運輸安全委が調査報告書、船長が当時飲酒も
運輸安全委員会は9月28日、2020年7月にインド洋のモーリシャス島沖合で発生した、商船三井が長鋪汽船(岡山県笠岡市)の関連会社から傭船していた大型貨物船「WAKASHIO(ワカシオ)」の座礁・油濁事故に関する調査報告書を公表した。
この中で、事故の原因について、当時は同島の詳細な海岸線が記された海図などを入手していなかったにも関わらず、船長がスマートフォンの電波を受信しようとして、モーリシャス島に接近する針路を取ったため、浅所に乗り上げた可能性が大きいとの見方を表明。
「本船は、これまでにもスマートフォンの電波を受信する目的で陸岸等への接近を繰り返していたものであり、乗組員全体の安全運航に関する意識が低下し、危険敢行性が高まっていたことが、本事故の発生に関与したものと考えられる」と説明した。
また、事故の直前、船長が船内で開催した乗組員の誕生会に参加し、飲酒していたことも明らかにした。調査報告書は「船長は船橋当直者ではなかったものの、乗組員を教育する立場であり、また、航海計画を変更し、既に沿岸に接近する針路としている状況下であったことを踏まえれば、飲酒に関して、より慎重になるべきであったと考えられる」と指摘した。
調査報告書は事故の再発防止のため、乗組員が私的な事由で陸岸に接近するなどの不安全行動を取らないことや、 船長や航海士が沿岸海域を航行する場合、航行予定海域の適切な海図などの水路図誌を入手し、本船の安全が十分に確保されるような航海計画を立てるとともに、常時適切な見張りと船位の確認を行って船舶の安全運航に努めることなどをあらためて求めている。
(藤原秀行)