経済安保関連の事業上影響、「物流網の分断」「調達困難な物質」など列挙

経済安保関連の事業上影響、「物流網の分断」「調達困難な物質」など列挙

法施行1年受けFRONTEOが企業調査、製造業は対策で大きくリードも進捗不十分

AIを活用した情報解析を手掛けるFRONTEO(フロンテオ)は7月31日、経済安全保障推進法が昨年8月の施行から1年となるのに合わせ、日本企業の経済安保対策に関する取り組み状況の調査結果を公表した。

日本企業に勤務する121人のうち、経済安保推進法の交付・施行は8割超が認知していたと回答。全体の約2割が経済安保に関連する事柄で事業上の影響があったと答え、具体的には「物流網の分断」や「調達困難な物資」、「サプライチェーン上での懸念組織との繋がり」などを挙げる向きが目立った。

<調査の実施概要>
調査実施時期  : 2023年6~7月
調査主体    : FRONTEO
調査対象    : FRONTEOが主催する「経済安全保障勉強会」等の各種勉強会の案内先で、日本企業に勤務する人
調査方法    :インターネット調査
有効回答数   :121

経済安保推進法が2022年5月に公布、同年8月に施行されたことについて、「知っている」は8割を超えた。その一方で、「知らない」も1割強あった。

経済安保対策を社内で進める上での課題については、「経済安全保障対策の重要性の社内浸透」や「法律や制度の理解」「社内の専門知識不足」など、経済安保に関する理解や知見に関する項目に多くのポイントが集まり、「自社情報の整理」や「対策ソリューションの選択」「外部への進捗度の説明」などの具体的活動への課題が感じられている割合は低いことが分かった。

製造業と非製造業に分解した場合も同様の結果となった。FRONTEOは「多くの企業では経済安全保障対策のスタートラインにあると言えそうだ」と指摘した。

経済安保対策の進捗について、法の公布前後で対策の有無と進捗の程度を確認したところ、製造業と非製造業のいずれでも法律公布前から比較すると、公布後に取り組みが行われている企業が増えていた。

製造業と非製造業で分解して比較すると、製造業の方が公布前から取り組みを開始している企業の割合が高かったことに加え、公布後の取り組み企業の割合も12.1ポイント増となり、非製造業が5.5ポイント増なのと比べても製造業における経済安保対策の取り組みは他業種に先んじていることをうかがわせた。

半面、経済安保対策が行われてはいるものの、進捗が十分との回答は全体では2割程度にとどまり、対策がより進んでいる傾向にある製造業でも3割に届かなかった。

FRONTEOは、進捗が不十分との回答が多かったのは、前項の「経済安保対策を進める上での課題」でも示されたように、現状では理解や知見の獲得の段階にある企業が多い傾向にあり、具体性のある対策や、平時の企業活動に組み込まれている状態に至っている企業はまだ多くはないという状況が反映された結果であるとみている。

本項とは別に経済安保推進法公布前からの取り組み、公布後から始まった取り組みを個別に比較した質問では、非製造業では公布後に開始された取り組みが多く、法の公布・施行が取り組み進行の契機となっている可能性がある。

全体で約2割の回答者が経済安保に関連する事業上の課題となるような影響の有無について、「影響有」と認めた。製造業の方が非製造業より約10ポイント「影響有」と回答した割合が高く、非製造業では「影響無」という回答が約6割を占めた。

影響を受けた具体的な内容としては、「調達先や販売先に制裁リストに掲載されている等の懸念組織があった」、「調達に困難を伴う物資があった」、「情報保護・技術保護の観点から共同研究を中止・中断した」、「物流網の分断があった」などを挙げた。業種を問わず事業上の課題となる影響を受けていることが示された。

(藤原秀行)※いずれもFRONTEO提供

詳細はコチラから(FRONTEO経済安全保障ブログ)

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