30年代に実現目標、低コストで自立的な宇宙輸送システム確保へ
宇宙輸送と宇宙利用を通じて地球の課題解決を目指す宇宙の総合インフラ会社インターステラテクノロジズは1月24日、国内初の民間主導による小型衛星コンステレーション(多数の人工衛星を協調して動作させる運用方式)用大型ロケット「DECA」の開発計画に着手したと発表した。
宇宙への大量輸送時代に適したサービスを2030年代に実現することを目指し、日本国内への低コストで自立的な将来宇宙輸送システム確保へ積極的に貢献していきたい考え。
宇宙輸送システムは今後大きく成長が見込まれる宇宙市場の産業基盤を支えるインフラであり、米国のSpaceXを筆頭とした民間企業の参入で世界的に競争が激化している。
日本が独自の打ち上げ手段を失う場合、自立的な宇宙へのアクセスができなくなることによる国益の損失は甚大で、自国での低コストで国際競争力のある宇宙輸送システム確保の重要性が増している。
政府は2022年7月に公表した「革新的将来宇宙輸送システム実現に向けたロードマップ検討会取りまとめ」で、民間との連携により従来の10分の1以下と抜本的に低コスト化を図ったロケットを開発することを打ち出している。
インターステラテクノロジズが今後開発するDECAは、これまでに3度の宇宙到達実績がある観測ロケット「MOMO」、初号機打ち上げを目指して開発している超小型人工衛星打ち上げロケット「ZERO」の開発・製造で実証・蓄積してきた低コストロケットの技術を活用。最先端の再使用技術も取り入れることで抜本的に低コスト化を図る。国内の宇宙輸送能力増強への寄与を目指す。
DECAは、小型衛星コンステレーション形成に加えて、大型衛星の軌道投入や宇宙ステーションへの物資輸送などにも対応可能な大型ロケット。人工衛星開発のインターステラテクノロジズ100%子会社Our Starsが目指す衛星コンステレーションの構築も担い、「ロケット×人工衛星」の垂直統合の強みを最大限に発揮した自由度の高い大量打ち上げを行うことを想定している。
インターステラテクノロジズのロケットはMOMO、ZEROともに、設計上の工夫や生産技術の革新により抜本的な低コスト化を図っており、DECAでもそのコンセプトを継承。ZEROのような小型ロケットではコストメリットが小さかった再使用技術を大型化に伴って新たに採用、現状より1桁安い価格で、国際競争力のある宇宙輸送サービスを国内に構築することを狙っている。
世界の宇宙市場は年々拡大しており、衛星の需要は大きく伸長。中でも小型衛星コンステレーションの構築は、インターネット通信の普及や、衛星データを活用した「超スマート社会」の実現といった宇宙利用の普及に向けて欠かせない技術となっている。
ロケットは衛星を運ぶための唯一の手段であり、米国や中国を中心に世界の打ち上げ回数は年々、飛躍的に増大。一方、2022年の日本の打ち上げ回数は世界全体の174回に対して0回となり(下図参照)、国内の衛星打ち上げ需要の多くが海外に流出してしまっているのが現状。
さらに、ロシアのウクライナ侵攻の影響で、世界の宇宙輸送の約1割を占めているロシアのロケットを日本や欧米諸国は使えなくなり、経済安全保障の観点からも国内への宇宙輸送能力の増強が求められている。
DECAは国際単位系(SI)において、基礎となる単位の10倍の量であることを示すSI接頭語。ロケットDECAはZERO(=0)に続くロケットに当たることや、大量輸送を担うという1桁上の進化を目指すことから命名した。本社を置く北海道十勝地方の「十」、2023年がインターステラテクノロジズ事業開始「10」年の節目であることなども加味しているという。
(藤原秀行)※写真などはインターステラテクノロジズ提供