運用を開始する。
「低放射折板屋根」は、折板屋根の下面に低放射裏貼材を接着することで放射熱を抑えられるようにした屋根材。アルミ系遮熱シートとガラス繊維系断熱材を組み合わせた独自の低放射裏貼材が、日射で高温になった屋根の放射熱を抑える仕組み。
18年の6月と8月に実施した実証実験では、暑さに対する効果検証を行うために同一建物に「低放射折板屋根」と一般的な折板屋根を採用。「低放射折板屋根」を取り入れた室内の体感温度は、一般的な折板屋根の室内と比較して3℃低減できることを確認したという。
室内での熱中症対策として一般的に採用されている二重断熱折板屋根や遮熱シートは、一般的な折板屋根と比べ部材や施工工程が多くなり、その分費用がかさむのが難点だった。「低放射折板屋根」は屋根材となる鋼板と低放射裏貼材を接着した状態で工事現場に搬入され、一般的な折板屋根と同様の工程で施工できるため、導入コストの抑制を実現できると見込む。
二重断熱折板屋根と比較すると、暑さの軽減効果は同等を確保しつつ、導入費用を7割程度に抑制できるという。
(藤原秀行)※いずれも大和ハウス工業提供