官民検討会で3省が新規制の原案提示、「管理統括者」選任も
国土交通と経済産業、農林水産の3省は2月17日、物流が直面している人手不足など諸課題を解決し、持続可能な物流を実現するための具体策を官民のメンバーで議論する「持続可能な物流の実現に向けた検討会」の会合を開催した。
2月8日に公表した議論の「中間とりまとめ」の中で、深刻なトラックドライバー不足などの課題を踏まえ、荷主企業にも行動を促すため、法令による規制的な措置の導入を検討する必要性に言及するなど規制強化の方向性を打ち出したことを受け、新たな制度の原案を提示した。
原案はある一定水準以上の事業規模を備える発荷主と着荷主、物流事業者のそれぞれに対し、物流拠点での荷降ろし・荷積みの待機時間や荷役時間の削減などに関する中長期の計画を策定、政府に報告するよう義務付けるとともに、取り組みが不十分と判断した場合は政府が改善を勧告・命令できるようにすることを盛り込んだ。
検討会は関係団体などへのヒアリングを経て、今年5~6月ごろをめどに議論の最終取りまとめを決定する予定。荷主に課す義務の程度がどの程度まで強まるかが焦点となる。ぎりぎりまで関係者間の意見調整が続きそうだ。
納品回数減少やリードタイム延長も
中間取りまとめは「荷主企業においては、物流部門は物流課題に対する危機意識があったとしても、経営者層を含む企業全体としての認識につながっていない」などと問題意識を表明。さらに「現行制度は主に発荷主企業を対象にしたものが多く、着荷主企業の物流改善を主目的にしたものは存在しない」と指摘、特に着荷主の自発的な取り組みを後押しする必要性に言及した。
3省はこの日の会合で、具体的な制度の検討に向け、関係者にヒアリングするためのたたき台となる制度の原案を提示した。この中で、企業に対し化石由来ではないエネルギー使用の拡大を求める改正エネルギー使用合理化法(省エネ法)を参考に引用。
改正省エネ法はある一定以上の規模を持つ「特定事業者」に対し、エネルギーの使用方法改善の監視などの業務を統括する「エネルギー管理統括者」を選任するよう義務化。同じくある程度以上の規模を有する「特定荷主」に、エネルギー使用の合理化に関する目標と達成のための中長期的な計画を策定、国に提出するとともに毎年度、進捗状況を報告することを定めている。
こうした点を踏まえ、ある一定の量以上の荷物を引き渡す発荷主と受け取る着荷主に対し、待機時間や荷役時間の削減、納品回数の減少、リードタイムの延長、積載効率向上、商取引の物流コスト可視化など、物流の効率化・平準化を図るための中長期的な計画を作成、政府に報告することを義務付けるとともに、取り組み著しく不十分と判断した場合は政府が改善を勧告・命令できるようにすることを列挙した。計画に盛り込む事項として、運賃や料金の明確化なども加えている。
併せて、条件に該当する発荷主と着荷主のそれぞれに「物流管理統括者」を選任し、取り組みの進捗状況の把握などを担うことも義務化することを提示している。物流事業者に対しても、同様の措置を講じる方針を提案している。
(藤原秀行)