【現地取材・動画】プロに見せたい物流拠点⑧スクロール360・スクロールロジスティクスセンター春日部

【現地取材・動画】プロに見せたい物流拠点⑧スクロール360・スクロールロジスティクスセンター春日部

アパレル特化型として運営、人手かけた高品質サービスで差別化

課題山積の物流業界でピンチをチャンスに変えようと、省力化や生産性向上などに果敢に取り組む物流施設を紹介するロジビズ・オンライン独自リポート。第8回は通販大手スクロールの物流子会社スクロール360(さんろくまる)が埼玉県松伏町に2022年7月開設した「スクロールロジスティクスセンター(SLC)春日部」に焦点を当てる。

通販の中でも衣料品分野に絞った「アパレル特化型センター」として運営。商品の保管や入出荷、検品といった基本的な機能だけにとどまらず、人手をかけて縫製や加工なども担当。丁寧な仕事をモットーとする高品質サービスで差別化を図っている。返品の商品を、再び売り物にできるだけのレベルに仕立てる機能も有しており、SDGsに合致した資源有効活用の物流拠点にもなっている。

※この記事は、月刊ロジスティクス・ビジネス(LOGI-BIZ)2022年9月号に掲載した内容を一部修正・追加した上で再掲載したものです。施設内の様子などは当時から一部、変わっている場合があります


SLC春日部の全景(スクロール360提供)


センター内のハンガー商品(スクロール360提供)

返品の9割以上を「良品化」し無駄にせず

スクロール360は静岡県浜松市に本社を置き、東海エリアを中心に物流拠点を展開。通販代行をはじめとする幅広いサービスを手掛けている。顧客のBCP対策やリードタイム短縮のニーズを考慮し、物流拠点は東海から関西、関東へ進出している。

BtoB、BtoCの両チャネルに対応して、プレス、縫製、刺繍、汚れ落としなどの流通加工を含めたアパレル物流の全業務をワンストップで請け負う。繊維製品の品質に関する専門的な知識を有していることを証明する「繊維製品品質管理士(TES)」の有資格者も常駐している。

SLC春日部は地上3階建て、延床面積1万9833㎡。外資系アパレル企業が通過型センター(TC)として使用していた築25年の物件を居抜きで取得し、スタッフもそのまま引き継いだ。1階を入出荷・検品エリア、2階を保管・返品エリア、3階を保管・出荷作業エリアとして使用している。

入荷した商品はまず、AQL(Acceptable Quality Level=合格品質水準)ベースの抜き取り検品とローラー検針にかける。不備が見つかれば、同じフロアでプレス加工やケアラベルの発行・縫い付けなどを行う。ローラー検針で鉄粉や折れ針が検出された場合は全てX線検針に回し、さらにスタッフ2人体制で目視確認する。流通の可否は、同社が提供する確認画像を基にブランド側で判断する。入念なチェック体制を敷いている。


X線検針の様子。2人体制でミス回避に万全を期している(スクロール360提供)


プレス加工の様子(スクロール360提供)


刺繍機(スクロール360提供)


袋掛け(スクロール360提供)

検品済み商品は、エレベーターで2階または3階に搬送、保管する。2階の作業スペースは、主に返品処理に割り当てている。返品された全商品について汚れやにおいの確認、検針を行い、必要に応じて汚れ落としなどの処理をする。返品商品のうち在庫に戻せない「D品」は1割弱で、9割以上のものはここで良品化できるという。SDGsにもかなったオペレーションだ。

3階には店舗向け・通販向け両方の出荷作業スペースを設けている。JANコード、品番シールの貼り付け、値札・ラベル貼り、タグ付けといった物流加工、裾上げなどの流通加工、梱包・発送準備までを1フロアで処理している。ピッキングにはハンディターミナルを導入、スキャンした商品と情報が合致しなければ出荷ラベルが発行されない仕組みを取り入れて誤出荷を防いでいる。


検品の様子


カートンをそのまま保管容器として使用、資源の効率利用を図っている


店舗と通販は同一のロケーション


バースの様子


危険物管理にも配慮

熟練のパートスタッフが強み

同社の勝井武二フルフィルメントサービス部長は「SLC春日部は高級品を多く扱っていることもあり、エンドユーザーに“きちんとした商品”を届けることを第一に、人手による丁寧で手厚い検品・加工を重視している。それが評価されて付加価値を高めたいアパレルブランドに選ばれている」と自負をのぞかせる。

梱包には特に力を入れている。アイテムごとにルールや手順の異なるラッピング作業を、熟練のパートスタッフが担っている。「荷主ごとの特徴を生かした形で対応している。大事なのはお客さまが箱を開けた時に抱く印象。顔の見えない通販では、梱包はお客様との唯一のコミュニケーションツール。そこは注力していきたい」と勝井部長は強調する。


取材に応じる勝井部長

昨年夏ごろの時点でパートスタッフ約120人を雇用し、常時70人程度が働いている。ほとんどを地元で採用しており、パートスタッフの約8割は勤続年数が5年を超えるという。

勝井部長は地元重視の背景として「地元を大切にして、スポット作業も含めてお断りをしないフレキシブルなセンターにしていきたい。このセンターだけではできないことも、いろいろな業者とのアライアンスや自社の中の協力体制を活用すれば提供できる」と話す。

フォークリフトが施設内を走行しないため、安全に就労できることが期待できる。エアコンは施設内でほぼ完備し、食堂ではお弁当を割安で販売。作業時の照明にも配慮して手元を明るくするよう心掛けるなど、働く人にも優しい環境を整備することに腐心している。

スクロール360は20年5月に茨城県つくばみらい市に物流センター「SLCみらい」を開設して首都圏エリアに初進出した。同センターにはソーターを導入しており、さらなる機械化も検討。出荷件数の多いものはSLCみらいで対応することを想定しているという。並行して埼玉・千葉の倉庫会社とネットワークを構築し、アパレル品の季節波動に対応している。

「柔軟な対応が可能である点と、手作業中心の丁寧なオペレーションが特徴。消費者を意識した運営をしている。丁寧な対応がリピートにつながるような仕事をしていきたい」と意気込む勝井部長。消費者と庫内で働く人の双方に配慮する物流施設として価値をより高めていくことが期待できそうだ。


小物用ラック


ハンガーで保管

(ロジビズ・オンライン編集部)

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