現中計踏まえ、領域とエリア絞り込み経営資源投入
山九は5月10日、2023年3月期連結決算発表の記者会見をオンラインで開催した。
諸藤克明専務取締役は今後の経営方針として、今年1月に公表した2023~26年度を対象とする中期経営計画に沿って、得意としている電気・電子部品や化成品、鉄鋼、自動車部品といった領域に絞って経営資源を投入し、東南アジアなどで物流事業の規模を拡大させていくことにあらためて強い決意を示した。また、プラント工事などの機工事業も同様の戦略を進める姿勢をアピールした。
諸藤氏は、23年3月期の物流事業が増収増益だったことについて「国際物流と港湾系が強かった」と解説。海上運賃の上昇などがプラスに働いたことを明らかにした。
同時に、国際物流の領域については「昨年度(23年3月期)の後半は海上運賃の下落などもあり減速傾向があったが、今年度(24年3月期)も中国に関して足元で若干弱い見通しとなっており、年度後半に回復を期待している。中東地区で新しい現場の獲得を目指してやっている」と言及。「東南アジアの物流は総じて良かった。昨年度後半にかけて波は下がってきたが、やはり今年度下期の回復を見込んでいる」と語った。
新中計は、国際物流に関してターゲットとする領域やエリアを絞り込み、強みを生かした選択と集中を進める方針を明示。東南アジアでは電気・電子部品、危険物を含めた化成品などを念頭に置いている。諸藤氏は「当社はWCA (World Cargo Alliance)などの世界の代理店とお付き合いしながら集荷している。そういうところを大きく活用しながら国際物流を大きく伸ばしていきたい」と意気込みを示した。
トラックドライバーの長時間労働規制が強化される「2024年問題」への具体的対応として、矢島克巳経営企画部長はスワップボディコンテナ車両を活用したスイッチ(中継)輸送やモーダルシフトを進めているほか、コストアップ分をパートナー企業への運賃へ転嫁していくことにも配慮していることを明らかにした。
昨年9月に始めたパートナー企業への代金の現金払いによる資金繰り支援に関し、米田和敬常務執行役員は「大変感謝されている」と報告。諸藤氏は「サプライチェーンの中で全てがそういう(早期支払い)ふうになっていって、そのお金が動いていくという流れにならないと経済が回っていかないと思う」と意義を強調し、支援策を継続していく方向性を強くアピールした。
会見に臨む(左から)矢島氏、諸藤氏、米田氏(中継画面をキャプチャー)
(藤原秀行)