【独自取材】政投銀が物流業界の国際競争力向上へ技術革新支援に注力

【独自取材】政投銀が物流業界の国際競争力向上へ技術革新支援に注力

課題整理した研究会報告書公表、有望技術持つベンチャーへの資金供給など検討

日本政策投資銀行(DBJ)は5月20日、大手物流企業の経営トップらを招いてロジスティクス分野の技術革新促進策を議論してきた「ロジスティクスイノベーション研究会」の報告書を公表した。この中で、人手不足などの諸課題解決に向け、企業や業界の壁を越えて情報が共有される仕組みの整備、ベンチャー企業と大手企業の連携など4点を課題として提示、産官学が協力して臨むよう訴えた。

DBJは2018年に物流業界へのサポートを拡充していくための専任部署「グローバルロジスティクス室」を設置するなど、かねて物流・ロジスティクスの成長支援に乗り出し、試行錯誤を重ねている。報告書作成を通じて課題への対処の在り方を整理できたとして、金融機関の立場から自動化・省人化へのバックアップをさらに強め、日本のロジスティクス・物流業界の成長持続と国際競争力アップに貢献していく構えだ。

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荷主含む流通システム全体で変革推進

研究会は日本通運、鈴与、大和ハウス工業、SBSホールディングス、三井倉庫ホールディングス、全日本空輸、シーアールイー(CRE)の7社から首脳や幹部らが参加。学識経験者として「渋滞学」で知られる東京大の西成活裕先端科学技術センター教授が出席したほか、オブザーバーとして国土交通省の松本年弘物流審議官(当時)も名を連ねた。18年9月以降、計3回会合を開き、意見交換を重ねてきた。

報告書は冒頭、研究会の趣旨を「抜本的な変革を伴うイノベーションにわが国が乗り遅れないように、そして、変化の波を乗りこなしてわが国のロジスティクスシステムが世界い通用する生産性を獲得できるために関係者(主としてロジスティクスサービスの提供者を想定)が取り組むべき課題を整理する」と明記。

深刻な人手不足などの現状を細かく分析した上で、ロジスティクス・物流分野で技術革新を促すための課題として、
①競争と協調の線引きおよびプラットフォーム構築に向けた取り組みの強化
②ベンチャー企業の活力と大企業の商圏・事業力との融合
③イノベーションを育む無形資産の強化
④金融機関に求められる役割
――を列挙した。具体策として、優秀な技術者をロジスティクス分野に引き付ける努力を産官学全体で行うと同時に規制緩和も進めることなどを提案した。

注目される④については、有望なベンチャー企業への適切な形での資金提供、ロジスティクス分野でのCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)機能代替、物流ロボットのセカンダリー(再流通)マーケット創設支援などを挙げている。

併せて、政府が戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の一環として構想を進めている、港湾物流の効率化や共同配送などを包括的に推進してサプライチェーン全体を最適化する研究開発計画「スマート物流サービス」で、中立的立場から“黒子”として政府と事業会社をつなぐ役割を果たすことも提唱した。

報告書は「ロジスティクスの効率性は商慣習や流通構造によって規定される面も大きく、サービス提供者だけで解決できない問題も多いが、政府の支援も得ながら、荷主を含めた流通システム全体を巻き込んでイノベーションが推進されることが期待される」と締めくくっている。報告書からはDBJとしてどのようにロジスティクス・物流分野の変革を支えていくか、という思いが散りばめられているとの印象を受ける。


「スマート物流サービス」の概要(報告書より引用・出典は国土交通省資料)※クリックで拡大

「ステークホルダーまとめる経験生かしたい」

DBJの初代グローバルロジスティクス室長として同研究会の立ち上げなどに携わり、現在は産業調査ソリューション室課長を務める須釜洋介氏は同研究会の議論に関し「参加されている方々がイノベーションなどにかなり高い関心を持って事業に取り組んでおられることを確認できた。同時に、金融機関として何かできることがあるのではないか、との切り口から業界の方々とディスカッションができたのは非常に有意義だった」との感想を語る。

2代目グローバルロジスティクス室長の海崎正人氏は「今回の報告はビジネス革新のためのイノベーションの必要性などに関する基礎的な理解を、業界の方々とすり合わせしたとの立ち位置。こうした基礎ができたので着実に次の展開につなげていきたい」と強調。同室の星秀太郎調査役も「ファイナンスの面でお手伝いできるところはさらに手掛けていきたい。中長期的に取り組んでいく」と意気込みを見せる。

DBJとしても、グローバルロジスティクス室が他部門とタッグを組み、有望な技術を有するベンチャー企業へのリスクマネー供給や物流の効率化に資する高機能の物流施設開発への投融資拡大などに継続して取り組むと同時に、産業調査部の産業調査ソリューション室がさまざまな調査を実施し、必要な情報を収集するなどして適切な施策を講じていけるよう努める、といった行内の役割分担と部門間連携をさらに加速していく見通しだ。

須釜氏は報告書の中で提案されていた、物流ロボットのセカンダリーマーケット形成について、DBJが18年に燃料電池自動車向け水素ステーションの本格整備を後押しするため、大手自動車メーカーやエネルギー関連企業など10社とともに「日本水素ステーションネットワーク合同会社」を設立したことに言及。

「まだセカンダリーマーケットはすぐに何か動きがあるというわけではないが、当行が積み重ねてきた、ステークホルダーをまとめるという経験を生かしていきたい」と強調する。こうしたマーケットを整備することができれば、物流ロボットの普及につなげられる可能性があるだけに、DBJの今後の取り組みは重要な意味を持っている。

また、報告書でも触れられていた「スマート物流サービス」への対応がDBJの取り組みの中で1つのポイントとなりそうだ。須釜氏は「国土交通省や経済産業省とは日ごろコミュニケーションを積極的に取っているところでもあり、当行としてもサプライチェーンを止めないためにどういった協力ができるか、構想を検討していきたい部分ではある」と力説する。報告書で記述していた通り、“黒子”としての役割を果たしたいと意欲を示しており、ロジスティクス・物流業界からも引き続き、期待を集めそうだ。


(左から)星、須釜、海崎の各氏

(藤原秀行)

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