国内ラストワンマイル物流市場、23年度は9.7%増の3.19兆円と予測

国内ラストワンマイル物流市場、23年度は9.7%増の3.19兆円と予測

矢野経済研究所調査、運賃値上げや新たな配送ニーズが拡大に寄与

矢野経済研究所は8月28日、国内のラストワンマイル物流市場に関する調査結果の概要を公表した。

2022年度の市場規模は配送料(宅配関連サービスを含む)ベースで前年度比5.0%増の2兆9110億円と推計。20、21年度と比べた場合、新型コロナウイルス禍の巣ごもり需要拡大に伴う配送需要の急増が剥落したことなどから、伸び率は緩やかになったものの、市場は好調に推移したと指摘した。

 
 

その背景として、荷物の小口化、配送頻度の増加、人件費や燃料費の高騰による物流コストの上昇などを列挙した。

併せて、「22年度は同市場で通信販売事業が全体の約6割を占めており、通信販売事業の拡大とともに宅配便取扱個数が増加することで同市場も成長してきた」と分析した。

分野別に見ると、フードデリバリー分野は微減した一方、インターネットスーパーや在宅配食サービスなど、高齢者向け配送サービスは増加した。

本調査はラストワンマイル物流市場に関わる配送の種類を、「宅配便」による配送(宅配便事業者への委託)と、サービス提供事業者自身が配送を行う、もしくは配送責任を持つ「自社配送」の2つに分類。22年度の市場規模に占める割合は、約7割が「宅配便」による配送(宅配便事業者への委託)、約3割が「自社配送」とみている。

「自社配送」は、ピザや寿司などの出前(宅配)のように、自社で配達車両や配達員を保有しラストワンマイル配送を行う「アセット型」と、自社で配達車両や配達員を保有せず、地域の運送事業者や貨物軽自動車運送事業を行う個人事業主、配達代行サービス事業者(Web上のプラットフォームを通じて単発の業務を請け負うギグワーカー)などに配送を直接委託してラストワンマイル配送を行う「ノンアセット型」に分けている。

​矢野経済研究所は「宅配便取扱個数が緩やかに増加していくとみられる中で、ラストワンマイル物流の新たな担い手としては『ノンアセット型』の事業者(事業主)が占める割合が徐々に増えていくと考えられる」と展望している。

 
 

一方、23年度の市場規模は前年度比9.7%増の3兆1940億円と予測。大手宅配便事業者が既に届出運賃の改定を行っているほか、これまで値上げを見送っていた事業者に関しても、燃料費・人件費の高騰に加え24年4月の働き方改革関連法改正施行を目前に控え、運賃改定に乗り出す動きが出ており、さらに処方薬の配送サービスといった新たな配送ニーズも見込まれるため、好調に推移していくと想定している。

​30年度の市場規模は4兆円規模に成長すると予想している。伸びが続く一方で「長期的に見た場合、人口減少に伴う消費者(消費量)の減少、通信販売事業がいずれピークを迎え停滞すること、増え続ける荷物量に対しドライバー不足が深刻になること等が成長の阻害要因として挙げられる」と指摘している。


(矢野経済研究所プレスリリースより引用)

調査結果の詳細は別途、有償で提供している。

調査要綱
期間: 2023年5~7月
対象: BtoC物流に関わる事業者、管轄省庁等
方法: 当社専門研究員による直接面談、電話によるヒアリング、ならびに文献調査併用
定義:本調査におけるラストワンマイル物流市場は、一般消費者と物流の最終拠点を結ぶ事業者から一般消費者個人(BtoC)、一般消費者個人から同個人(CtoC)における配送サービスと定義する。
主に、
①通信販売
②ワンタイム型デリバリー(ピザや寿司などの出前、ファミリーレストラン・ファストフード等の既存店舗を活用したデリバリー事業等配達代行サービス)
③定期販売型デリバリー(在宅配食サービスや生協の個配など配送先や配送頻度などがある程度決まっているデリバリー事業等)
④個人間宅配
――の4分野を対象に設定。市場規模は配送料と配送関連サービスを含む金額ベースで算出している。なお、事業者間(BtoB)向けのラストワンマイル物流(施設や店舗向け配送など)、および引っ越しサービス、置き配・宅配ボックス、配達ロボット、メール便、ドローンは対象外とする。

市場に含まれる商品・サービス:
宅配便、貨物軽自動車運送事業、配達代行サービス、通信販売、ワンタイム型デリバリー事業、定期販売型デリバリー事業、地域支援サービス、配達ロボット、ドローン、置き配・宅配ボックス、メール便

 
 

(藤原秀行)

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