貨物軽自動車運送事業者、平均労働「11時間以上」が3割超:運行管理は2割超が実施せず

貨物軽自動車運送事業者、平均労働「11時間以上」が3割超:運行管理は2割超が実施せず

国交省が初の業務実態調査、荷主の問題行為は5割が「ある」と回答

国土交通省は5月16日に開催した「貨物軽自動車運送事業適正化協議会」で、首都圏や近畿圏で貨物軽自動車運送に携わっている個人事業主を対象に初めて実施した業務実態に関するアンケート調査結果を公表した。

1日当たりの平均労働時間について、11時間以上と答えた人が3割超に上ったほか、繁忙期には2割強が1日当たり200個以上の荷物を取り扱っていると回答。インターネット通販の利用拡大による荷物増など、労働環境が厳しくなっていることをうかがわせた。

また、荷主が法令違反を引き起こす原因となる行為をしていることの有無については、5割が「ある」を選択。具体的な事例では、大量の荷物を依頼されたり、適正な運行では間に合わない到着時間を指定されたりしたケースが目立った。

国交省は調査結果を踏まえ、貨物軽自動車運送の安全規制強化を検討。改正貨物自動車運送事業法に則り24年3月までの時限措置として実施している、運送事業者の違法行為を助長していると認められる荷主企業や元請けの運送事業者に改善を要請・働きかける制度の活用も視野に入れている。

調査は今年3月から1カ月程度にわたり、首都圏と近畿圏の個人事業主1万人を対象にインターネットで実施、772人が有効回答を寄せた。

「51~60歳」が3割、「65歳以上」も1割近くに

年齢は「51~60歳」が31%で最も多く、「41~50歳」が23%、「31~40歳」が17%と続いた。「61~64歳」と「65~74歳」がともに8%、「26~30歳」は7%、「~25歳」が5%、「75歳~」が1%だった。

事業形態は「専業」が64%で最多を占め、「副業」が21%、「本業(複数の仕事のうち、運送業の収入が最も多い)」が15%となった。

取引先(複数回答可)は、「大手通販サイト事業者」が37%でトップ。「大手運送事業者」が30%、「運送マッチングサービス事業者」も27%で、この3者で9割を超えている。

1日当たりの取扱量は、通常期と繁忙期、閑散期のいずれも「100個未満」が最多。ただ、閑散期は65%、繁忙期は43%など時期によって波が見られた。「200個以上」は閑散期が8%なのに対し、繁忙期は26%に上昇した。通常期は11%だった。

平均月収を尋ねたところ、通常期と閑散期は39万円以下が8~9割を占めるが、繁忙期では40万円以上の割合が3割を超え、50万円以上も16%と急増。閑散期と繁忙期の業務量と収入の変動が大きいことを示した。

拘束・休憩時間「遵守していない」が4割近く

運行管理(酒気帯びの確認を含めた点呼の実施など)の実施状況を聞いたところ、「実施している」が62%、「ある程度実施している」が13%で合わせて7割を超えた一方、「点呼が必要なことは理解しているが実施していない」が10%、「個人事業者も点呼が必要なことを知らなかったため、実施していない」が15%と2割超が実施していないことが判明した。

車両の点検状況に関しては、日常点検は「実施している」が70%となる中、「点検整備が必要なことは理解しているが、実施できていない」が22%、「点検整備が必要なことを知らなかったため、実施していない」も8%と、3割程度が実施していないことが分かった。

12カ月ごとの定期点検も「実施している」が71%と圧倒的に多かったものの、「点検整備が必要なことは理解しているが、実施できていない」が23%、「点検整備が必要なことを知らなかったため、実施していない」も6%と、やはり約3割が実施していない結果となった。

拘束時間や休憩時間などの遵守状況は、「遵守している」が33%、「ある程度遵守している」が28%で合計6割に達した。半面、「基準は理解しているが、遵守していない」が25%、「基準を知らなかったため、遵守していない」も14%認められた。

1週間当たりの労働日数は、「4~5日」が45%、「6日」が37%となり、両方で8割を超えた。「2~3日」は9%、「7日」が5%、「0~1日」が4%だった。

1日当たりの労働時間について、「ちょうどよいと感じる時間」を聞いたところ、「7~8時間」が46%と最多で、「9~10時間」の28%、「~6時間」の21%を引き離した。逆に「長いと感じる時間」は「9~10時間」が31%、「11~12時間」が32%を占めた。

平均労働時間を見ると、「7~8時間」が23%でトップ。「11~12時間」が21%、「9~10時間」と「~6時間」がともに18%、「13~14時間」が14%と続いた。11時間以上が36%となっており、国交省は「総じて長時間労働の実態がうかがえる」との見解を示している。

荷主から「相当量の荷物依頼され、拘束時間超えて配達」40%

安全対策案として、輸送の安全の確保に資する安全講習や、事故防止や安全対策に役立つハンドブックがあれば受講したり読んだりしてみたいかについて質問した結果、安全講習は「ぜひ受講したい」が13%、「義務であれば受講する」が52%と6割超で前向きな反応が見られた。同時に、「受講する気はない」も27%に上った。

ハンドブックは「読んでみたい」が50%、「紙媒体であれば読んでみたい」が15%となり、安全講習と同様に6割を超えるものの、「必要性を感じない」も35%あった。

「荷主による違反原因行為の有無」は、「ある」が54%、「ない」が46%で過半数があると認めた。違反行為の内容を選んでもらったところ(複数回答可)、「相当量の荷物を依頼され、法で定める拘束時間を超えて配達しないと間に合わなかった」が40%で首位。「適正な運行では間に合わない到着時間を指定された」が27%、「運送依頼主から積めるだけ積むように言われ、最大積載量を超えた運送を強要された」が18%、「異常気象時の運行を強要された」が9%だった。

(藤原秀行)

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