【新連載スタート】時代の荒波を乗り越える!今こそ成すべき組織変革ステップ

【新連載スタート】時代の荒波を乗り越える!今こそ成すべき組織変革ステップ

(第1回)変革が求められる物流会社に必要な組織設計力とは?

タナベコンサルティング ストラテジー&ドメインコンサルティング事業部
壽系 祐太 チーフマネージャー

好評を博したタナベコンサルティング・土井大輔氏に続き、同社の気鋭のコンサルタントによる第2弾の連載がスタートします。トラックドライバーの長時間労働規制強化に伴い、物流現場の混乱が危惧されている「2024年問題」をはじめ、課題山積の物流業界。事業の継続可能性を高めるためには、今こそ自ら変革に踏み出す時。そんな問題意識を礎にして、具体的な組織変革のノウハウを指南していただきます。乞うご期待!
【プロフィール】
壽系 祐太(すけ・ゆうた氏)
タナベコンサルティング ストラテジー&ドメインコンサルティング事業部 チーフマネージャー。物流領域を主戦場としながら中期ビジョン策定から実装までを一貫して支援。2022年に「物流経営研究会」のサブリーダーに就任。机上ではなく、現場に入り込み、顧客とともに解決策を探すことを大切にしながら日々のコンサルティング業務に励んでいる。


(タナベコンサルティング提供)

目前に控えている「2024年問題」やコロナショック、ウクライナ危機により、世界的なサプライチェーンの構造変化が起こり、物流業界は変革を迫られています。

2024年問題は、自動車運転業務の年間時間外労働時間の上限が960時間に制限されることによって発生する問題です。筆者も物流会社の経営者とディスカッションをする中で、「長時間働いて残業代を稼ぐ今までの働き方を続けると、(2024年の労働時間の上限規制で残業ができなくなるため、)トラックドライバーの現行の給与水準を維持できない……」といった声を聞きました。物流会社は荷主との積極的な対話を通じて、1案件あたりの運賃の向上や運行形態の見直しなど、自社の業務内容の抜本的な見直しを行い、生産性を高めていくことが求められます。

荷主、物流会社を取り巻く業界単位でのサプライチェーン構造の変化にも目が離せません。コロナショックやウクライナ危機などのメガトレンドの影響で、大企業を中心としたサプライチェーンの構造改革が進められています。

物流・製造拠点のエリア分散化・集中化、拠点の役割変更、他にもエアー便や船便などの輸送形態の変更により、長年にわたり安定的に仕事を受けていた中小の物流会社が影響を受け、3年後には業績の見通しが立たないケースもあります。

以上のような物流業界を取り巻く外部環境の不確実性が高まる中で、今後ますます柔軟かつ迅速に、事業・組織の変革をしていくことが必要です。そんな改革を支える大きなテーマとして、組織・人財の観点から、全5回の連載で検討していきます。

うまく機能しない組織の3つの特徴

第1回はまず、組織を「目的達成に向けてルール化・仕組み化された中で活動する人々の集まり」と定義するところから始めます。組織改革において、企業は既存事業活動をいかに効率良く成長させていくか(効率的な成長)と、いかに外部環境の変化に応じて新たな取り組みを進める・生み出していくか(柔軟かつ迅速な対応)を両輪として、バランス良く追求していくことが重要です。この効率的な成長と柔軟かつ迅速な対応を実現するために、それぞれ別の組織構造を用意して主活動を進めていくことが必要になります。

効率的な成長に適しているのは垂直的な組織構造であり、官僚的な組織体で階層数がタテに深まる性格を持ちます。そして、柔軟な対応には水平的な組織構造が適しており、フラットな組織体で階層数がヨコに広がる性格を持ちます(下図参照)。

効率的に業績を作る垂直的な部門と、新たなイノベーションを起こす水平的な部門に分けることで、外部環境に対して柔軟に変化しつつも業績向上を実現できる組織構造設計を行うことが可能です。

しかしながら、「水平的な組織構造を作ってもうまく機能しない」といった声をいただくことも多くあります。原因は各社各様ですが、大きな原因の一つとして、物流会社であるがゆえの荷主とのパワーバランスや事業構造上の特徴により、活躍できる人財が育っていないことが挙げられます。この特徴とは「受け身体質型」、「エリア縦割り組織型」そして「固定・ルーチン業務型」の3つです。

①受け身体質型による弊害
「荷主の言われた要望に対して創意工夫をして的確にこなす」ことは得意であるが、自ら問題提起をして主体的に取り組むことができない。

②エリア縦割り組織型による弊害
「拠点は複数あるが、それぞれが特定荷主に依存している」ことで、エリア連携が促進されておらず、全社視点で物事をとらえる知識、力を備えていない。

③固定・ルーチン業務型による弊害
「業務がある程度ルーチン型」となっており柔軟に思考する経験を積むことができない。

上記3つの弊害から、水平型の組織構造の組成プロセスにおける課題が残ると考えられます。

解決のポイントは「①水平型の組織構造に所属することで次世代を担う人財を育てる」、「②水平と垂直の組織構造の関係性に気を配る」、「③評価制度・諸制度を整備する」、「④イノベーションを生み出す前向きな文化を作り風土を醸成する」――の4つの視点が必要になります。次回より、4つの項目の詳細を検討していきます。

(第2回に続く)

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