「物流が提供する社会的価値をさらに向上させたい」

「物流が提供する社会的価値をさらに向上させたい」

郵政&ヤマトグループ協業発表会見詳報(前編)

日本郵政と日本郵便、ヤマトホールディングス(HD)、ヤマト運輸の4社が6月19日、東京都内で開催した協業に関する記者会見の内容を詳報する。

お客様と地域を支える共創プラットフォームの強化につながる

【冒頭発言】
日本郵政・増田寛也社長
「4社は協業を進めることについて、本日、基本合意書を締結した。協業内容は1つ目として、ヤマト運輸が扱っているクロネコDM便について、2024年2月から『クロネコゆうメール(仮称)』として日本郵便の配達網でお届けを開始する。2つ目はヤマト運輸が扱っている『ネコポス』について、『クロネコゆうパケット(仮称)』として、2023年10月から一部地域で日本郵便の配達網でお届けを開始する。その後、順次取り扱いを拡大し、2024年度末までに全国全ての地域で利用できるようにする」

「今回協業する目的は、資源・エネルギー価格や原材料価格の上昇に伴うインフレ傾向や、労働力減少で賃金や時給単価の上昇など、物流事業者を取り巻く外部環境が厳しさを増していく中において、両社が相互の経営資源を有効活用することにより、お客様の利便性向上に資する輸送サービスの構築と、事業の成長を図るとともに、相互のネットワークを共同で活用することにより、物流業界が抱えている2024年問題、トラックドライバー不足、そして環境問題、カーボンニュートラルなどの社会課題解決を目指す」

「新型コロナウイルス感染拡大がライフスタイルの変化を加速させ、それによりeコマースは生活基盤として、ますます重要な役割を担うと同時に、荷物の出し手と受け取り手の要望はより一層多様化し、安定した物流サービスの持続的提供が課題となっていた。両者の協業は、この課題解決に資する取り組みだと考えている。さらに、日本郵便の郵便・物流ネットワークや、ヤマトの物流ネットワークが世界に誇るべき社会インフラとしての機能を備えている。両社において一層の環境強化を図ることで、お客様の利便性向上に資することを目的とした、ネットワークの維持・強化を図っていく」

「日本郵政グループでは、グループの中期経営計画を発表して2年が経過した。お客様と地域を支える共創プラットフォームの実現のため、郵便・物流事業、銀行業、生命保険業の各分野において、様々なグループ外企業との協業を積極的に推進している。今回の協業も、お客様と地域を支える共創プラットフォームの強化につながるものとみている。今後も共創プラットフォームを築き上げ、地域において生活するお客様が、安全・安心で豊かな生活、人生を実現することを目指している」

「私たちの事業の礎を築いた前島密は、縁の下の力持ちになることを厭うな、人のためによかれと願う心を常に持てよ、という信条通り、近代化が進む明治時代の日本において、まさしく陰ながらより便利でより快適な暮らしを提案し続けた。私たちも前島密の教えのごとく、お客様により快適なサービスを提供していけるよう、努力してまいる」


日本郵政・増田社長(同社提供)

協業するスタートラインに本日、こうして立てたことの意義は非常に大きい

ヤマトHD・長尾裕社長
「言うまでもなく両者はわが国の強いインフラを構成する一員であり、文字通り、ユニバーサルな事業を展開している。その両者の経営資源を相互に有効活用し、今後の持続可能な物流サービスの提供に向けて協業するスタートラインに本日、こうして立てたことの意義は非常に大きいと考えている。当社は1997年からクロネコメール便というサービスを通して、ポスト投函サービスの領域に進出した。ピーク時には年間22億冊を超える物量を扱い、現在では複数の民間事業者が参画する投函サービス市場の形成に当社は一定の寄与ができたと考えている」

「現在取り組んでいる2024年問題への対応をはじめ、当社が向き合うべき様々な課題や機械を鑑み、この投函サービス領域で最も優れたネットワークを有する日本郵政グループとの協業を通して、持続可能なビジネスの構築と、お客様の利便性向上を両立させることは、物流企業として意義深いアクションだったと実感している」

「この数年間、ヤマトグループは中期経営計画に基づき、経営構造の改革に取り組んできた。3年後には当社が提供する主力サービスの宅急便がサービス開始50年の節目を迎えるが、その後も当社のビジネスが持続可能であり、かつ世の中からも求められるものであるということを目指し、現在、ネットワーク構造の刷新、ならびにビジネスモデルの変革に挑んでいる。また、2050年のGHG(温室効果ガス)自社排出量を実質ゼロにするため、EV(電気自動車)導入や太陽光発電設備の設置、再生可能エネルギー由来の電力の活用など、より良い環境の実現にも積極的に取り組んでいる」

「今回のパートナーシップの構築が、様々な領域で良い化学反応を生み出し、そして物流が提供する社会的価値がさらに向上することを実現させていきたい。それはまさに当社のパーパスである、豊かな社会の実現に貢献すると確信している」

(中編に続く)

(藤原秀行、安藤照乃)

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